チートな魔法?
嵐の前?嵐を起こす前?の静けさなのです
「あ・ん・の~駄・女・神~、転生先の選択間違えすぎ~~洗礼もおこなわない様な、貧しい農村に生まれさせてどうすんの~~。お陰でこの歳まで前世の記憶戻ってないわよ~~」
小屋まで戻り、涙しながら思わず絶叫をあげる。
色々な思いが駆け巡る。もし、洗礼のある歳で記憶を取り戻せてたら、今回の事件は未然に防げてただろうか?防げてたとしたら、その後、あの力を持ったまま普通に村人たちは接してくれるだろうか?
天界で教えられた、魔物もこの世界では生態系の一部だと。人を襲い殺す事もあれば、冒険者から狩られ、素材や魔石を得る為の生活の糧とされていることも。
魔物を狩り喜び、身内が殺された時は悲しむ。身勝手ではあるがそれが人間であると神から教えられ、だからこそ、出来る力を与えられても自然の摂理である人の死を覆してはいけないと、守るべき最低限のルールだと、その時は納得した、納得できた。
だが実際その瞬間に立ち会ってしまえば、私の心は騒ぎ、悲鳴を上げる。蘇らせたいと。これが、今世のみの人生なら耐えきれず、過ちを犯しただろう。同時に思い出せた前世の記憶、そのおかげで何とか思い止まれた、悲しみを半分にしてくれた、それが救いだった。
朽ちそうな小屋の中、膝を抱えうずくまり、どれ程の時間が過ぎただろう。段々と思いだされる前世の数十年の記憶が増えていき、今世の記憶を上書きしていきます。短かったのか、長かったのかすら判らない女神と過ごした天界の記憶も思い出されます。何人分の人生観でしょう。
気が付けば小屋の外から差し込む日差しは既に陰り、出歩く時間ではなくなっている。今日はもう寝てしまおう、そう思いつつも、此処が魔物が出る森の入り口だと思いだした。
土魔法で周りを囲んで強化する?いやいや、今から確認しながらそれをすると、加減しながら現世では使ったことがない種類の魔法を、生まれ変わったこの身体で、初で使用するとなると問題がでそうな。そうだ、結界の魔法にしよう。建物を覆う様に作ればある程度大きくなろうが、頑丈過ぎようが、透明で目立たないでしょう。土魔法の様に建物が出来る訳ではないのでね。
そうと決まればと、結界をイメージする。自分の中にある魔力を放出し、想像したものに変換し実際にある現象として、現実世界に再現する。私だけに与えられた固有スキル、創造魔法。
前世や今世で、見て聞いて読んだ事のある魔法を作り出す事が出来る魔法。女神曰くチートなのである。
これも今世の記憶だけでは使い物にならなかっただろう。前世での小説、アニメの影響は偉大なのです。
ああ、悩んで苦しんでても、そんなことは関係ないとばかりにお腹はすくのですね。朝起きたら一番に森の探索に向かいましょう。水場が見つかればいいのですが、飲み水は最悪は水魔法で。喉を潤す為集まる動物や、中にいる魚が手に入ればいいのですが。そう言えば前世の漫画に、マップや索敵、隠密など周囲を確認する魔法が沢山ありましたね。有用そうなので明日、再現してみましょう。あ、見付けたものの詳細を確認する為にも、鑑定も必要ですね。やる事はたくさん出て来ます。取り敢えず、明るくなるまでは行動できないので、寝る事で思考や空腹を誤魔化しましょう。では・・・おやすみなさい・・・。
夜が明け、二人分の記憶が一つになり、ようやく新しい自分になった気分がします。
はい、朝です。後ろが森なので薄暗いですが、日は登っているみたいです。さあ、昨日考えたものを今からを生きる為、現実にしていきましょう。
先ずはマップ。移動して確認できだ場所を視界に表示できる魔法。
次に索敵。周囲の魔物や動物、人、罠などを確認する魔法。これは、ついでにマップと連動させましょう。うん、尚更チートですね。
そして隠密。敵対する者に向こうから先に気付かれない様にする魔法。
とりあえずの最後に鑑定。仕留めた動物や魔物の肉、森に生える植物や果実、それらが食用可能かどうかの判断を詳細に確認する為の魔法。
攻撃用の魔法は、村を襲ったゴブリン退治に使用した風雷衝を身体強化した手足に纏う事でおこないましょう。森の中で下手に高威力の魔法を放てば、女神様が心配した通り、焼け野原にしかねませんからね、体術に纏わせる感じで作り上げたこの魔法は、威力の割に攻撃範囲が狭いので助かります。
「それでは、森への探索にレッツゴーなのです」
付近の壊滅した村々、それを確認する為の領都の兵は当分来ない。壊滅した事すらまだ伝わっていないかも。付近を回る行商人が訪れるまでは気付かれず、それから派兵なら相当先だろう。ならば、やはり食料確保を自力で頑張らねば。そう意気込んで、出来立ての魔法を携え、深い森へと赴くのでした。
楽しく読んでいただけたら幸いです。