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政略婚~身代わりの娘と蛮族の王の御子~  作者: 伊簑木サイ


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27/40

アニャン、着飾る

 あれから私は、傷がかさぶたにしっかり覆われるまで、ベッドから出ることを許してもらえなかった。

 エウルも遠くへ仕事に行かなくなり、日に何度も天幕に戻ってきては、私がベッドでごろごろしているのを確認していく。

 正直に言えば、大きなたんこぶは痛み続けていて何にも集中できなかったし、傷が痛くて髪も結えなかったので、私はありがたくおとなしくしていた。

 だから、あの日のことを考える時間だけは、たっぷりあった。


 やっぱり、あの刑罰は、スウリという人が私に傷を負わせたから行われたんだろう。彼女が原因だったから、エウルもあの人の顔を一番に見せてくれたのだと思う。

 スレイはあの人のお兄さんで、奥に居た壮年の男女は、たぶんご両親だ。どことなく似ていた。

 ニーナは顔が似ていなくて気付かなかったけれど、スレイ達と血縁関係があるのだろう。あの日、この天幕の前で、スレイはニーナを抱きしめていた。よほど親しくなければ、あんなふうにはしない。

 帝国でも、重罪人の親族は連座して罰せられることがある。閻でも、きっと同じなのだ。


 あれから、あの人達はどうなったのだろう。

 私は殴られただけだったし、あの人達もじゅうぶん殴られたはずだ。エウルが棒でスウリの顔を見えるようにしてくれた時、気を失っていたぐらいだもの。


 ただ、もし殴られたのが私じゃなくお嬢様だったら、と考えると、彼ら全員殺されて当然だとしか思えなかった。

 お嬢様なら、自分を傷つけた者を、親兄弟どころか一族郎党根絶やしにしなければ承知しないだろう。なにより皇帝陛下の養女なのだ、そんな人を傷つけて、ただで済むわけがない。

 ……そう。済むわけがないのだ。たとえ、私と入れ替わっていたとしても。


 私は、ずっと、どこか、自分には関係ないことだと思っていたんだと思う。今、自分がここに居ることを。

 私はお嬢様じゃないから。偽物だから。知らない間に連れてこられただけだから。

 わけがわからなくて、初めはただただ怖くて、どうしたらいいのかもわからなくて、やりすごすだけで精一杯で、……何もできない非力さや非才さを思い知るばかりで。

 こんな私を勝手に身代わりにした人達が悪いのだと、意識しないどこかで思っていた。

 だから、何かあっても、私が本当には悪いんじゃないのだと、……関係ないのだと、思っていたのだ。

 けれど、何人もの人達が裁かれて、やっと気付いた。

 彼らは、お嬢様のために裁かれたんじゃない。私のために裁かれたのだ。


 別れの時に外交官が言っていた、「耀華公主としてふるまうように」という意味が、ようやくわかった、……ううん、思い知らされた気がした。

 他の誰でもない、私が「耀華公主」なのだ、と。

 和平の証として、閻王の御子に輿入れするために遣わされた皇帝の娘、「耀華公主」。

 私のふるまいの一つ一つが、両国の絆に影響してしまうのだ。


 私は、あの時、エウルを止めてはいけなかったのかもしれない。エウルはおそらく、必要なことをしていた。なのに、帝国に帰るなどと脅して、やめさせた。だから、エウルは怒ったのだ。

 ……恥ずかしくてたまらない。私は何もわかっていなかった。

 私が帝国側の和平の証なら、エウルは閻側の同じ役目を負った人なのだ。その重さを、彼一人に押しつけてしまっていた。


 もしも、私にちゃんとした自覚がなかったせいで――耀華公主としてのふるまいができていなかったせいで――、あんなことが起こったのだとしたら、どうしよう。

 お嬢様なら、スウリという人に会った時点で、手酷く退けただろう。そうしたら、あんなことにはならなかった。傷つくとしても、スウリ一人だった。

 お嬢様は気分屋で残酷で恐ろしい人だと思っていたけれど、そうでなければならなかったのかもしれない。それだけの責任のある身分だったのだと、今ならわかる。一つの差配の違いで、何人もの人の運命が変わってしまうのだ。


