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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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043 盗賊さん、押し付ける。

 草一本生えていない地面を歩みながら崩壊させたダンジョンについて考える。ボクが魔力を浸透させたエリアは第2階層の床くらいまでだったはずだけれど、随分と深いところまで崩れていた。枯れた湖の様子からして、第3階層よりも深い場所に元々地下水脈のあった大空洞でもあったのかもしれない。

 あのダンジョンは崩壊した階層よりもさらに深い階層まであるのは確実だろうし、バーガンディに戻ったらそれとなくラビィに伝えることにしよう。集団暴走(スタンピード)さえ起こらなければ、ダンジョンは多くの資源を産出してくれる有難い存在だしね。

 バーガンディ領主が新たなダンジョンの情報を知れば、公共事業としてダンジョン周辺の土地を開拓するはず。放置すれば集団暴走(スタンピード)の温床にしかならないからね。


 魔草の群生地にまで戻り、軽く休憩をしてからボクは自身で切り拓いた森の中を突き進む。太陽が茜色に染まる頃には、森の切れ目にまで戻って来れていた。

 ボクは森を出る前に背嚢を下ろして、その中に複製した下級ポーションを背負える程度に詰め込む。それを背負い直し、ボクは偽名を使ってバーガンディの城門で一悶着起こすか、普通に足止めされるか考えたけれど、今回は認識阻害の腕輪を着けず、偽名を使うのは避けることにした。

 カチャカチャとなる薬瓶の音を背に、日没前にはどうにか東の城門前にまでたどり着けた。城門前には衛兵がひとりだけ怠げに佇んでいた。ボクは城門を出たときと同じように、錬金術師免許を提示して城門を潜ろうとした。すると予想通りに引き止められた。

「その背の荷はなんだ」

「ポーションですよ。外で採取した薬草の鮮度が落ちないよう採取地で作製したんです」

「確認させてもらおうか」

 ボクは言われるままに背嚢を下ろし、お腹周りが脂肪でたるんだ中年の衛兵に中身を確認させた。衛兵は薬瓶の全体を回し見ただけで中身を確かめるようなことはしなかった。それでなにがわかるのかと思っていると、衛兵はわざとらしい声音で告げて来る。

「これを持ち込ませるわけにはいかんな」

「なぜです」

「この瓶には薬師ギルドの証印がないからさ。この瓶の中身がなんであったとしても、ここで認可されていない代物を持ち込ませるわけにはいかんのでな。全て没収させてもらう」

 この口ぶりからして薬瓶に薬師ギルドの証印が入った物を使えば、中身をレッドグレイヴのポーションで詰め替えて持ち込めそうだね。

「ボクがつくった物だとしてもですか。ボクが錬金術師だということは身分証でわかってるはずですよね」

「あぁ、そうさ。お前が錬金術師だろうとなんだろうと関係ない。ここではそういう決まりなんでな。密輸の可能性がある以上は、没収しなければならん。もし、それに応じられんと言うのなら1本につき金貨3枚は出してもらおうか」

 衛兵が提示したのは、薬師ギルドで売られていた劣化とも言えないレベルの下級ポーションもどきの100倍以上の金額だった。

「それはいくらなんでも吹っ掛け過ぎなんじゃないかな」

「私に言われても知らんよ。これはここの決まりなんだ。払えないんなら大人しく全て引き渡すんだな」

 ボクとしては全部引き渡したとしても全く痛手はないが、交渉の余地もないのは痛いね。せめてミンティオが居てくれれば話くらいは出来ただろうに、彼は既に仕事を上がったのか、付近に姿は見当たらない。

 仕方ないから引き渡したポーションがどこに流れるかだけでも探らせてもらうことにしよう。

「わかりましたよ。全部置いていけばいいんですね」

「あぁ、そうだ」

 同意を得たので、ボクは背嚢いっぱいに詰まった薬瓶を石畳の上に並べていった。途中で衛兵が「おい、ちょっと待て」などと言って止めようとしていたが、当て付けのように無視して100本近い薬瓶を並べ続けた。総重量は60㎏といったところかな。重さだけなら問題ないだろうけれど、数が数だけに両腕で抱えて運ぶことも出来ないだろうね。衛兵隊がみんな彼と同じ判断を下すかどうかも、彼の対処の仕方でわかるはず。

「これで全部です。それと今後同じように没収されても困るんで聞きますが、ポーション作製に必要な薬草の持ち込みは制限されてるんですか」

「草なんぞ好きに持ち込め。あー、クソッ。余計な仕事増やしやがって」

「お仕事、ご苦労様です」

 最後に余計な一言を添えると、ぎろりと睨まれた。それなりに恨みを買っただろうけれど、彼がポーション1本に対して要求した金額と同等の価値はあるんだから、感情任せに薬瓶を割ったりなんてことはしないだろうね。

 背中に衛兵の悪態を受けながら城門を抜け、人目のない適当な路地に入って認識阻害の腕輪を着けた。魔力を多めに流して効果を強く発揮させ、取って返すように城門付近に戻った。

 中年の衛兵は雑然と並ぶ薬瓶を前に頭を掻きむしっていた。そこへ交代に来たらしい若い衛兵が現れると、彼は薬瓶を近くの倉庫らしき煉瓦造りの建物に運ぶのを手伝わせていた。

 どうやら彼個人の独断によってポーションが没収されたわけではないらしい。薬師ギルドの証印のこともあるし、衛兵隊と薬師ギルドが繋がってないとは言い切れない要素が増えてしまった。あとは倉庫に薬師ギルドの関係者が現れたら確定かな。


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