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美桜の決意

「カノンさん……。

私と同じようにつまらないと感じておまじないをしたんですね。

それに自伝を書く事も同じことしてます」


 一通りカノンの書いた自伝を読み終えた美桜は、カノンの生い立ちやこの世界は異世界だということ、カノンと美桜が同じおまじないをしたという事を理解した。


 ただ異世界と言っても魔法はないらしい。

 だが、精神生命的なものが入れ替わるという現象が起きた謎は残る。


 今後は何故、本のおまじないで入れ替わったのか、元の生活に戻れるのかを探しつつカノンとして生きていく事を決める。


 それに、憧れのご令嬢として生活が出来るのだ。

 美桜の心は嬉しさでいっぱいだ。


 時間がたつのも忘れ、気が付けばもう日高く昇る頃。


「……お腹空きました……」


 空腹になり始めている美桜は、先ほどの食堂へ行こうと部屋を出ようとしたとき、使用人がいたので軽食か何かないか聞いてみた。


 その使用人は快く引き受け、美桜に部屋で待つように伝え、自身は用意をするため厨房に行った。

 美桜は気づかなかったがその使用人は美桜が目覚めた時騒ぎを聞きつけ声をかけてくれた人物だ。


「カノン様、お食事のご用意が出来ました」


 先ほどの使用人が軽食を持ってきたと部屋に入り、さらに食事ができるように準備を始める。


 彼女が持ってワゴンの上には、サラダにスープ、主食にはスコーンのようなものが乗っている。


 飲み物には紅茶を用意してくれているようだ。


 美桜は、用意してもらったスコーンのようなものを一つ手に取り食べてみる。


 すると、みるみる美桜の表情が変わり、眉間にシワが寄った。


 食感は固く、パサパサしていて甘みがなく何の風味もない。

 ただ小麦粉と卵を混ぜて焼いただけのような味だ。

 おまけにジャムなどの付け合わせもないのだ。


「カノン様? 紅茶が付け合わせですよ?

そのままでは美味しくないですよ」


 美桜の表情に気づいた使用人が、紅茶の準備をしながら声をかけた。


「(そ、そうなんですね……。

た、たしかに紅茶も付け合わせかもしれませんが、その前に何も甘みや風味がないのですよ。


いえ味は小麦粉の味というか、卵の味というか、一応するのですが、これは形はスコーンだけども、断じてスコーンではないです。

今度これを出してもらうときは作り方を見なければ)」


 そう、心の中で決意をする美桜だった。


 美桜は、昼食を取りながら目の前の使用人に話を聞くことにした。

 彼女の名前はリリー。

 最近雇われたのだが、どういうわけか新人でありながらカノンの侍女になったそうだ。


 ちなみにさっきのスコーンもどきの事も聞いた。


 名前はここの世界でもスコーンで、味はあれが普通なのだそうだ。

 軽食でよく食べられるが、紅茶で誤魔化しながら皆食べてるそうだ。


 話し込んでいるうちに美桜は食事を全て食べ終えた。

 また夕食の時間に声をかけるとリリーは食器を持って部屋を出ていった。


「さて……次は何をしましょう……。

あ……」


 一人になった美桜は、夕食までの時間にあのおまじないの後の出来事を、日記として書き始めた。


 ペンを走らせている手が止まりふと思った。

 美桜が異世界のカノンと入れ替わっているということは、現代の美桜の体にカノンがいるということではないだろうか。


 昨日見た夢は、おまじないの効果で入れ替わる直前の夢だったのではないかと考察が新たに生まれる。


 そうなればカノンのほうはどうなっているのだろう。


「まぁ、カノンさんのあの感じなら上手くやっているはずですね」


 美桜は昨日夢で逢ったカノンの様子を思い出しカノンなら、とどこか安心し、またペンを走らせたのだった。

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