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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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52/117

052 盗賊さん、余所者だと自覚する。

 表通りで乱闘騒ぎがあったことを感じ取り、それが静まったとなるや否や付近の住民がわらわらと野次馬しに来ていた。それに混ざるようにボクも通りに出る。副ギルド長は、適当な住民に衛兵隊を呼ぶように頼んでいた。頼まれた相手は特に渋る様子もなく、それに応じていた。

 取り急ぎの対処を済ませた副ギルド長は、さっと周囲を見回して人混みの中からボクの姿を見つけて手招きをした。

 ボクは手招きに応じて、人混みを掻き分けるように副ギルド長に駆け寄った。

「ごめんなさいね。騒ぎを大きくしてしまったみたいで」

「いえ、さっき仰っていたように、あの人達が錬金術ギルドを狙ってたのなら、また別の悪い人達が騒ぎが大きくなったことで簡単に近付けなくなりそうですし、ありがとうございます」

「まぁ、本当にそうだったかどうかはこれから取り調べされないとはっきりしませんけれどね」

 そうは言っていても副ギルド長は、彼らが薬師ギルドに雇われたならず者だと確信しているようだった。

「それにしても副ギルド長って強いんですね。やっぱり冒険者ギルドで働いてる人達って、みなさんそんなに強いんですか」

「申し訳ないのだけれど、冒険者ギルドの外で私のことを役職名で呼ぶのは控えていただけるかしら」

 眉根を寄せ、苦笑しながら副ギルド長は苦言を呈してきた。

「あ、ごめんなさい。お名前を存じていませんでしたので……」

「それもそうよね。私ったらすっかり名乗ったつもりでいたわ。私はヒカリ。ヒカリ・シゾルターよ」

 自分の失態を恥じるように、薄らと頬を赤ながら副ギルド長は名を名乗った。

「よろしくお願いします、ヒカリさん。ボクはラスティ・ラストリアスです」

 認識阻害の腕輪を着けた状態だったので、ボクはラビィの考えてくれた偽名を名乗った。その後、羞恥を誤魔化すためか、それとも打ち解けようとするためか、ヒカリさんから軽い雑談を持ちかけられ、適宜の応答をしていると衛兵隊が駆け付けた。

 ヒカリさんが衛兵隊に状況を説明し、ならず者を引き渡した。その中には指名手配されていた人物もいたらしく、ヒカリさんは衛兵に感謝され、握手を求められていた。


 どうにか状況が片付き、ボクらは改めて錬金術ギルドを目指した。とは言っても既に目と鼻の先だったので、すぐに到着した。玄関扉を鍵を使って開けようとして、鍵穴周辺や扉自体に最近付いたと思われる傷が多数見受けられた。どうやら周辺に潜んでいたやつらは、一度錬金術ギルドに侵入を試みたらしかった。

 彼らは古い合鍵を持っていたことだろうし、それで開けようとして開かずに強引な手段で開けようとしたんだろう。どうやら今朝のうちに鍵を造り替えていたり、錬金術ギルド自体を【施錠】しておいたのは正解だったらしいね。

 鍵を開け、ヒカリさんをホールに招き入れ、いつも食事を摂っているテーブルで待つようお願いしてからラビィのいる部屋に向かった。

 ココンっと短くノックしてから部屋に入るとラビィは、焦ったようにワタワタとしていた。そんなラビィの姿を目にしながら後ろ手で扉を閉める。

「ノックからドアを開けるまでが早いよ」

「錬金術ギルドを狙って、外に潜んでるのがいたからね。ボクの知らないうちに忍び込んでる可能性もあったから、念のため不意を打たれないようにね」

 見当外れなことを言ってラビィの文句を煙に撒き、話を別の方向に逸らした。

「え、じゃあ。さっき表の通りがざわついてたのってそれが原因なの」

「そうだね。それと冒険者ギルドからは副ギルド長が話を聞きにここまで来たよ」

「副ギルド長って、もしかして閃剣(せんけん)のヒカリのこと」

「閃剣?」

 そんなことも知らないのかと言いたげな目をラビィは向けて来た。

「この国でも数少ない二つ名持ちのランク6冒険者なんだよ。片刃の直剣を両手に携えて、1度瞬く間に魔物をバラバラに斬り裂く神速の斬撃から閃剣の名が付いたの」

 興奮したように語るラビィの話からヒカリさんが本来の武器を所持しておらず、実力を発揮出来ない状態で戦っていたらしいとわかった。それとヒカリさんは自身の知名度が高いからか、名乗る必要性を感じていなかったらしい理由も知ることが出来た。

 もしそうならラスティを名乗ったボクが余所者だと思われてしまったかな。その辺りはなんとも判断し難いので、ヒカリさんの前で下手なことは口に出来そうもないね。

「そうなんだね」

「反応薄いね」

「そんなことより、これから彼女をここに連れて来るから、さっきみたいな変な反応は控えてくれるかな」

「あ、はい」

「それとボクは、彼女に対してラスティと名乗ったから、頭に入れておいてね」

 一瞬前まで、しゅんとしていたラビィは、一転してパッと喜色満面の笑みを浮かべていた。

「使ってくれたんだ、その名前」

「今は余計なことを考えて腕輪への魔力供給を欠かさないようにね」

「大丈夫、大丈夫。任せておいて」

 自身の胸元をとんとんと力強く叩いて、ラビィは自信満々に応答した。

「任せたよ」

 それだけ言い残してボクは、ヒカリさんの待つホールに戻った。



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