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104、テイレシアス

「ここまで言ってもダメなら、もう信じてくれなくても構わないわ。でも、これが嘘偽らざる真実よ。たとえあなたが気に入らなくってもね」


 私は焼け焦げた縦穴を背に立ち尽くす【ザジテン】の中の人に向かって答えた。もうここでだいぶ時間を喰ってしまった。これ以上彼女に裂ける時間はない。受け入れられないのならば、何度でも戦うしかない。


「ならばお聞きしますが、一体誰があなたを罠に陥れたと言うのでございますか!?」


 血を吐くような彼女の問いに対し、私は「さあね」としか答えられなかったけれど、心当たりがないわけではなかった。ただし、現在証明する術がない。


「彼女を……ホーリンを最後に見たとき、何か気づくようなことはなかったのでございますか!?」


「だからさっきも言ったけど、ベッドの下にあった地窓の方を気にしていた様子だったよ」


「……」


 彼女は全てを焼きつくすかのような燃え上がる紅蓮の瞳で私を睨みつけていたが、先ほどまでとは違って、どこか値踏みするような雰囲気が感じられた。


「……一つだけ、あなたの言ったことが紛れもない事実であると証明する方法がありますわ。テイレシアスに会いに行くのです」


 突如、女王様然としてルーランが突拍子もないことを発言した。私は理解がまったく及ばず、「はい?」などと間の抜けた対応をかませてしまった。


「あら、テイレシアスをご存じない? ギリシャ神話くらいはご存じでしょう?」


「い、いや、知ってはいるわよ、それくらい! 確か有名な予言者でしょ!?」


 小馬鹿にしてくるクソ令嬢に対し、私は猛然と抗議した。シュムプレガデスの岩をも把握しているこの私が知らぬはずがない。それくらいそのアテナのヌードを出歯亀しちゃって目が不自由になった哀れな予言者は超メジャーで、ナルキッソスやオイディプス王など、様々な逸話に登場していた。でも……。


「でも、たとえ実在したにせよ、どうやって面会しに行くのよ!? とっくの昔にくたばってるわよ!」


「フフッ、その程度ですか」


 文句を言う私に対し、やつは鼻で笑いやがった。うがああああああああああ!

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