108、同盟
「しかしどこまで行っても代り映えの無い光景ですわね。ストリートアートの一つくらいあってもよさそうなものですのに……」
先を行く【ザジテン】を操縦するルーランがくだらない不平をぶーたれる。周囲は薄汚れたパネルで覆われた古い通路で、所々配管がむき出しになっていた。
「まあ、気持ちはわからなくもないけど敵やワナがあるよりかはマシってもんよ」
面倒くせえやつと思いながらも、私は即席の相棒をなだめる。
「確かに殺風景なここに商品の宣伝ポスターでも貼っておけば、SDAGの良い広告収入になるとは思いますけどね、お嬢様」
『皆モット緊張感ヲ持ッテクダサイ! 敵ガ潜ンデイルカモシレナイデス!』
アロエが現実的にソロバンを弾く側で、脳みそくんがいささかだらけ気分の一同に釘を刺す。けっこうしっかりしたやつだ。
結局あの後ひと悶着もふた悶着もあったが、何だかんだでリーダー的存在の私の「決定だ! 逆らうやつのア〇ルは私がス〇ルファックしてやる!」という強引極まりない鶴の一声で、我々【ラキソベロン】チームはルーランの【ザジテン】チーム(もっとも彼女しかいないが)と一時的に協力体制を取ることとなり、呉越同舟の旅をしていた。とは言っても噂の凄腕霊媒師・アノーロを探し出してホーリンの魂を呼び出してもらうまでだが。
「ホーリンにはさよならも言えなかったですし、あれだけ助けてもらったんですからせめて一言だけでも伝えたいんですわ」と、この時ばかりは燃える炎のお嬢様もしおらしくなって思いを吐露した。
なお、大会規程のルール上、チームプレイは別に禁止されておらず、何の問題もないとのことであった(ルーランも以前ホーリンと組んでいたし)。でも不妊治療を受けられるのは一名のみなので、やはり一番最後はチーム内で争いになるのではないだろうか……?まあ、今はどうでもいいや。




