106、アノーロ
「ちょっと待ってくださいお嬢様、にわかには信じ難い話です。何かの罠かも……」
アロエが小声で私の袖を引っ張るも、私は聞こえないふりをした。
「んで、具体的にはなんていうのよ、そのスーパー恐山イタコ系霊能者の名前は!?」
「現在二位のアノーロさんですわ。抹茶のような色の髪の毛をしており、【バソメット】という死神とよく似た機体に乗っておられます。ただ……」
「ああっ、あのやけに気味悪い鎌持った機体ね。アノーロって子とは喋ったことは一言もないけど、二位ってのは凄いわね。ただ、何?」
「ただ、気難しい方ですし、機嫌を損ねたら大変ですわよ。あの方の能力の全容は謎に包まれており、近づいたら魂を抜かれるなんて噂する者もおります。しかも、貴方は違うクラスだったからご存じないと思いますけど、アノーロさんはホーリンさんととても親しくされておられましたよ」
「ええっ!? そうなの!?」
それを聞いて私はちょっと躊躇した。現在の私が疑われまくっているこの状況下で頼み事なんかしたら、それこそ目も当てられない結果になるんじゃ……!?
「お嬢様、危険すぎます! やめましょう! 名前も気に入りませんし」
「なんで名前が出てくるのよ!」
『ああ、それ俺もわかるわ……オット、ワカル気ガシマス』
「脳みそまで!? あんたらたまに変なところで気が合うけど……アノーロの何がいけないのよ! ……あ」
そこまで言って、私ははたと気づいた。アロエ、アローゼン、アノーロ、皆、「ア」と「ロ」が付く。
「ようやくわかったわ! まったくこのアロアロコンビときた日には……」
「ま、そういうことなのでお諦め下さい、お嬢様。これ以上ややこしい名前が増えるのは勘弁でございまず。間違いのもとです」
「んな細かいこたぁどうでもいいわあああああああああ!」
「何をごちゃごちゃ相談しているんでございますの!? 時間が無いんですからとっとと決めてくださいませ!」
蚊帳の外でいい加減イライラしていたルーランまで怒鳴りこんできたので、更なるカオス状態となった。




