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俺を神様と呼ぶんじゃありません  作者: 白蛇ちゆき
第1章 彷徨う者達
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第3話 交渉は弱みに付け込め(1)

 久しぶりの会話というのは緊張するものだ。引きこもりよろしく、コンビニで「温めますか?」と言われても返事が出来ず頷くのが精一杯だったり、どもってしまうのは恥ずかし過ぎる。気持ちを落ち着かせる為に深呼吸したり、発声練習をしていたが、馬車の違和感に気付いた。その馬車は止まっているのだ。休憩にしては道のど真ん中なので、トラブルか?と考えていたら馬車が揺れだした。まさかの情事か⁉


 「おいおい、こんな所でおっぱじめる気か?」


 次の瞬間には全力疾走していた。誤解しないでほしいが、別に全力で覗きがしたい訳ではない。理由は馬車が魔物に襲われているからだ。熊の魔物が3体。護衛と思われる5人が倒れている。既に死んでいる者もいる。助けるのは無理だ。馬車の中にはまだ人が居るようで魔物はそちらにターゲットを移したようだ。力任せに壊しているので木片が飛んでいる。魔物には無数の傷が見て取れ、護衛の健闘が窺える。俺は馬車に影響が出ないように注意しつつ魔物を蹴り飛ばした。距離が取れたので、空間魔法で魔物の首を斬り落とした。切り口から大量の血が噴き出し、辺りを血で染める。


 魔物を倒し終えた後、馬車に近づいて声を掛けた。護衛のいなくなった人を見捨てるのは忍びない。それに、貴族や商人等の身分がしっかりしている者の護衛なら入国もスムーズに出来るという利点もある。金は一切持ってないのだから余計にだ。


 「大丈夫ですか?魔物は全て倒し終えましたよ。」


 少し間があったが、扉がゆっくり開き周りを確認しているようだ。今更だが、さっきまでいなかった人間がいるのだから警戒して当然と思い少し後退した。


 中から出て来たのは2人の少女。1人はワンピースを着た、地味目だが品を感じさせる少女。もう1人はメイド服を着ているが、開花し始めた可憐さがあり、今後の成長が期待出来そうな少女だ。もっとも、俺が受ける印象は2()()()()()()姿()()()()()()()()にあったが…


 「あなたは?それに護衛の方達はどうなりました?」

 「私の名前はユーリ。ただの通りすがりの者です。護衛の方は残念ながら全滅してしまいました。」

 「そうですか…しかし、この西街道を1人で、しかも徒歩で来たのですか?」

 「こう見えて体力はありますし、魔物の相手は得意なんですよ。」


 メイドの少女が対応してくれた。2人は恐怖で顔が青ざめていたが、俺が状況を改めて説明すると理解したとばかりに頷いていた。また、話している内に落ち着いてきたようで、これからどうするか話し合い始めた。


 ちなみに彼女が言った西街道とは魔物の領域と接している為、今回のように襲われることがある。そう、俺が10年間彷徨って…ゴホン!冒険をした広大な魔物の領域が、この西側にあるのだ。…冒険って言ったら、冒険だ!なので、今の俺のように1人&徒歩はまずいない。門と門の距離は1日で歩くには無理があるので、野宿を余儀なくされる。そのため、腕に相当な自信がある者か、無謀な奴、その他に分類される。


 さて、実力は証明出来ているし交渉に踏み切りますか。


 「あの、よければ、ご一緒しませんか?」


 交渉下手か⁉ナンパか⁉


 「それはこちらからお願いしようとしていたところです。相談致しまして、ユーリさんを護衛に雇えたらと思っています。それでよろしいですね?お嬢様。」

 「ええ、道も半ばは過ぎてますし、急げば日が落ちる前に街に着けるでしょう。引き受けて頂けないでしょうか?」


 俺の見事な交渉術?で話はまとまったので、準備に取り掛かった。まず、死体の始末をした。彼らは冒険者ギルドで護衛を依頼した冒険者とのことなので、遺品とギルドカードを持ち主ごとに袋にしまっていく。5つの袋を空間収納に入れ、死体を魔法でさっさと埋葬した。馬車は馬もいないし破損も酷いので、これも空間収納に片付けた。彼女らは手荷物の整理をしていたが、俺の作業を見て驚いているようだった。さて、粗方終わったので出発しようと声を掛ける。


 「感謝いたします。そう言えば自己紹介をしていませんでしたね。遅ればせながら、私はアクティー子爵家の娘、フィリス・アクティーと申します。こちらはメイドのエルザです。」

 「改めまして、エルザです。私達の代わりをしてくださって、ありがとうございます。私達だけでは放置するしかなかったでしょう…」

 「いえ、この状況では仕方ないでしょう。それでは行きますか。…あっ、荷物持ちましょうか?」


 しかし、俺の申し出は、やんわり断られた。ちょっとショック。でも、それもそうか。俺が持ち逃げしたら彼女らに捕まえることは不可能だろう。出会ったばかりの人間を信用し過ぎるのも問題だ。雇用関係と言っても口頭でしかない。別に女の子と接していて、浮かれていた訳ではない。ただの親切心だ。


 だとしても、体力面には不安があるし、格好もどうにかした方がいいだろう。どうしたものかと考えつつ、手持ちを確認するとちょうどいい物を見つけたので懐から取り出した。ローブを2着、手にしつつ思ったが、空間収納は見せているのだから、わざわざこんなこと必要なかったな…と。案の定、彼女らは不思議そうな顔をしていた。俺は咳払いして、ローブと指輪も渡す。今度は困惑されてしまったので、慌てて効果の説明をした。コミュニケーションって、こんなに難しい物だったとは…


 ちなみにローブは城にあった物で、着た人の体形に合わせてくれるし、温度調節機能もある。雪山だろうが、火山だろうが快適に過ごせる優れた一品だ。指輪の方は俺が趣味で作った魔道具で、引きこもり時代の成果の1つだったりする。効果は身体強化。上昇率は装着者で異なるが、2割増しは確実だろう。


 顔には出していないがエルザの雰囲気が変わった。というか、指輪を見る目がキラキラしている。魔道具と説明した時、わずかに反応していたので好きなのかもしれない。今も詳しく聞きたいけど、そんな場合じゃないと自制しているように見える。そんな様子に思わず口元が緩んでしまったが、俺達は次の街に向かって歩き始めた。

会話が入った途端バランスが難しい。無理やり、まとめた感が半端ない。

熊の魔物の名前が思いつきません。オウルベアって出していいのかな?名前募集中。


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