【川野 碧】
ー第3章ー 【川野 碧】
川野 碧。青山高校2年、16歳。
血液型はO型。誕生日は11月18日。
私は、中学の時までずっと虐められて
いた。きっかけは小学生の時に芸能
事務所にスカウトされたことだった。
その当時、何も知らなかった私はとても嬉しくて友達にその話をしたのだ。
それは、きっと自慢に近かった。
その友達は羨ましかったのだろう、
私を避けるようになった。
人間には、嫉妬という感情がある。
彼女たちも嫉妬という感情に流され、
私を虐めたのだ。
私は芸能事務所のスカウトを断った。
そうすれば、イジメはなくなると
思っていたのだ。
だがそれは、安易な考えだった。
むしろ、イジメはヒートアップ。
「スカウト断るとか何様だよ。
そんなんじゃ満足しないってか?
どんだけ自分のこと可愛いと
思ってんの?w」
私の1番の友達だった子はそう言った。
いくら否定しても、誰も耳を
傾けてくれない。
小学校では、ぶりっ子だと噂が広まり、みんなからの無視が続いた。
中学校に入ってから、
イジメは更に酷くなった。
水をかけられたり、
教科書に落書きされたりと、
ドラマでよく見る典型的なイジメを
受けた。親は、この事に気づいては
いたけど助けてはくれなかった。
先生も見て見ぬふり。
それから私は自分の話をしなくなった。これがトラウマとなったから。
自分の話で人が傷つくことを
恐れるようになった。
私は、中学を卒業した後、親に遠くの
高校へ行かせて欲しいとお願いした。
まだ親には良心があったようで、
快く私の頼みを受け入れてくれた。
そして私は、親元を離れ、一人暮らしを始め、色羽高校へと入学し、
新しい生活をスタートさせた。
しかし、その生活は楽ではなかった。
親からの仕送りは何もなく、
アルバイトで貯めたお金で家賃や食費
など全ての生活費を支払わなければ
ならなかった。
ろくに食事も出来ず、ただただ体力だけが失われていく日々。
そんな日常の中で彼と過ごすことは、
私に生きる活力を与えてくれていた。
私は、朝比奈 紺を好きになった。
でも、私からは告白することは
出来ない。私は心に想いを秘めて、
紺に接していた。紺といる時間は、
私にとってかけがえのないものだった。
修学旅行で2人きりになった時、
紺に告白された。「好きだ」と。
「私もだよ…」と涙ぐみながら答えた。
紺の耳は一瞬で真っ赤に染まった。
紺の暖かい吐息が私の肌を刺激する。
願ってもない事だ、私にこんな幸せが
あっていいものかとさえ思った。
彼の唇が私のと重なった。
それは蜂蜜のように甘いものだった。
紺は私の彼氏に、
私は紺の彼女になった。
付き合い始めて何ヶ月か経った頃、
紺は私の家に来たいと言った。
私は部屋が汚いからといって断った。
紺は少し残念そうな顔をしたが、
私はすぐに話題を変えて、
その場を凌いだ。
また、ある日は
「碧は、幼少期どんな子だったの?
中学校生活はどんなだった?
やっぱり今みたいにモテてたのかな。」と聞いてきた。
「そんなことないよ。」私は素っ気なくそう答えた。
彼もきっと察してくれたのだろう。
もうこれ以上は何も聞いてこなかった。
私の素性を知ったら、彼はどんな反応をするのだろう。私を否定するだろうか。
いや、絶対にしないはずだ。
そう信じていても、彼には何も言えなかった。
そして、私は彼の前から姿を消した。