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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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45/117

045 盗賊さん、正体を明かされる。

 壁を塞ぎ、地下工房に背嚢を下ろしてホールに戻る。待たせていたラビィと合流し、錬金術ギルドを出たボクは、玄関扉を施錠しながら建物全体に対して【施錠】スキルを行使した。これならそう簡単に外部から干渉することは出来ないはず。最低限の襲撃対策をしたボクは、ラビィに先導されながら領主邸を目指した。


 バーガンディ中央地区にある領主邸に到るまで、ラビィはどことなく落ち着きがなく、そわそわとしていた。8つの鐘が鳴るくらいに領主邸付近にまで到着し、正面の門で警備をしている兵士にラビィは声をかける。

「お客様をお連れしました」

「話は聞いている。入れ」

 そんな素っ気ない応答を受けてボクらは領主邸の敷地内に足を踏み入れた。そこからは特に呼び止められることもなく、ラビィの案内に従って屋敷内の一室に招き入れられる。その部屋でボクらを出迎えたのは、どういうわけかラビィと瓜二つの少女だった。

「えっと、すぐ着替えるので待っててもらっていいですか」

 そう言ったのはボクの後ろに佇んでいたラビィで、部屋の主人である少女ではなかった。

「ボクが今置かれている状況の説明は、その後してもらえるのかな」

「なんかごたついちゃってすいません」

「まさか昨日の今日でこんなことになるなんてね。それより着替えるんならボクは一旦部屋を出るよ」

 一応、男を装ってるわけだし、女性の着替えの場に居座るわけにはいかないからね。

「あ、大丈夫です。この服[マルチクロース]ってアイテムなんです。なのでこうやって──」

 ラビィがメイド服に魔力を注ぎ込むと瞬間的に形状が変化し、部屋に居た少女が着ている物とお揃いになっていた。

「一瞬で早着替え出来ちゃうんですよ」

「着替えが済んだのなら、早速説明してもらえるかな。そちらのお嬢さんのことも含めてね」

「たはは、そうですよね。説明しなきゃですよね」

 困り顔で苦笑するラビィは、認識阻害の腕輪を外す。そしてボクらが入室してから一言を発していない瓜二つの少女に歩み寄り、魔力を込めた手で、ぽんっとその身体に触れた。すると少女は表情どころか顔を失くし、最終的には人の姿ですらなくなっていた。少女の居た場所に残っていたのは、装飾過多な小型の宝箱だった。

「さっきの子は私の身代わりをしてくれてた[シェイプシフター]ってアイテムなんです」

 そこで一度言葉を切ったラビィは、これから重大な事実を告げる決心をするように、深呼吸をしてから重々しく口を開いた。

「そして[シェイプシフター]に身代わりになってもらっていた私は、ここバーガンディの領主のひとり娘、マリア・バーガンディです……なんだか騙してたみたいでごめんなさい」

「薄々そんな気はしてたから問題ないよ」

「え、そうなんですか。あ、やっぱり前から私のこと知ってたとかですか」

 本気で正体を隠せていたと思っていたらしいラビィは、ハーフツインにした髪の右の一房を摘むと指先で弄ぶ。どうやらバーガンディでは珍しい髪色だからバレたのだと思っているようだった。

「迂闊な発言が多かったからね。家には没収されたダンジョン産のアイテムがたくさんあるだとかね」

「た、確かにそういうこと言っちゃってましたね」

 自分の失敗に気付いたラビィは、引き攣った笑みを浮かべていた。

「それでこれからボクはキミのお父様に会わなきゃいけないみたいだけど、どういった内容で呼び出されたのか聞いてる?」

「なんというか私が正体バラしても全然変わらないというか、前よりくだけた感じすらしますね」

「キミのこれまでの立ち回りから判断して、態度を変える必要がなさそうだからね。そちらとしてもその方がやりやすいだろう」

「えぇ、まぁ、そうなんですけど。なんていうか、ダンジョンで出会った謎の人物の正体が実は領主の娘だったなんてっ! みたいな驚きのリアクションみたいなものは欲しかったです。ヒーローの身バレも衝撃的な感じになることが多いので」

「残念ながら驚ける要素がなかったからね」

「その辺りは、お約束ってやつで驚いたフリだけでもしてくれてよかったんですよ」

 だんだんと熱が入って来たラビィは、大袈裟な身振り手振りで希望のシチュエーションを力説する。

「ボクは娯楽小説のお約束とやらを知らないからね。それよりも話を戻そうか。あまりにも話題がズレてきてるからね」

「あ、はい。ごめんなさい」

 話を戻そうとラビィのヒーロー談義に水を差すと、彼女はしゅんとして頭を下げた。

「えっと、それでお父様がなんでヒイロさんを呼んだかでしたね」

「なんの説明もされずに、ここまで連れてこられたからね。会う前に少しくらいは事情を知っておきたいんだ」

「すごく言いにくいことなんですけど、私にはなにもわからないです。たははは……」

 右手人差し指で、ぽりぽりと頬を掻きながらラビィは苦笑いする。無理に絞り出された笑い声は尻切れて、ラビィはボクの顔色を伺うように、上目遣いでちらりとこちらに視線を投げかけて来た。

「それもお約束なのかな」

 ラビィの様子からなんとなく察してはいたけれど、ボクにはそう返すことで彼女に苦言を呈することしか出来なかった。


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