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カノンの決意

「美桜さん……。

あなたも日々をつまらないと思って過ごし、この本とおまじないに出逢ったのね。

わたくしと…状況が似てるわね…」


 美桜の自伝を読み終えたカノンは、美桜の境遇や自分達が似た環境に置かれてること、おまじないをした時間が同じだった事を知る。


「もしかして、入れ替わった理由はおまじないをする時の『時間』が関係あるのかしら。

それとも似た環境……かしら?


もう一度唱えてみるのは………。


ダメね、何も起こらないわ。


本やおまじないについては追々と言ったとこかしら。


まずはこの世界の事をちゃんと把握する必要があるわね。

美桜さんの体だもの。

ちゃんと過ごさなきゃいけないわ。


それに、学、校……? というのもあるようですし。

まずは歴史からね。

あとは〜……」


 美桜の自伝を読んだことにより、入れ替わった理由等を考えたカノン。

 その中でもう一度呪文を唱えてみたが再び入れ替わりは起きなかった。


 このまま本の事を考えても仕方ないと思ったカノンは、美桜としてここでの生活を送れるように歴史等を勉強し始めた。


 美桜の部屋には小学校からの教科書が全て揃っていた。

 知識を得るには申し分ないが、時間が足りない。


「歴史の本だけでこんなにあるなんて、すごいわ、この世界!

それに文明もものすごく発展していて面白いわね!

もっと他の事も知りたいわ。


言葉もまだまだ知りたいし、数字の計算もどんどん複雑になっていくのね。

この化学というのも文明に大きく関わっていて面白いわ。


………。


明日は学校というこの本達の学び場に行くのよね……もっと学ぶためには致し方ないわね」


 気づけば日が落ち外は暗くなっていた。

 時計を見ればもう夕ご飯時だ。


 歴史や文明の発展に夢中になっていたカノンは、勉強の時間がもっと欲しいと、ある事を考えながらリビングに向かう。


 リビングには美桜の両親と兄がいた。

 カノンは美桜の母にゆっくりと近づいた。


「お母様、お願いがありますの。

少し、勉強をやり過ぎて体調がすぐれませんの。


……明日、学校をお休みしてもいいかしら……。


あ、夕ご飯はおにぎりという物があれば助かります。

味はお塩が美味しいと本にありましたので、それがいいですわ」


 カノンは申し訳なさそうに、けれども自分の主張はちゃんと伝えた。


 朝の光景のように、またもやカノンの発言にその場のカノン以外全員が固まる。

 声もかけられていないのに父でさえ、飲んでいたコーヒーでむせている。


「美桜……あなた……朝からどうしたの。

本当に美桜なの?

お兄ちゃんにあんな風に言われるのはいつもの事だけど、あんな強気な美桜ははじめてよ。

それに口調……。

まるでどこかのお姫様みたい」


 美桜の母は驚きを隠せずにそう伝える。


「あ、あら、いやだわ、おほほほ。

貴族の勉強のし過ぎでこのような口調になったのですわ。

わたくしはこの口調に慣れてしまいましたので、お母様達も慣れてくださいまし」


 母の問いには美桜の自伝にあったように貴族の勉強をやり過ぎたとごまかした。


「それからお兄様、朝は出過ぎたこと失礼致しました。

出来れば兄妹としてこれからは仲良くできないかしら。

今すぐにとは言いません。

せっかく兄妹なのですから、いざこざは寂しいではありませんか」


 カノンは朝の美桜の兄に対する態度を気にしていた。


 強気な発言をした事に後悔はないが、美桜の自伝には仲が良いようには書かれていないのでこれからでも変えられるのではと思い、歩み寄ることを決めた。


 兄からは、目をそらされはしたが返事をもらえた。


 母からも「体調不良なら仕方ないわね。安静にするのよ?」と返事をもらえた。


 この時、父は心の中で「(塩おにぎりが美味しいと書かれた本なんて、何の勉強したらそんな本にたどり着くんだ)」とツッコミを入れていた。


 その場が少しなごみ、ちょっとだけ家族の距離が縮まった気がする。

 まだまだ、わだかまりはあるが、これからだと意気込むカノンだった。

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