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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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117/117

117 盗賊さん、街の様子を聞く。

 噂によって領民感情を上手く誘導をすべく、サク姉とラビィはボクを残して錬金術ギルドを出て行った。

 ボクはボクで任されたことを成すべく、その準備を手早く行って前倒しの睡眠をとって、活動予定の夜に備えた。


 日が暮れ、戻って来たふたりに揺り起こされた。

「おはよう。それと、お帰り」

 強引にとった睡眠でぼんやりとする頭をふって、寝起きで働きの鈍い脳を無理やり覚醒させる。浅い呼吸で不足した空気を脳に送り込むように、欠伸混じりに大きく息を吸う。

「充分に休めたかしら」

「夜間の活動は問題なくこなせそうだよ」

「そう。それはなによりね」

「サク姉達の方はどうだった?」

「多少の問題はあったけど、概ね狙い通りに噂は拡散されてるわ。ただ……」

 一度言葉を切ったサク姉は、顔を曇らせた。それはサク姉と一緒に外回りをしていたラビィも似たような表情をしていた。

「なにかあったの?」

「えぇ、東門付近でちょっといざこざがあったみたいでね」

 まだ内容を聞く前から、なんとなくボクに絡んで来た衛兵の顔が脳裏にチラついた。

「それって、衛兵と領民の間での出来事かな」

 ボクの発言に対してサク姉は、軽く目を見開いた。どうやらボクの想像は、それほど的外れではないらしい。

「よくわかったわね。東門で没収された品が保管されている建物の前で、一部の領民がポーションの提供を求めてたらしいのよ。その流れで諍いが起きてね。ひとりの衛兵が集団でボコボコにされたみたいなのよね」

 ボクが大量のポーションを没収された現場を野次馬していた人達は、かなりの数がいたし、あそこにポーションがあるのを把握してる人はそれなりにいたはず。だとしたら、この一件はボクにも原因があるのかもしれない。

「それで、その件はどうなったの」

「建物の鍵を奪った人達が、ポーション根こそぎ持ち出しちゃったみたいね。リンチにされた衛兵は重傷みたいだし、今はちょっと街中がピリピリしちゃってるわね」

 集合住宅として改修予定のダンジョンまで行ければ、ボクの夜間活動自体は問題なく可能だけれど、見咎められると面倒そうだね。

「ダンジョン跡地の周辺はどうなってる? その件の影響を受けてたりするのかな」

「そっちは冒険者ギルドが出張って来てて、現在調査中って事で、ひとの出入りを制限してたわ。ヒロちゃんが改修したとこ以外のダンジョン跡地も同様にね。改修済みのダンジョン跡地は、安全が確認された階層から避難所として開放する予定みたいだったよ。冒険者ギルドの地下練武場もいっぱいいっぱいだったみたいだしね」

 前もって聞いていてよかった。見咎められて無駄な時間を使うことにならずに済んだ。離れた場所から穴を掘ってダンジョン跡地まで直接向かえば、監視の目を掻い潜って改修作業に取り掛かれるしね。

「他になにか知っておくべきことはあるかな」

「特にはないかな。あるとしたらアッシュのやつが今も行方不明ってことくらいじゃないかな。正直なところ、あいつが仕事放棄するとも思えないから気がかりではあるのよね」

「ねぇ、サク姉。臭いを追える召喚獣とかいたりしない?」

 その質問に対してサク姉は、首を横に振った。

「それは既に試したわ。でも、発見には至らなかったわ。冒険者ギルドまで行ったのは間違いないようなんだけど、そこでパッタリと痕跡が途絶えてるみたいでね、追えなかったのよ」

 明らかに異常なことだった。まるで追っ手を想定して痕跡を消しているとしか思えなかった。

「……このまま様子見で平気だと思う?」

「わからないわ。でも、放置したままというわけにもいかないし、困ったものよね。手がかりもなにもないから動きようもないもの」

 するとボクらの会話を控えて聞いていたラビィが、ちいさく手を挙げて主張して来た。

「ちょっといいですか」

「どうしたの、ラビィ」

「あのですね。うちになら[ペンデュラム]って失せ物探しのアイテムがあるんです。あれでならもしかしたら、そのひとを探せるかもしれません」

 ラビィの申し出は非常に助かるものだったけれど、それには大きな問題があった。現在、領主邸は衛兵隊によって占拠されてしまっている。それを掻い潜って潜入出来たとしても、目的のアイテムが既に持ち出されている可能性が少なからずあった。

「有難い話だけれど、それを手に入れるのは難しいんじゃないかな」

「そう、ですよね」

 そう言ってしょんぼりとしたラビィだったけれど、なにか思い付いたのか表情をパッと明るいものにした。

「あ、でも、サクラお姉様の召喚獣なら」

 そんなラビィの発言で、ボクが視野狭窄に陥っていたのだと思い知らされた。どうにも少し冷静さに欠けていたらしい。サク姉に目を向けると、微笑を浮かべで頷いてくれていた。

「形状さえわかれば、目的のアイテムを召喚獣に持ち出させることは充分に可能でしょうね」

「よかったです。それならお願い出来ますか」

「えぇ、任せておいてくれるかしら。そういうことだからヒロちゃんは、ヒロちゃんのやることを優先してくれて平気よ」

「うん、わかったよ。そっちはふたりに任せるね」

 それぞれやることが定まったところで、ボクらは夜間活動に臨む前に活力を得るため、夕食を摂りながら無駄なく目的を果たせるようにと行動手順を煮詰めて行った。

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