 それに、私はなったのだ。

 身代わりであるというのは関係ない。私が、「耀華公主」。


 どうふるまえばいいのだろう。そんな高貴な人のふるまい方なんて知らない。

 お嬢様の真似をすればいい? ……ううん、それは嫌だ。少しでも気に入らないと、罵り、殴り、蹴りつけていた。その理由も気まぐれで、昨日良いと言っていたものが、今日は嫌いなものになっている。恭しく扱われながらも、激しい気性のせいで、本当は誰からも嫌われていたお嬢様。


 だったら、誰の真似を。

 思い浮かんだのは、パタラだった。それから、エウル。それに、ミミル。ここに来て、親切にして親身になってくれた人達。

 ああいう人になりたい。愛情深くて、惜しげなく誰かを助けられる、そういう人に、私もなりたい。

 彼らの傍に居て恥ずかしくない、「耀華公主」になりたい。


『公主、どうしたんだい? ……なんだか、また、ろくでもないことを考えてそうな顔をしてるね』


 作業の手を止めてやってきたパタラが、ベッドの傍らに座った。


『ほら、あーん、してごらん』


 微笑みながら唇をつつかれたので口を開けると、牛の乳を泡立てて作った、一番口当たりのいい『ちーず』を押し込まれた。


『おいしいかい?』

『……おいしい』

『もっとお食べ』


 また口に押し込まれて、私は起き上がった。横になっていると、噛みにくいし飲み込みにくい。

 このチーズは、とてもまったりしていて、少し食べると、すぐにお腹がくちくなってくる。

 もぐもぐしている間に、テーブルまで行ったパタラは、馬乳酒とお水を持って来てくれた。あまり欲しくなかったのだけど、さあ飲めとうながされて、結局、どちらも飲みきった。おかげで、お腹がパンパンになってしまった。


『じゅうぶんいただきました』


 杯を渡しつつ、急いで伝える。もっと持ってこられてはたまらない。パタラは、ふふふ、と笑った。


『よしよし、お腹がいっぱいになったみたいだね。人間、不思議と、お腹いっぱいの時は、何も考えられなくなるんだよ。

 考えたことなんてね、結局、いざまさかの時には、何にも役に立ちゃしないのさ。寝て、食べて、体力さえあれば、どんなことだって、なんとかなるもんだよ。よけいなこと考えてないで、寝ておしまいなさいな』


 パタラは片手で杯をまとめて持って、私の肩を押した。横になって見上げれば、手で私の瞼を覆う。

 とにかくお腹がくちくてたまらなかった。苦しいか、苦しくないかしか考えられない。

 パタラの手がどけられても、私は起き上がる元気もなく、お腹が苦しくない体勢を探して寝返りを打ち、しばらく虫の息みたいな呼吸をしているうちに、とろとろと眠ってしまったのだった。




 怪我が良くなっていくにつれ、生活も少しずつ元に戻っていった。

 『うまをみにいく』のに抱っこされていたのが、手を繋いで行くようになり、しばらくすると『ちーず』作りの手伝いをさせてもらえてもらえるようになった。

 まるで、こちらに来たばかりの頃を再現しているようだった。


 まだ、きっちり髪は結えないし、勢いよく動いたりして振動を与えると、傷やたんこぶが痛む。けれど、反対に言えば、そうしなければ普通に動けるようになっていた。

 もう、じっとしているのは飽き飽きだったから、『今日は乳搾りに行ってみようかね』とパタラが言った時、私はそれ用の上着に、いそいそと腕を通そうとしたのだった。


『いや、今日は馬の乗り方を教える』


 エウルに上着を取り上げられて、ベッドの上に放られる。彼はニッと笑った。


『馬に乗ろう』

『うま?』


 こちらでは、男女の関係なく小さな子供でさえ、一人で馬に乗って走っている。馬はまるで彼らの体の一部のようだ。それで家畜を追い、草場を求めて移動する。ここでの生活に欠かせないもの、それが馬だ。

