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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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026 盗賊さん、裁縫師スキルの活用法を提案する。

「ヒイロ、本当に魔術職じゃないのか。いや、魔術職だったとしても普通じゃ考えられないぜ。建物を丸々魔導具にしちまえるなんてよ」

 呆けていたグレンは、首を左右にふってから早口で捲し立てる。ボクとしてはレッドグレイヴで身近にいた人達とそんなに魔力量は変わらないはずなんだけど、こっちではそうでもないのかな。

「レッドグレイヴの魔術師は、みんなこんなものだったよ」

「そうなのか? オレもレッドグレイヴには3年居たが、そんな魔術師は見たことねぇけどな」

「まぁ、このくらいなら居るところにはたくさん居るのさ」

「オレは魔術職のやつと面識ねぇからわかんねぇけど、ヒイロがそこまで言うのならそうなんだろうな」

 どこか釈然としないといった面持ちのグレンだったが、最終的には自身の中で折り合いをつけたのか、ボクの発言内容に納得してくれていた。

「にしてもすげぇな。こうも短い時間でボロっちかった建物が綺麗にされちまうなんてよ」

「昨晩、夜通しやってた研究の成果だよ」

「それってオレにも出来るようになるか?」

「どうだろう。これに関してはボクのユニークスキルを利用してるからね」

 見た目上こそ錬金術師のスキル【合成】だけれど、天職は魔術職ではないといった以上は、ボクの天職は錬金術師ではないと知られているので、ユニークスキルと偽ることにした。天職が世間的に忌み嫌われている盗賊だって知られたら、いろいろと今後の生活に支障が出ちゃうだろうからね。

 ダンジョン産の特殊なアイテムでもなければ他人の天職や所持スキルなんて知りようがないので、そういった物を持ち出してくる手合いが出て来るまでは、今の調子で取り繕うことにした。

「そうか。ユニークスキルだったのか。……オレの裁縫師としてのスキルも錬金術に応用出来ないもんかな」

「グレンが使えるのって、どんなスキルなのかな」

「目にした立体物を平面図として描き出せるようになる【展開】スキルと、脳内の平面図通りに生地を切り抜ける【裁断】スキル、あとは素材を糸にする【製糸】スキルくらいかな。あー、あと【縫製】ってスキルもあるけど、あれはたぶん単に縫うのが上手くなるってだけだな」

 スキルの説明を聞いた感じだと、なにかと応用出来そうなものだった。

「その【展開】って、服以外の立体物にも使えるのかな。例えば錬金術ギルドの建物とかさ」

「そういうのは試したことがなかったな」

 グレンは錬金術ギルドを見上げながらスキルを発動させたのか、目に魔力が集中していた。やがて目を瞬かせ、軽く頭をふった。

「出来なくはないみてぇだが、外っ面の表面だけしかわかんねぇな。この平面図を型として使ったら空っぽの箱が出来上がりそうだ」

「それじゃさ、【裁断】で薄い金属板って切り抜けそう?」

「どうだろうな。試したことはねぇが、なんとなくやれそうな気はするな」

「それならつくれる物の幅は広がるね。あとは【製糸】だったね。それはどんな素材でも糸に出来るのかな。例えば薬草を他の素材と混ぜて糸にしたりなんてことも」

「ポーション作製と似たようなもんか。もしそれが出来んなら裁縫師のオレにしかつくれねぇもんがつくれっかもな」

「そうだね。それとたぶんだけどグレンのお父さんも、細工師のスキルで似たようなことやってたんじゃないかな。馬車馬の蹄鉄が長持ちするのに加えて、馬が怪我をしなくなったって話だったしね」

 それを聞いたグレンは、どこか納得したように、ほぅっと息を吐いた。

「頭の片隅に引っかかってたものが、やっと取れた気分だぜ」

「その切っ掛けをつくれたみたいでよかったよ」

「あぁ、感謝してもしきれねぇくらいだ」

「大袈裟だね」

「オレにとっちゃそれだけの大事だったってことさ」

「その感謝は、今から地下を好き勝手に増設するので相殺されちゃうかもね」

「なにする気なんだ」

「ただ敷地いっぱいいっぱいの地下をつくるだけだよ。下に掘り進む分には、法的にもたいして制限されてないだろうしね」

「うちの地下にダンジョンでもつくろうってのか」

「似たようなものかな。とりあえず今日はお試しで、地下3階くらいまでつくってみるつもりだよ。それと上手くいけば地下に薬草の栽培環境も整えられるかも」

「建物丸々魔導具にしちまったくらいだから今更だが、本当にそんなこと出来るもんなのか」

「それなら自分の目で確かめてみるといいんじゃないかな」

「お、おう、そうだな」

 ボクの挑発めいた言葉にたじろぐグレンと連れ立って、地下の工房に足を運んだ。ボクは早速、壁に手を触れて魔力を流し込み、地上にある建物の外壁ギリギリまでの土に魔力を浸透させた。

 手始めに地盤が崩れて地上の建物が落ちてこないように、地下の天井部分を分厚く、それでいて強固に土を押し固めて【施錠】する。しっかりと地上を支える地盤の補強が出来たところで、地下室となる空間を綺麗な長方体になるよう形作っていった。

 その作業を地下工房の壁越しに行っていたからか、グレンはボクがなにをしているのかと不思議そうに見ていた。

「出来たよ。あとはこの部屋のどこかに扉を付けるだけなんだけど、薬師ギルド関連のこともあるから、この先に続く扉は隠し扉にしないか?」

「なにしてたのか全く分かんなかったが、もう出来たのか。まぁ、それに関しちゃ今更驚くまでもないかも知れんが……薬師ギルドと関わってる連中が、うちの工房で好き勝手やってくれやがったからな。隠し扉にするってのは賛成だぜ」

「じゃあ、グレン。この壁に対して工房入口の扉と同じ形に【裁断】してみてくれないか。なるべく右手の壁際に寄せる感じでね」

「一応、やっちゃみるが失敗してもなにも言うなよ」

 あまり乗り気でないグレンだったが、工房の扉を【展開】で脳内に平面図として刻み込んでから指定した壁に手を触れた。するとすぐに確かな手応えがあったらしく、グレンは感嘆の声を漏らしていた。


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