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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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068 盗賊さん、パパに頼みごとをする。

 部屋に戻り、プルと一緒にゆったりと入浴しながら今日1日を振り返り、ラビィが姿を見せなかったことに今更ながら違和感を覚えた。ラビィのことだから朝一番に錬金術ギルドを訪問して来ても不思議ではなかった。

 もしかしたらボクらの不在時に訪問して、すごすごと帰ったのかもしれない。

 そういったことを想定すると、やはり錬金術ギルドが無人であることの方が多い現状は、早急に改善したいところ。

 ある程度の下準備が整えば、グレンが常駐することにはなるとは思うけれど、それまでは難しい。

 そこまで考えて、ここはもう焦って雑な人材を確保するより、きちんとした職場環境を整えることを優先した方がいいだろうと割り切ることにした。下手に厄介な人材を抱え込む可能性を高めるよりは、慎重にことを進めた方が後々のことを考えると気楽に思えたからね。


 入浴後、ボクは昨晩同様に[ジェミニタブレット]を取り出してパパに連絡を入れた。すると待ってましたとばかりに、すぐに返信があった。

『今日はどうしたのかな?』

『こっちに来るふたりのことを聞いておこうと思って』

『サクラさんとアッシュくんのことを?』

『あのふたりにはボクのことどう伝えてあるの』

『そうだね。魔術職じゃなかったから男の子として外遊させてるって伝えたかな』

『ボクの天職がなにかって伝えてないの?』

『薄々は察してるんじゃないかな。そうでもなければ成人の儀を受けてすぐに、他領へ行かせるなんてあり得ないからね』

『そっか。わかったよ。それでふたりは明日のいつごろ到着するのかな』

『予定では昼前に到着するはずだよ』

 ふたりの到着が昼前ならアイテムの売却や、ユーナちゃんのお母さんの手掛かりを探す時間も多少は確保出来るかな。

『じゃあ、そのくらいに迎えに行くよ』

『頼んだよ』

『うん。それでこの話はここで終わりなんだけど、別件でパパに調べて欲しいことがあって……ちょっと聞いてもらってもいいかな』

『なにかな』

『ボクが乗っていた乗合馬車に同乗していた人物の住民登録を調べて欲しいんだ。届出が出されていた天職なんかもね』

『なにがあったのかな』

『娘を連れた女性が、どうも子供を残して姿を消したみたいでね。その足取りを追う手がかりが欲しいんだ。娘の年齢からして少なくとも5年以上前に、魔術職の男性と一緒にレッドグレイヴに移住した人物なんだ。もし可能なら、その男性の情報も知りたいところなんだけど、調べられるかな』

 ボクは捲し立てるように、現在わかっていることを一気に記してパパに伝えた。

『そこまでわかっているのなら2日もあれば調べられるんじゃないかな』

 レッドグレイヴに不利益をもたらす可能性があったグレンが働いていた工房のとき違って、今回は完全に個人的な事情だっただけに簡単に引き受けてもらえるとは思っていなかった。

 少なくとも一度は断られて、そこから引き受けてもらえるようにどうにか交渉するつもりだっただけに、拍子抜けしてしまった。

『あっさり調べてくれるんだね』

『断られると思ってたのかな』

『正直に言えばね』

『頼んだのがヒイロじゃなければ断ってただろうね』

『本当にいいの?』

『大切な娘に頼みごとをされたらパパは断れないよ』

『ごめんなさい。わがままなお願いなんてして』

『いいよ。ひとりで出来ることなんてたかが知れてるし、使えるコネは最大限使うべきだよ。それに会わせてあげたいんだろう。その子と母親をね』

『うん』

『それじゃ、少しでも早く情報提供出来るよう努力させてもらうよ』

『ありがとう、パパ』

『いろいろと気掛かりかもそれないが、夜更かししないで早く寝るんだよ』

『大丈夫だよ。パパも無理はし過ぎないでね。おやすみなさい』

『おやすみ、ヒイロ』

 どうもパパはボクが母親というものに執着してるとわかった上で、直接そのことに触れずにいてくれたようだった。

 深い息を吐き、軽く頭をふってから[ジェミニタブレット]をウエストポーチにしまい込んだ。そして次の作業に取り掛かろうと、ウエストポーチから今度は植物紙と筆記具取り出した。

 ボクはまっさらな紙の上に筆記具を走らせ、自身の記憶を頼りにユーナちゃんの母親の似顔絵を正確に描いた。魔草のスケッチや魔術訓練の一環で、美術的素養を身に付けたこともあり、かなり写実的な似顔絵が完成した。完成したそれをボクは[アイテムキューブ]で数枚複製した。

 城壁外に彼女が出たかどうかだけでも、各城門を担当する衛兵隊員に確かめてもらうために似顔絵を渡す予定だ。もし可能ならミンティオに、各城門の衛兵隊員と繋ぎを付けてもらえないだろうかと考えながらウエストポーチに似顔絵をしまい込んだ。

 今日出来ることは全て片付けたし、あとは明日のボクがなんとかするしかないね。

 ボクは肩の上でじっと作業を見ていたプルをなでてから、就寝すべくベッドに足を運んだ。

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