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俺を神様と呼ぶんじゃありません  作者: 白蛇ちゆき
第1章 彷徨う者達
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第2話 第1村人発見?

 「ちくしょおぉぉぉーーーーー」


 俺は今、雷轟く断崖絶壁で手と膝を地面に着けて、とりあえず叫んでみた。どうにもならないのは分かっているが、叫ばずにはいられなかったのだ。許してくれ。どうやら俺は、最初の選択肢を間違ってしまったようだ。


 森をある程度進んだ所で、俺は自分の体の性能と魔法の力を試すことにした。身体能力は割と高く、拳で木の幹をへし折るのは容易かった。また、魔力を込めると身体強化が出来ることも分かった。魔法の方は、やはりと言うべきか使い勝手が悪く大したことは出来なかった。まぁ、予想していたことでもあるので魔力量を増やしつつ、熟練度を上げていくことにしよう。


 修行が順調だったのがいけなかったのだろうか?森を駆け、時には獣を狩りサバイバルを楽しんでいた。いや、気が付かないようにしていただけかもしれない。既に引き返せない程に遭難していることを。村人はおろか集落すら見つからなかったことを。つまり何が言いたいかというと現実逃避をしていたのだ。


 そんな状態で先を進んでいると獣とは明らかに違う生き物が出て来た。多分、魔物だろうと見当をつけて八つ当たりをした。滅茶苦茶八つ当たりした。さらに先を進むと次第と言葉を話す魔物が現れるようになった。俺は感動して泣いたね。でも、あいつら、会話のキャッチボールが出来ないのがほとんどだった。涙を返せ!まぁ、感動したのは事実だから半殺しで許してやった。言葉を喋れる魔物は上位の存在らしく、かなりしぶとい。欠損すら再生していた。全治にはかなり時間が掛かるだろうが、次に会ったときはコミュニケーションを大事にしましょうと言いたい。


 旅の終わりを知らせるかのように立派な城に辿り着いた。あれ?俺って旅してたの?ただ、村探してただけだよね?と、自分にツッコミをいれながら城を見上げた。辺りを薄暗くさせている黒く分厚い雲。明かりは轟々と断続的に鳴り響く雷のみだった。雷に照らされた城はまるで、魔王城の様相を呈していた。もしかして、本当に魔王がいるのかもしれない。つまり、逆説的に考えて俺は勇者だったのか!


 「よしっ!ここのボスを倒して城の財宝は俺が貰い受けよう。」


 ゲスな勇者様だった。あるいは盗賊という名の勇者なのかもしれない。


 バカな事を考えながら、意気揚々と城に突撃をかけたが俺は後悔することになった。ボスがあまりにも強すぎた。二足歩行のキマイラに迎えられ、会話をそこそこ楽しんだら、「我を認めさせてみよっ!」とか発し、唐突にバトルシーンに移行してしまった。戦いは三日三晩マジで続いた。俺は何度も死にかけながら突入前の自分を呪った。あまりにも準備不足だったのだ。腹が減り、便意を催す。ある意味自分との闘いといっても過言ではないだろう。2対1?の状況ながら、俺は自分を制し、ボスにも打ち勝ったのだ。達成感の余韻に浸って隙があったのは仕方のないことだろう。ボスは死に際、俺に不老不死の呪いを掛けたのだ。ボスを睨みつけたが奴の顔を見て止めた。キマイラの表情なんか分からないが、申し訳なさと安堵の気持ちを雰囲気から感じた。俺が軽く頷いたのを見たボスは床に倒れこみ、光の粒子になって地面に消えていった。


 「そういえば、名前を聞いてなかったな。奴のことは敬意を表して魔王と呼ぶことにしよう。」


 誰もいなくなった部屋で呟いていると膨大な何かが体の中にいきなり入ってきた。俺は堪らず意識を手放した。


 どれくらい気絶していたのか分からないが目を覚ました。意識が朦朧とする中、自分に起きた変化を確認した。まず、頭の中にありとあらゆる情報が溢れていて逆に訳が分からない。ただ、最初の重要な情報を理解した時、魔王の最期は腑に落ちた。この城は星脈穴の上に建っていること。星脈穴とは星の力が網状に広がっているものが集まった、特に大きく特別なものということ。奴は星脈穴に出入りする力の栓の役割、言い換えれば管理者をしていたこと。管理者になった者は星脈穴上の一定範囲から出られないということ。


 魔王がいつから管理者をしていたのかは分からないが、時の流れに置き去られ、孤独に苛まれていたのだろう。城には昔は大勢の人?がいた形跡があったから余計にだ。俺は魔王が安らかに眠れるようにと冥福を祈った。


 「あれ?待てよ。俺ってその管理者になっているみたいなんですけど!?」


 俺は何かの間違えであってくれと願いつつ、慌てて城からの脱出を試みる。だが、見えない壁にぶつかり希望は儚く散った。


 「クソっ!あの野郎、俺に押し付けやがって!この偽善者がっ!!―――――」


 先程の感動のシーンが台無しである。罵倒はしばらく続いた。でも、許してほしい。俺はこの時、24歳。もう少しで25歳になるかというところだった。つまり、ほぼ10年の成果が閉じ込められるという結果なのだ。絶望しかない。青春を無駄にしたのになぁ。


 俺は異世界に来た当初、学園編や冒険者ギルドで高ランク昇格、最速記録を夢見ていた。傲慢な男子生徒を圧倒して可愛い女の子に頼られたり、冒険者ギルドの綺麗な受付嬢にちやほやされたり…


 そんなことを考えている時期もありました。勿論、脱出には成功している。20年掛かったけどね。掛かってしまったよ。苦笑いしか出てこない。まぁ、不老不死のおかげ?で姿に変化はない。ステータス画面にも24歳と変わっていなかった。あれ?40歳なら賢者だっけ?大賢者も夢じゃなかったのか…。それと不死に関しては実験してないので定かではない。


 長くなったが、冒頭の叫びに繋がるという訳だ。これはただ、気持ちを切り替える為に叫んだだけで、今となってはあまり気にしていない。結構充実していた。


 「さて、俺の異世界生活がここから始まるのか。イチから…いいや、ゼロから!!」


 どこかで聞いたようなセリフを吐いて、俺は最初の地へ瞬間移動()んだ。




 ―――――ゆっくりと目を開くと懐かしい光景が広がっていた。


 違いといえば、今は7月下旬で少し暑い。太陽の光が射すようだ。また外壁の物々しさも消えていた。見る限りでは兵士の姿はない。


 周りを見渡していると、かなり距離はあるが一台の馬車を発見した。人とのファーストコンタクトに胸を高鳴らせ、近付いた俺は驚愕するのだった。

引っかかりそうなセリフ・言葉があったら教えて下さい。

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