第8話 先生の言うことは絶対!(1)
「なんなら、指輪は差し上げるので、家庭教師の件はお断りします。」
「では、指輪は有難く頂戴して、家庭教師よろしくお願いします。」
「なんでだよ⁉…失礼。ですが、実際問題として私は現代魔法について何も知りません。あっ、ちなみに指輪に充填された魔力が切れれば、効力は下がりますよ。」
「知っていれば、問題ないのですね?だとしても、ユーリさんが知っている事…と魔道具について教えて下されば良いのです。」
と言いながら、メイドに何かを取って来させているようだ。しばらくすると本を何冊か抱えて戻って来た。魔法陣図一覧・魔法式参考本・魔術理論―――――等々。タイトルからして難しそうだ。どうぞとばかりに本をこちらに押してくる。1冊手に取りペラペラ捲る。あれ?意外と簡単だな。もしかして…
「これは入門書か初級編ですか?」
「…い、いえ、上級の教本です。やはり、分かるのですね?」
常識を知らなくてゴメンね!をしてしまった。それでも、家庭教師の件は断ろうとするが平行線を辿る。執事が間に入って止めてくれた。名前は聞いてないがセバスと呼ぼう。気付けば完全に日が暮れていて、外は真っ暗だ。泊まっていくことが確定した。まあ、魔法関連の本を読んで決めたいと言ったら、この屋敷にある全ての本を貸してくれたので、いいとしよう。もうじき、必要になるかもしれなかったので、ありがたい。全て、コピーさせてもらおう。なんなら、家庭教師引き受けてもいいかもしれないなぁと思い始めていた。
夕食は魚介料理が食べられて、満足。風呂は温泉を引いているので客用の風呂でリラックス。話では夏期休暇が終われば王都の学園に戻るので、それまでの期間とのこと。別にやりたいこともないし、ここに住めるなら家庭教師いいかもなぁと落とされていた。
翌日の朝食後、ソフィアと向かい合っていた。
「昨日の話、お受けします。」
「随分、あっさりしてますね。昨日のようになるではと少し思っていました。」
「接待に満足したので、そのお返しですよ。それに教えることは少ないですし。」
「そうですか。それではよろしくお願いしますね。ユーリ先生。午前が授業時間になりますので、今から始めましょう!あっ、後、フィリスにも受けさせてもいいですか?」
ソフィアは魔法に関してはアグレッシブだな。フィリスは明日からかな?授業が終わった後、聞きに行くようだ。さて、授業をするとしますか。まずは基本の確認からだな。
「私の授業では教本は使いませんから。まず、確認ですが自分の魔力は感じられますよね?コントロールはどれくらい出来ますか?」
「え?えっと…、よく分かりません…」
やはり、思った通りだ。教本には魔法を使うには魔法式の正確さ・組み合わせ方によって構成された魔法陣に魔力を籠めて発動させるもので、発動しないのは魔法式が間違っているか、魔力量が足りないとされている。しかし、1番大事なのは魔力の扱い方だ。コントロールが上手ければ、どんな魔法でも使える…かもしれない。まあ、それだけでは越えられない壁があるので割愛する。そもそも魔力とは何か?魔力とはそれぞれの属性のマナの集まりである。人によって、その割合が違う。魔法が発動しないのは、その属性のマナがないか、マナ変換の魔法式でロスが発生して魔力量が足りなくなっているのだ。まあ、今回はそこまで難しいことはしない。魔力の操作と適した属性魔法を使わせるくらいでいいだろう。魔力総量も把握出来てないし、コントロールと言っても魔法陣に魔力を籠めることしか出来ないと言う答えを聞いて、さっきの説明と授業内容を伝える。
ソフィアは熱心に聞いては頷いていた。だが、本当に上達するんですか?と疑ってもいた。これには結果で応えよう。しかし、自力で魔力コントロールが出来るようになるには時間が足りない。ここは手っ取り早く行くか。それにしても、現代魔法は酷いな。古代において魔力コントロールは基礎にして、奥義だった。まあ、かなり地味だから次第に魔法陣にシフトしていったのだろう。誰でも使える魔法陣等の成果も出てしまったから尚更だ。いや、でも普通に考えても訓練するだろ。俺も召喚当初からやっていたぞ…。そこから魔法陣乱立時代が始まる。しかし、100年前にこのままではいけないと魔法学として、体系をまとめられた。意外と浅かった。
「私の両手を握って下さい。外から干渉して操作します。その時の動く感覚と魔力量に意識を集中して下さい。」
「分かりました。…………………………ふぁああ⁉」
体をビクンっと一瞬跳ねさせて、顔を真っ赤に目も潤んでいる。つい、イタズラをしてしまったのだ。魔力で感情を刺激してみた。今回は快楽を与えた。効果は抜群だ。ニヤリとしてしまいそうになるのを我慢しろ!完全にセクハラだが平静を装って言い訳をする。
「スミマセン、強くやり過ぎてしまいました。」
「……………」
少し、棒読みになってしまったのは仕方ない。むぅ~と言わんばかりの顔だ。明らかに疑われている。スルーして今度こそ真面目にやった。今日の授業で魔力総量の把握が出来ていたが、操作に関してはてんでダメだったが、これからだろう。
「ふぅー。結構疲れるものですね。」
「始めのうちはそうでしょう。慣れてくれば大丈夫ですよ。」
「頑張ります!あっ、午後は自由にして下さい。」
こうして、初の授業は終わったのだった。さて、午後は何をしようか?