【体温】
ー第5章ー 【体温】
6月13日。
「………起きて、起きてよ!」
僕は、声を聞いてハッと目を覚ました。何だか体が熱いし重たい気がする。
雨が降っているせいか、頭も痛い。
これだから、梅雨は嫌いだ。
「お兄さん、大丈夫?もうお昼だよ?」
希空が心配そうに僕を見つめる。
「大丈夫だよ。それより腹減っただろ、今ご飯作るから、
待ってろ。」
と僕は体を起こした。立ち上がると、
視界がぐわんと歪み、体がよろける。
その瞬間、僕は床に叩きつけられた。
意識が朦朧としているせいか、
希空が碧に見えて泣きそうだ。
「紺!」
彼女の必死な声は、
僕の頭の奥でずっと響いていた。
再び目が覚めた時、
僕はベッドで寝ていた。
風邪をひいたようだ。
おでこには、ぬるくなった熱冷まシートが貼ってあった。
俺のすぐ傍で希空が眠っている。
看病をしてくれたのだろう。
汗の染みたタオルを手に持っている。
希空の目はほんのり赤く腫れていた。
泣いて心配してくれたのだろうか。
「ありがとう…希空」
僕は優しく彼女の頭を撫でた。
希空を撫でた手の感触は温かかった。
風邪で死ぬなんて、僕の意に反する。
希空が居てくれて、
良かったなと心から思った。
僕が撫でたせいか、
彼女がぬくっと起き上がった。
「起きてたんだね、良かった…!」
「おう。希空のおかげで、こんなに元気になったぞ。
ありがとな。」
希空はすぐに立ち上がると、
魔女のスープの様なお粥を持ってきた。
「作ってみたの。食べてみて!」
ジャイ〇ンみたいな料理を作る人が、
本当に存在することに驚いた。
恐る恐るお粥を口に運んだ。
ん、、、意外といけるぞ。
見た目以上に美味しかった。
少年のようにバクバクと食べ進めた。
彼女は満足気にこちらを見ている。
人に食べているところをまじまじと
見られると恥ずかしい。
「味は美味しかったよ、あとは
見た目だけだな。」
僕は完食した後に、そう言った。
「一言余計なんだから…」と希空は
少し頬を膨らませながら言った。
「あはは、料理は俺が教えてやるよ。」
「ほんと?やったー!」
楽しげな会話が僕の家に鳴り響く。