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魔女と一匹

第12章 魔女と一匹


夜、人の通らない暗い路地に一軒のカフェが佇んでいた。

壁や庭の至る所にある黒猫の装飾は暗がりの中でも一際目立つ。扉には「Closed」のプレート。それもそのはず、夜どころか時刻は24時をとっくに過ぎている。

しかしながら、店の灯りが消える気配はなく、窓から見える少女と猫の影は少し怪しげ。

おそらく、万人がこう思うだろう。

「魔女の家」だと……




「ニャハハッまさか雇うなんてな、どうかしてんじゃニャいか」


暖炉の前を陣取った真っ黒な猫が愉快そうに笑う。


「別にいいじゃない、悪い人には見えないわ。」


床を掃きながら、アリアは素っ気なく返す。


「あとで後悔するニャ」


知っている。だがそんなことは、考える前に燃やしてしまえというのが魔女のしきたりだ。

無論アリアのみのしきたりであるが……

彼女は手を止めず、またも素っ気なく返した。


「その時はそのときよ」


「確かにアイツとアンタは似てるかもニャ……でも」


猫の黒い眼がアリアを睨む。すると気配に圧されたのだろうか、そばにある暖炉の火が少し小さくなる。そして、声を低めてこう言った。


「理解してもらおうなんて思わないほうがいい」


さらに暖炉の火が小さくなる。

そして、その言葉を聞いて初めてアリアの手が止まった。振り向いて静かにこう言う。


「思ってないわ、別に」


そう言って黒猫を睨み返す。

部屋全体が静寂の圧に呑まれていく、消えそうになりながら揺れる火はまるで苦しそうに身をよじっているようである。


「ギャハハッ、どうだかな」


小娘の生意気な睨み方がお気に召したらしい。変な声を上げて嘲笑った。


「素が出てるわよ、“ペル”」


それを見て、魔女はため息混じりに呟いた。


「これは失礼、ついニャ」


暖炉の火は何事もなかったかのように盛んに燃えている。


アリアは窓を拭こうと、布巾を片手に窓枠に近づく。しかし窓はすでに濡れていた。


「雨…」


降りしきる水滴たちは地面に果敢に立ち向かっていき、そして例外無く地面に消える。


「わかってほしい、なんて思ってないわ」


その声はあまりに小さかった。

まるで、迫っていく時間に押し潰されるように。





最後まで読んでいただきありがとうございます。

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