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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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022 盗賊さん、敵情視察する。

「ごちそうさまでした」

「また来てね」

 アンジーとそういったやり取りを食堂の店先で交わしていると、どことなくご機嫌斜めなグレンは、錬金術ギルドを目指して一足先に歩き出していた。そんな彼を呼び止めるように声をかける。

「グレン、ボクは薬師ギルドの直売店をちょっとのぞいて来るよ」

「それならオレも」

 同行を申し出ようとしたグレンに対して、ボクは首を振ってそれを拒否した。

「同行させられない理由は、言わなくてもわかるよね」

 そう言うとグレンは食い下がることなく、すぐに引き下がった。

「あぁ、それとどこかおすすめの宿はないかな。そろそろ部屋取っておかないと、野宿することになりそうだしさ」

「宿なら錬金術ギルド使うといいぜ。部屋なら腐るほど空いてるしな。それに今から探してもろくに空いてないと思うぜ」

「それなら今日はご厄介させてもらおうかな」

「今日だけじゃなく、ここにいる間は、ずっと好きに使ってくれていいぜ。空き部屋のままだと余計に痛むのが早まりそうだしな」

「ありがとう。助かるよ」

「いいってことよ。オレばっかりが助けられてばっかだったしな。こういったことで少しでも恩を返してかねぇと返済しきれねぇからな」

「別に軽く受け取っといてくれてもいいんだよ」

「それだけは出来ねぇよ。オレの性分的にも、錬金術ギルドの人間としてもな」

「義理堅いね。じゃ、ボクは相手方の様子でも探って来るよ」

 ひらひらと手を振ってグレンと別れるべく、錬金術ギルドとは違う方向に爪先を向けた。

「場所はわかるか?」

「アンジーに聞いたから大体の場所はわかってるよ」

「そうか。ならオレは先に戻ってるぜ」

 グレンはどことなく不機嫌さを醸し出させ、ぶっきらぼうに一言告げると錬金術ギルド方面に去って行った。


 ひとりになったボクはさっさと用件を済ませるべく、中央の大通り沿いにある薬師ギルドの直売店に向かった。行き着いた先で目にしたのは、冒険者と思しき格好をした人々が多く出入りする煉瓦造りの店舗で、その繁盛ぶりは一目瞭然だった。

 ボクは冒険者達に紛れて店内に入り、並べられた品々を魔力を集中させた瞳でひと通り眺めていった。その感想としては、劣化下級ポーションだけでも勝負になりそうだといったところだった。

 ポーションとして並べられた品が、ボクの予想に反してヒールウォーターでなかったことには多少驚きはあったけれど、その品質は明らかにボクのつくった劣化下級ポーションよりも劣っていた。

 他の品々も品質がバラバラで、なんであんなに客が出入りしてるのか不思議でしかたなかった。


 錬金術ギルドに戻ると三角巾とエプロンを身につけたグレンが、清掃作業に励んでいた。

「おう、おかえり」

「ただいま、でいいのかな」

「あぁ、今日からここは自分の家だと思ってくれていいぜ。2階の突き当たりにある部屋を使ってくれ。たぶんあそこが一番日当たりがいいからよ。あとはそうだな。内装とかは好きにいじってもらってもかまわねぇぜ。んで、これはその部屋の鍵な」

「ありがとう。遠慮なく使わせてもらうよ」

「それと風呂とトイレも部屋に付いてっからそれを使ってくれ」

「個室にそんなものまで用意されてるの」

 レッドグレイヴ邸と違って、お風呂なんかは無理だろうと思っていただけに驚きは大きかった。

「なんでも曾祖父さんが無類の温泉好きだったらしくてな。本当は総天然木の大浴場つくりたかったらしいんだよな。風呂の魔導具は、その名残だよ」

「それなら早速使わせてもらおうかな」

「火と水の魔石がねぇとお湯は出ねぇから、その辺はそっちで用意してもらえると助かる」

「もちろんさ」

「んじゃ、風呂入って落ち着いたら薬師ギルドの話聞かせてくれ」

「わかったよ」


 ボクは軽やかなステップを踏んで2階に上がり、割り当てられた個室に入った。部屋に入ってすぐ左手には扉がふたつと正面奥に扉あり、手前がお風呂でその隣がトイレだった。奥の扉の先にあった居室は、レッドグレイヴのボクの部屋よりも手狭ではあるけれど、生活するには充分な広さがあった。ベッドだけでなく、大きめの作業机も設えられているので、ここで簡単な錬金術の実験するのも問題なさそうだった。

 ボクは早速浴室に入り、緩い曲線を描く金属管の左右に赤と青のレバーの着いた魔導具に、手持ちの魔石を取り付けて左右のレバーを操作した。すると心地よい温度のお湯がどぼどぼと金属管から勢いよく溢れ出した。

 浴槽にお湯がたまるのを待ちながら魔導具の魔力の流れを観察をしていると、すぐにお湯はいっぱいなっていた。


 久しぶりの入浴を充分に堪能したボクは着替えて1階に降りた。するとホールのテーブルにグレンが食事が並べているところだった。

「そうは見えなかったが、ヒイロも疲れてたんだな」

 なぜそんなことを言われたのかわからなかったボクは首を傾げた。

「どうかな。ボク自身はそんな気はしないけど」

「そうなのか。ヒイロが部屋に行ってからもう鐘3つは鳴ったから仮眠でもとってるのかと思ったが」

「ゆっくりお風呂に入ってただけなんだけど、そんなに経ってたんだね」

「そんなに入ってたら身体溶けちまうんじゃねぇか」

「グレンも試してみるといいよ」

「いや、遠慮しとくぜ。どうにも頭がぼんやりしちまって、長々と風呂には入ってらんねぇからよ」

「曾祖父さんはお風呂好きだったみたいなのに、グレンは違うんだね」

「まぁな。それより飯にしようぜ。さっき食ったばっかな気もするが、あんまし遅くなんのもアレだからよ」

「そうだね。それじゃ、食べながら薬師ギルドの話でもしようか」

 薄く切ったパンにベーコンとチーズ、それと葉野菜がトッピングされたものを齧りながら薬師ギルドに関することを話す。オニオンスープが冷え切る前に話は終わり、相手方の現状を理解したグレンは新たにやる気を漲らせていた。


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