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微力おかしします。

掲載日:2022/04/02


近未来。あるサービスが流行る。

『微力おかしします』

介護サービスではない、ただ人が傍にいて、日常生活、遊び、力仕事に“微力”を力添えをしてくれるサービスだ。働く側にとってもいい仕事で、“良い仕事をする”“完璧に仕事をこなす”のではなく、むしろその逆で、“緩く働く”だけでお金を稼ぐことができる。


ただひとがそばにいて何かを力添えしてくれる。制限時間つきだが家族にも兄にも妹にもなってくれ、癒されると、若者の中でも人気で、“人のぬくもりが感じられる”“友人に頼めないかるい仕事も手伝ってもらえる”“人とコミュニケーションをとるときの練習になる”

等々と大人気。瞬く間に、世間の大流行になった。


ある事例では、人間不信に陥って、うつ状態になっていた休職中の男性が、この緩い形態の仕事をすることで少しの収入源となり、かつまた人間とのコミュニケーションにいたるきっかけとしてリハビリをすることができた。“とある異種族間”とはいえ、傷ついたもの同士、あるいは差別されるもの同士には、友情や助け合いが生まれるものなのだろうか?“ここで知り合って友情や交際に発展した”などという話も彼の周囲であったらしい。もしくは、恋人や友人にいえないことを種族の違う人に話て楽になるという話もきいた。


ある事例では、介護施設での労働によって、老人たちとのコミュニケーションの代わりとすることで、老人たちの体調や、病状が少し改善したなどという話もあった。近場の学生がバイトで使うので地域の交流のためにも役立ったようだ。件の種族は体は強いが、人間の“心”に接触する機会がない。モノを動かしたり、知能を使ったりするには、件の種族のほうが優れているが、“やさしく接触する”という意味では、力まかせではない心遣いは人間の得意とするものだった。


またある事例ではミスマッチもおこり、“こんな侮辱はうけいれられない”“ただ、緩いコミュニケーションをとればいいだなんて嘘だ”“家族のぬくもりを感じられるなんて嘘だ”といってバイト先から逃げ出す人もいたようだが。やはり、生まれの違いや、人種の違いという問題には、小さな軋轢は生まれやすいものだろう。


そうなのだ。これ自体はいいサービスで、人々の生活に活気や潤いをあたえたのだ。だって人々の中には恋人や友人を作ることが苦手な人もいる。だからよき緩衝材になった。人々も喜んだ。このサービスがいいものだと、使える人間はうらやましいと。学生の初めてのバイトにももってこい。問題などなかった。このサービスを行うのが人間で、働くアンドロイド向けのサービスである事意外は。


その時代ではすでにロボットの人権は認められていた。ただ、いまだロボットが権利を主張することに批判的な意見も多く、特に労働者の中でロボットに仕事を奪われたと考える層にこの主張は多い。批判的意見の象徴として、よくこの労働がとりあげられる。異種族間でのコミュニケーションをとるときにはこれほど緩いことさえ“労働”となってしまうことにはおかしいじゃないかというものだ。


いずれにしろ、そういったいさかいと別に、病気や、けがを負った人やロボット(アンドロイド)にはおおむね好評で、その人々が“微力”ながら他者とコミュニケーションをとり、お互いの親睦を深めるという機会が得られたという意味では、斬新な労働手段だということには変わりはなかった。


彼らにとっては異種族間の交流でうまれる軋轢より、“わずかに力を貸す”という事でうまれる、他種族の文化への配慮と交流で得られるもののほうが多いというわけだ。


 右足を故障した少女ロボットは、人間の家庭で育てられていて、両親の意向で足を修理せずにそのまま人間と同じように生きるようにと願いが込められた。そうして苦悩している少女の考えを理解したのは、微力をかす仕事をしていた、同じように片足が不自由な老人だった。初めは仕事のために、相談やら、助言やらをしていた老人だったが、二人は年の離れすぎた兄妹のように仲良くなり、最終的に少女は両親を説得して、足を修理したというが、その後、少女は看護師になり、懸命に人のために働いているという。


 ある頑固男性老人アンドロイドのもとに微力を貸す仕事をしにいった女性は、人間との戦争との話を毎度毎度きかされ、掃除、食事、その老人介護など、強制的に安い給料ではたらかされ、あげくのはてには、人間風情が、と老人から愚痴ばかり聞くようになった。実は、その女性はかつてあった人間とアンドロイドの戦争の話を祖母から聞かされており、アンドロイドのことをどこかで軽蔑してたために、耐えきれなくなった女性は拳銃をとりだし、最終的に男性老人を脅してしまった。まいった老人が警察をよび、最終的には警察が間に入り二人の間の喧嘩をとめ、女性はこの仕事をやめざるをえなかったという。




 やがて、これは主に傷病者や、要介護者に使われるサービスとなった。小型AI端末により、その勤務に無理がないかも監視されるようになり労働状況も改善されていった。緩やかなコミュニケーション、それは人間、アンドロイドどちらが老いてもどちらが故障や傷をおってもアンドロイドと人間のためにもなる。そういう人にやさしく接することができる人間だけが、このサービスを利用することができ、またサービスを供給できる。そんな緩い労働が未来には存在している。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 先が読みたいですね。このサービスの良い事例もあれば あれば悪い事例もあるかと思います。
2022/04/02 16:17 退会済み
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