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俺を神様と呼ぶんじゃありません  作者: 白蛇ちゆき
第1章 彷徨う者達
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第4話 交渉は弱みに付け込め(2)

 「空間収納が使えるようですが、ユーリさんは何をされてる方なんですか?」


 ぐはっ!答えずらい質問をしてきたなぁ。歩きながらだが余裕があるようで、エルザに話しかけられた。さりげない会話で素性を調べているのだろう。しかし、なんて答えたらいいんだろう?何をするにしてもこれからだし、何なら無職だ。あれこれ考えていたため、間が出来てしまったようだ。


 「…あの、言えないようなことだったりします?」

 「いえ、信じて貰えるか判断に迷っていたものでして…実は記憶喪失なんですよ。だから、強いて言うなら自分探しです。空間収納は私の取り柄ですよ。」

 「…そうですか。…あの規模の空間収納は見たことがないから驚きました。そういえば、馬車はどうするつもりですか?」

 「馬車は分解、もとい修理出来ればと思い回収しました。」


 エルザがどう捉えたのかは分からないが、そこからは雑談がぽつぽつ続いた。俺の黒歴史は守られたのだと、ほっとした。やはりと言うか、エルザは魔法や魔道具に興味があるようで、会話の大半を占めた。フィリスにも話し掛けたが、一言二言返ってくるだけで終わってしまう。特に貴族なら私兵でも連れていないのかと聞いたら、かなり言葉を濁らされた。その辺は事情があるらしい。


 フィリスとの微妙な距離感のまま、日が沈む前に何とか街に着いた。完全に日が沈むと門は閉じられてしまうので、かなりギリギリだった。流石に、徒歩で3人しかいないのが怪しかったようで、門番がこちらに向かって来たが、フィリスが貴族証明のバッジを見せるとたちまち姿勢を正した。その動きがバネのようだったのには感心した。エルザと共に事情を説明している。俺のことも上手く言ってくれたようで、すんなり通された。初めての街かぁ。ワクワクするぜ!


 俺は今、ホテルのロビーに居る。待っていると受付から2人が来て椅子に座る。どうやら、部屋は取れたみたいで今後の予定を話し合うようだ。


 「ユーリさんはこちらには泊まらないとのことですが、これからどうするのですか?」

 「まず、資金調達をする予定です。遅い時間なので間に合うか分かりませんが、従業員に買い取りをしている所や商会を教えて貰ったので行ってみようかと。それから冒険者ギルドに遺品を届けて来ます。」

 「そうでしたね。任せきりになってますが、よろしくお願いします。一筆したためますので、お持ちください。それと明日の予定ですが、早朝の駅馬車で移動します。」


 真面目な話は終わりとばかりに、エルザが口をはさむ。


 「護衛中なんですから、羽目を外してはいけませんよ。ところで、何を売却されるんですか?」

 「もちろん、仕事は全うするつもりですよ。ですので、これを渡しておきます。―――後、売る物はこれですよ。」


 テーブルに置いたのはハンドベルと宝石とアクセサリーだ。ハンドベルは魔道具で鳴らすと俺に伝わる。カットされた宝石は人工物だが、見分けはつかないだろう。多少、安く買われても痛くはない。アクセサリーも俺が練習で作った物だ。もちろん売れるレベルだが、俺的にはいまいちな品が大量にある。


 エルザはハンドベルに釘付けになっていた。宝石やアクセサリーに目が行かないとは筋金入りかもしれない。逆に、フィリスは宝石やアクセサリーをじっと見ていた。興味はあるようだが、遠慮しているのかもしれない。2人のそんな様子を眺めているとエルザが突然ハンドベルを鳴らしやがった。


 「あの…、ちゃんと伝わってるので大丈夫ですよ。というより、何かあった時に鳴らして下さい。」

 「そんなつもりはなかったのですが、つい…」


 てへっ、とするのかと思ったがエルザは、はにかんでいた。おお…このお茶目さんめ…


 今日一日を労い、また明日と言ってホテルを出た。時間はあまりないが、いくつかの商店を見て回ることが出来た。資金も十分だろう。俺に対応してくれた可愛い店員にはアクセサリーをもちろんプレゼントした。喜んでいるのを見ると癒されるわぁ~。キャバクラには興味なかったけど、今行ったら嵌ってしまうかもしれない。満たされた気持ちで道を歩きながら、店にあった品揃えを思い出す。意外なことに地球製品が結構あるのだ。鏡やグラスもあったので、俺が大量に用意していた物が無駄になるかもしれない。流行を読み違えた品を仕入れて、在庫を抱えた商人のようだ。道中の雑談にあったが、500年前に画期的?突飛?な発明をする者が、かなりいたらしい。最近では50年前にちらほら現れたとか。こいつらは転生者か転移者だと考えている。中でも俺が1番感心したのは下着だ。特に女性下着は種類が豊富だった。熱量が凄まじい。そして、グッジョブ!


 さて、本日のメインイベントとなる冒険者ギルド前に到着した。5つの袋を持って立っている。異世界物では絡まれるのが定番だからな。ひとつ息を吐くと建物の中に足を踏み入れた。…結果から言おう。何事もなく、かつスムーズに手続きは終わった。もちろん、ジロジロ見られるし、聞こえる声で、ひそひそ話もされた。だがっ!絡まれない!!期待していたイベントは空振りに終わる。まあ、こうなる可能性は薄々感じていた。商談の最中の会話で冒険者ギルドの事を聞いた。この街は移動の際の護衛依頼が多い。護衛には信用が必要になる。また、魔物との戦いでは最前線になるため、協力体制が築かれている。つまり、この街の冒険者は比較的お行儀がいいと言うことだ。


 やるせない気持ちをどうにかしようと酒場に足を向けるのだった。

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