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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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041 盗賊さん、城壁外に出る。

 日が昇るまでまだかなりの時間があったので、全身の筋肉の具合を確かめるように、呼吸を整えながらゆったりとした動作で身体を動かす。魔素が身体の隅々にまで行き渡り、魔力が充実していくのがわかった。目をつぶり、意識を身体の外側にまで拡張することで、自身の存在を俯瞰しながら魔力を均一化するように身体の末端にまで馴染ませる。生成されたばかりの魔力から濃淡がなくなり、身体のどこにも不具合はないと自己診断を下す。

 昨日は寝不足で集中力が欠けていたので、今日はそのようなことがないように、魔力操作により体調を万全に整え治した。

 魔力によって全身が活性化し、頭もしゃっきりとしたボクは、着替えを済ませてホールに降りた。グレンも既に起きていたらしく、彼は朝食の準備をしていた。

「おはよう、グレン」

「はよう。もうちょいでメシ出来るぜ」

「毎度すまないね」

「今のオレに出来ることなんざ、これくらいしかねぇしな」

「ボクとしてはかなり助かってるよ。料理なんてまともにしたことないしさ」

「ヒイロにも出来ねぇことなんてあるんだな」

「ボクも人間だからね」

 そんな言葉の応酬をしている間に朝食は完成したらしく、グレンは盛り付けられた料理を一人前ボクにも手渡す。それをいつものテーブルに運び、腰を落ち着けた。

 そうして迎えた朝食の席で、料理があらかた片付いた辺りでボクは、グレンの前に水の[アイテムキューブ]を差し出した。

「これは?」

「魔石、みたいなものかな。上手く魔力を流し込めば水が出るんだけど、試してみてくれないか」

「魔石を使うときと同じでいいのか」

「それで問題ないよ」

 グレンは空になったスープ皿の上で[アイテムキューブ]に魔力を注ぎ込もうと念じる。しかし、[アイテムキューブ]には一向に変化は現れなかった。

「ダメだな。なんかオレの魔力が拒まれてるみたいで、どうにもならないな」

 ボクの魔力で【施錠】されて、外部からの干渉を弾いちゃってるのかな。もしそうなら他人に[アイテムキューブ]や[マジックキューブ]を流用されることはなさそうだね。

「そうか。協力ありがとう」

「それって結局なんなんだ」

「人工的な魔石をつくろうと思ってね。これはその試作品みたいなものだよ。残念ながら効果は発揮してくれなかったみたいだけどさ」

「本当につくれるのか、そんなもん」

 グレンは目を細めて[アイテムキューブ]に疑わしげな目を向けていた。

「なんとも言えないね。成功こそしていないけれど、ボクはつくれるんじゃないかと思うよ」

「まぁ、ヒイロだしな。そのうちつくれそうな気がするぜ」

「期待に応えられるようがんばるよ」

 他人が[アイテムキューブ]を使えるかの検証も済んだので、グレンから[アイテムキューブ]を受け取りながら話題を移す。

「ところでグレン、使ってない背嚢とかないかな。今日は城壁外に薬草を取りに行きたくてさ」

「それならあると思うぜ。オレが冒険者やってたときに使ってたやつが。ちょい待っててくれるか、取ってくるからよ」

「じゃあ、ボクはその間に食器の片付けでもさせてもらうよ」

「あー、じゃあ。頼めるか」

「任せてくれ」

 皿洗いを引き受けたボクを残してグレンは、背嚢を探して一段飛ばしで階段を登っていった。

 任された仕事を片付け、朝食を摂っていたテーブルで一息付いていると、グレンはやたらと大きな背嚢を抱えて戻ってきた。

「随分と大きいね」

「オレとしちゃ普通なんだけどな。素材採取の道具やら食料やら詰め込みまくったらこんくらいねぇと厳しくってよ」

 最近、ウエストポーチの便利さに慣れ過ぎてたのかもしれない。錬金術の道具なんかも持ってくなら、確かにこれくらいは必要かもね。

「それ、もしかしてもう採取道具一式入ってたりする?」

「あぁ、中の道具まるまる使わなくなってたしな」

「借りてもいいかな」

「貸すつもりなきなゃ持ってこねぇよ」

「それもそうだね。それなら遠慮なく借りさせてもらうよ」

「おうよ」

 


 借り受けた背嚢を一度部屋に運び、ウエストポーチから最低限必要な道具類を移す。外出の準備が整ったボクは、戸締り対策を思い出して、慌てて錬金術ギルド中の鍵を【奪取】で造り替えて行った。

 全ての作業を終え、合鍵を用意したボクは、ひとつをグレンに渡してから城門に向かった。


 城門で身分証を提示した相手は、どこか見覚えのあるへらりとした表情の青年だった。確か名はミンティオだったはず。

「お、2日ぶりっすかね。外には何用で?」

「薬草採取だよ」

「薬草っすか。それだったら他の門から出た方がいいかもしんないっすよ。今、東の森まで足伸ばしたら危ないかもしんないんで」

「危険な魔獣でも出たんですか」

「野盗っすよ、野盗。まだひとり見つかってなくて、って心配する必要なかったっすね。あれ捕まえたのそちらんでしたもんね」

「あぁ、それでですか。あの野盗、まだ見つかってないんですか」

「そうなんすよ。街道に沿って調べてってんすけど影も形もないんすよね」

「取り逃がしてしまったボクが言うのもなんですが、かなり面倒なことになってるみたいですね」

「いやぁ、そちらさんが気に病むことないっすよ。本当なら被害が出る前にオレらで片付けとかなきゃいけなかったんすから」

 話しているボクらの間に咳払いが割り込んでくる。それは後ろに並んでいた人物によるものだった。どうやら長話していたせいで待たせてしまったらしい。

「あ、すんませんっす。お話はまた今度ということで」

「はい。また時間があるときにでも」

ボクは後ろに並んでいた人達に、ぺこりと一礼して「ご迷惑おかけしました」と一言添えてから城壁外へと出た。


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