 早いうちに乗れるようにならなければと思っていた。今日は乗り方を教えてくれるのではないかもしれないけれど、私はまだ一人では、馬の背にのぼることもできなければ、動いている馬に座っていることもできない。……実は、大きくて近付くのも怖いのだ。とにかく少しでも慣れたかった。


 あ、でも、乳搾りは女の大事な仕事だ。パタラに目をやると、賛成していないのがわかる、難しい顔をしていた。


『エウル、何も病み上がりにやらせなくたっていいじゃないか。

 だいたい、おまえの母(ミツウェル)だって、結局乗れるようにはならなかっただろう? それでも、たいして困らなかったじゃないか』

『ああ、わかっている。俺も親父様のように、妻に不便な生活をさせる気はない。

 それでも、いつ何が起こるか、わからないからな』


 エウルが軽い調子で言った言葉に、パタラは重苦しく黙った。それにエウルは肩をすくめて、変わらず明るく話す。


『俺が放牧に行ってる間に、急に雹が降ってくることだってあるだろ? 少しでも早く、しのげる場所に逃げ込まないと、あれこそ命に関わる。

 耀華公主に何かあってから、あの時ああしておけば良かったと思いたくないんだ。少しでも、できることをしておいてやりたい』

『……そうだったね、つい一昨年にも、それで南部の一族が大打撃を受けたんだったね。

 私が子供の頃にもあったよ。急に空が黒くかき曇って、握り拳ほどもある雹が降りそそいできたんだ。雹に打たれた家畜達が、ばたばた倒れていったよ。人もずいぶん死んだ。天幕の中に居ても、屋根に激しく打ち付ける音がしてね。生きた心地がしなかったもんだよ』


 パタラは何事かを、しんみりと話した。何か悲しんでいるように見える。私は心配になって、そっと彼女の袖をつかんだ。パタラはとたんに、いつもの笑顔になった。


『公主、ありがとう。心配しなくていいんだ。昔の話だよ。

 わかったよ。だったら、人目のないところへ連れて行ってやっておくれ。馬にも乗れないなんてと、侮る者も多いからね』

『ああ、そのつもりだ』

『そうだ、食べる物も持ってお行きよ』


 パタラは手早く『ちーず』を布に包んだ。馬乳酒も革袋に詰めている。


『途中でこれでも食べて、ちゃんと休ませてやるんだよ。……公主、いってらっしゃい』


 パタラに笑顔で出掛ける挨拶をされながら荷物を渡された。


『……いってきます?』


 とりあえずそう返事をしてみたのは、合っていたようだ。笑顔のパタラに見送られて、エウルに外に連れ出された。


 エウルは、馬達が横一列に繋がれているところへ行った。小さめの馬を選んで、馬具と荷物を取り付ける。そして周囲を見まわして、ヒュイッヒュイッと鋭い口笛を吹いた。


『エニ! マニ!』


 どこからともなく、犬たちが黒い旋毛風みたいに駆けてくる。


『おまえたちも一緒に来い。人が近づいてきたら教えてくれ』


 ウォン、ウォンと答えた二匹に、エウルは小さな干し肉の塊を投げてやった。


『さあ、先に行って、あっちに人が居ないか見てきてくれ。……行け!』


 草原を指さし、エニとマニに命令する。犬達は踊るように向きを変えると、振り返りもしないで一直線に駆けていった。


『耀華公主、行こう』


 エウルは馬の手綱をつかんでない方の手を、私に差し出してきた。手を繋いで、犬達が行った方へ歩いて行く。

 少し先を行くエウルの横顔を何気なく見て、ドキッとした。……格好いいなあと思ったのだ。

 鼻筋が高く通って、顎が男らしい綺麗な線を描いている。三白眼気味だから、正面から睨みつけられれば、あまりに鋭くてとても怖いけれど、笑っているときは、彫りの深くて整っているのが際立つのだ。私は、飾り気のない彼の笑顔が好きだった。


