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天職はドロップ率300%の盗賊、錬金術師を騙る。  作者: 朱本来未


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101/117

101 盗賊さん、天災に遭う。

 隣を並走していたサク姉が、困惑の声を上げる。

「ヒロちゃん、水路の魔素が上昇していた理由がわかったわ。わかったけど、これはなんなのかしら」

 駆ける足を止めることなく、先を促すように問う。

「なにが見えたの?」

「原因はわからないけど、ダンジョンの魔物が消滅することも顧みずに、次々と水路に身投げしていってる。それが溺れてダンジョン外まで流されて、そのまま魔素に分解されて水中に溶け込んでるみたい」

「ダンジョンの魔物としては不自然過ぎるね。集団暴走(スタンピード)とも違うようだし……水路に飛び込んでまでなにかから逃れようとしてるのかな」

「そうだとして夜活動しないのも引っかかるわね」

「単純に入水してる魔物が夜間活動出来ない魔物だったりするんじゃないかな。そのダンジョンに出現するのは作物を育てる魔物だったはず。もしかしたら太陽が昇ってる時間しか動けないのかも。ただダンジョン内にまで陽の光は差し込んでないはずだから的外れな推察かもしれないけどね」

「なんにしても魔物たちを追い立てるなにかが、ダンジョンの奥にあるのだけは間違いないわ」

「だね」

 などと会話を交わしながら走っていたが、ボクらは足を止めざるを得なくなった。

 唐突に大地が鳴動し始め、まともに立っているのもやっとといった状況に陥っていた。あと少しで市街地にたどり着こうかというところだったのだが、それが幸いした。ボクらの視線の先では、複数の建物が大地から伝わってくる強烈な力で揺さぶられ、次々と倒壊したり、壁面に大きな亀裂が生じたりしていた。それで終わればよかったのだが、大地の鳴動はなかなか終わらず、次第に力を増して街の一部が地中へと飲み込まれるように、崩落して行くのを目の当たりにすることとなった。

「サク姉。一度、退避しよう。今、市街地に入るのは危険過ぎる」

 サク姉は、ちいさな頷きを返しながら【召喚】に集中していた。

「【召喚(サモン)】『アンズー』」

 空間が歪み、顕現したのは獅子の頭部と胴体を持ち、脚先は猛禽のように鋭い鉤爪を備え、背に巨大な翼を広げた召喚獣だった。

 【召喚】した全長6mはありそうな召喚獣の背に、サク姉は慣れた様子で軽やかに飛び乗ると、ボクに手を差し出して来た。

「乗って、すぐに飛ぶわ」

 サク姉の手を取り、アンズーの背に引き上げられる。ボクがしっかりとアンズーの背に跨った直後、大きな翼が魔力を発しながら空気を叩くように羽ばたき、その巨体がぐんっと一気に浮き上がった。

「サク姉、孤児院の方に向かってくれないかな」

「えぇ、もとよりそのつもりよ」

 被害が及ぶことがない高さにまで舞い上がったアンズーは、数回大きく羽ばたくと滑空しながら孤児院を目指した。

 眼下に映る景色は、ほんの少し前までとは様変わりしていて、大地に巨大なひび割れが生じていたり、地面が陥没して大穴がぽっかりと口を開けている場所が複数見受けられた。

 それは孤児院周辺も同様で、孤児院そのものも被害に遭っており、建物の一部が崩れていた。だがまだ大地の揺れは収まっておらず、いつ倒壊するとも知れない状況が続いていた。

 だと言うのに、孤児院の周辺に子供達が集まっており、おろおろと今にも崩れかねない建物の側に立ち尽くしていた。

 すぐに離れるよう伝えたところで聞き分けてくれるとは思えない。

「サク姉、高度を下げてくれる。倒壊する前に建物自体を【施錠】するよ」

「わかったわ」

 上空から滑空しながら迫る召喚獣の姿を目にした子供達は、腰を抜かしたようにその場にへたり込んだり、気丈にも勇気を奮い立たせて農具を手に戦う姿勢を見せる子も中には居た。そんな子供達の中にグレンの姿もあり、ボクが軽く手を振って、こちらの存在を示すと彼は、子供達に向けてなにか伝えていた。

 孤児院との距離も充分に縮まったところで、ボクは建物全体を覆うように全力で魔力を放出した。内部にまで浸透するのに少なくない時間がかかったが、倒壊する前にどうにか無事に全てを覆い尽くすことに成功したボクは、即座に孤児院を【施錠】した。

「一旦、地上に降りるよ。サク姉は、そのまま上空で待ってて」

「なにする気?」

「孤児院付近の地面が崩落しないように、念のために【施錠】してくるよ」

「魔力の枯渇にだけは気をつけなよ」

「わかってる。まだこの現象の原因もわかってないしね。じゃあ、ちょっといってくるよ」

 ボクは三階の高さで静止するよう羽ばたくアンズーの背から飛び降り、魔力循環で身体能力を底上げして地面に着地した。付近で驚く子供達を尻目に、ボクは無言のまま優先すべきことを実行する。

 大地はまだ鳴動している。その揺れの中に一際大きな揺れが混ざっていた。その間隔は一定のリズムがあり、次第に大きくなっているようだった。

 ボクは着地した姿勢のまま、地面に手をついて広域に渡って魔力が半球状に浸透するように流し込んでいった。やがて周辺の敷地までに魔力が及んだところで、ボクは地面を【施錠】した。

 それで安心出来るかというと、そんなことはなく。大地の奥底から突き上げるような揺れが続いていた。

 それからほどなくして、一際大きな揺れとともに北西部で土砂の柱が高く噴き上がるのが見えた。

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