【期限】
ー第7章ー 【期限】
私は死んだ後も、彼を目で追っていた。
彼が私のために死ぬと分かった時は、
とても胸が締めつけられた。
でも、嬉しいとも思ってしまった。
彼がこの世に来てくれれば、
ここで永遠に一緒にいられる。
そんな愚かな妄想は一瞬。
私は彼に生きてほしいと強く願った。
自殺した人間が、自殺を止めるのは
おかしいかもしれない。
だが、気づけば体は勝手に動いていた。
私は自ら望んでここに来たのに、
彼のためにとあの世を飛び出した。
朝比奈 紺。私がこの世で1番愛する人。
彼を止めるのが私の役目。
私は、役目を果たすため再び
この地へ戻ってきた。
川野 碧としてではなく、
及川 希空として。
"彼を死なせない"
私は心にその思いを刻み込ませた。
9月12日。
9月になったというのに、まだ暑い。
私はひどく動揺していた。
体が透けて、消えかかっている。
タイムリミットが迫っているのだ。
私の体は、あと少しで消滅する。
神様は私を許してくれなかったようだ。
「早く何とかしなきゃ…!!」
焦りと不安が一気に押し寄せた。
「紺とまだ一緒にいたいよ…」
私は零れ落ちそうな涙を拭いて、
彼のもとへと駆け寄った。
「希空、今日の夕飯は何にする?」
「んー、ラーメン食べたい!」
「じゃあ、塩ラーメンにしようかな」
「やったぁ!」
今日も彼は生きている。私と共に…