『何だ?』


 視線に気付かれて、私はあわててうつむいた。顔がじわじわ熱くなるのがわかる。きっと赤くなってしまっているだろう。

 エウルに気を引くように軽く手を引かれ、躊躇った末に、そろりと彼を見上げた。

 彼が目を細めて優しく笑み、立ち止まった。


『耀華公主』


 あ、と見とれる。黒だと思っていた彼の瞳は、日の光が消える間際の空の色をしていた。その瞳が何かを訴えているように感じて、心臓がドキドキしてきて、掌が疼いた。思わず私は、繋いでいる手を、ぎゅっと握ってしまった。彼も笑みを深めて、握り返してくれる。


『王の許へ連れて行く前に、伝えておきたかったんだ。

 今はわからないかもしれないが、この言葉を覚えておいてほしい。……あなたが好きだ。どうか俺の妻になってくれ』


 言っていることはわからなかったけれど、瞳に宿った熱が、甘やかな声が、心に何かを届けてくれる。鼓動が胸を破りそうに打ちはじめ、胸から起こった熱が全身に広がっていった。

 彼は少し屈んで、私の目を見つめ、繰り返して言ってごらん、というように、ゆっくりと同じ事を言った。


『あなたが好きだ。どうか俺の妻になってくれ』

『あなたがすきだ……?』

『どうか俺の妻になってくれ』

『どーかおれのちゅ、つ、つまに……?』

『そう。どうか俺の妻になってくれ』


 きちんと言えるようになるまで、何度も繰り返される。だんだんと抱き寄せられて、近くなるほどに囁きかけるみたいに教えてくれて。


『あなたが好きだ。どうか俺の妻になってくれ』


 最後の一回は、繰り返す前に口づけられ、甘い痺れに捕らわれて、口が利けなくなった。

 ちゅ、と音がして、唇を離した彼に、近くから目を覗きこまれる。

 ……きっと、同じ気持ちだ。

 私は、心をちぎれそうに引っぱられる熱さに、目をつぶった。

 唇に、唇が重ねられる。

 私たちは他に誰も居ない草原で、お互いを求め合って、長くも短い時を過ごしたのだった。




 結局、ここには三十日ほど居たんじゃないかと思う。

 たんこぶが小さくなり、ほとんど痛まなくなった頃、また移動が始まった。

 留まっている間に馬の乗り方も教えてもらっていたとはいえ、まだ一人では無理だったから、エウルの馬に一緒に乗せてもらった。

 着いた先には、武装した騎馬の集団が居て、エウルは遅くまで彼らと話して、なかなか天幕に帰ってこなかった。


 そして、今日。


『耀華公主、後でな』


 エウルは私の頬を撫でると、『行ってきます』と言わずに出掛けていった。

 ミミルも帰らずに残っており、パタラは奥の(ひつ)を開いて、中の物を出しはじめた。ミミルが受け取っては、ベッドや敷物の上に並べていく。


『なんて素晴らしいのでしょう』


 ミミルは上着を広げながら、感嘆の溜息をついた。その気持ちは、私もわかる。本当に、溜息しか出ないのだ。

 厚地の金の絹地に、花弁が幾重にも重なった美しい花や、極彩色の鳥が、見事な刺繍で描かれていた。その下に着る上衣とスカートも、鮮やかな緋色の染めも素晴らしい、繊細な綾織りの絹だ。どれもが、ものすごく豪華で精緻なものだ

 それから、山のような装飾品の数々。黄金や宝玉がふんだんに使われ、細工は精巧、どれもこれもがきらめき、上質だというのが、素人目で見てもわかるものだった。

 お嬢様だって、なかなかこれほどのものは持っておられなかった。


 所狭しと出されたそれらを眺めた後、パタラは上着を手に取って、私に差し出しながら、途方に暮れたように言った。


『公主、これを着られるかい?』

『はい、きる』


 昨日の立派な騎馬の集団、全部身に着けろとばかりに出された帝国から着てきた衣装。もしかしたら、今日は王様に会うのかもしれなかった。

 お嬢様の機嫌が悪いときの着付けや化粧は、私にお鉢がまわってくることも度々だった。扱いは一通りわかっている。


 まずは、とりあえず上着を元の場所に戻し、代わりに、楕円の筒の形をした腰帯飾りを拾い上げた。

 彫り込まれた花の意匠の一部と見える金具を、ぱちんとはずすと、蓋が開いた。中は綿を詰めた布張りになっていて、そこに動かぬように押し込まれていた香油瓶と櫛を取り出す。

 それから、黒く染めた髪結い用の詰め物と、いくつかの髪飾りを手元に引き寄せ、そこで、はたと止まった。鏡が欲しい。


 部屋の中を見まわし、こちらの国では使わないのを思い出し、首飾りをたぐりよせた。竜が宝玉で象嵌された四角いプレートに、鮮やかな紅玉や碧玉がフリンジになって垂れ下がっていて、ネックレス部分は翡翠の球が連ねられている、ひときわ豪華で大きなものだ。

 これも小さな金具をいじると、すぐに二つに開いた。上部は磨き抜かれた歪みのない金属板が張られて鏡になっており、その反対側は、携帯用に小さく作られた化粧道具と紅やアイシャドウが入っていた。

 それを、椅子の上に置いて立てかけ、鏡をのぞきこんだ。これでなんとかなりそうだった。


『おや、まあ、よくできてるねえ』


 パタラが感心した声をあげた。

 私は手早く、香油を付けて髪を梳り、複雑な帝国風の髪形を結い上げた。

 手早さは、お嬢様に張り倒されながら必死に身に付けたものだ。お嬢様は気が短くて、少しでも待つということができなかった。

 化粧もだ。やり直しなど、けっして許されなかった。「艶やかな唇」に「妖艶な目元」を、すーっ、すーっと一筆で描き出していく。

 化粧を済ませて立ち上がり、パタラ達に振り返ると、二人は、わあと歓声をあげた。


『おや、まあ、なんて美人だい! とても子供には見えないよ!』


 興奮気味の二人を見て、ほっとした。うまくできたみたいだ。

 私はこちらの服を脱いで、帝国の下着に着替えた。順番に重ねて着ていき、だんだん手がまわらなくなってきたところで、パタラに差し出す。


『これ、きる』

『え? ああ、手伝えばいいのかい? それにしても、すごいもんだねえ! どんどん別人になっていくようだよ!』


 緻密に織られた重い絹織物をまとうのは、二重三重と重ねていくほどに動きにくく、難儀になっていくのだ。

 数々の宝飾品も身に着け、最後に、深紅の(かず)き物をかぶった。

 (かんざし)や髪留めのせいで、頭まで重い。バランスをとるように背筋を伸ばして二人に向き直ると、彼女たちは息を呑んで目を丸くした。

 パタラは真面目な顔で私の前に膝をつき、私の手を、うやうやしく取り上げた。


『パタラ?』

『公主は本当に、皇帝の娘だったんだね。

 ……ようこそおいでくださいました、竜血の王の娘よ。どうか、両国に末永い和平をもたらしてくださいますようお願いいたします』


 彼女は祈るように、額に私の手を押し戴いた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 教えていただきありがとうございました!私もネットでちょろっと調べてみたら、方言だ(栃木の方?)と言う説と、方言じゃないという説とあって、こんな風な意味かなーと思ったんですが、もっと一杯一杯…
[一言] お腹がくちくなる、ってどういう意味なんだろう?と調べちゃいました。お腹が一杯になるって意味でいいのかしら?
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