短歌ログ
それでもあなたが真昼であるようにわたしは遠い点描になる
秋深き高崎山のサルとみる遥かな波の海のつま先
二度と触れ合うこともないだろうね一緒に観る映画があればって思うよ
バスとバスの車間距離みたいなあたしたちでした すきまに雨が降ってる
鋭い爪の犬だねとか言って笑うふかふかのクッションの君が笑う
今朝の太陽をあげるこれで我慢していて定型のあいがない
海面の光を追ってふたりきり永遠とは終着駅まで
生殖がとおい恋とは言いつつも君を噛みたくなってしまうな
何一つ知ることはないぬかるみにシアノバクテリアの鮮緑
私にも降る雨があり街灯が傘のうらまで滴り満ちる
PARCO前の球を回すとき地球もまた回っているのだろうよ 日照り
とうさんのコーヒーをのむなにもかもわかったようなかおをして朝
血まみれの手をした今日もあたたかな君の虚像に抱かれ終わる
みづの音の響く導管真っ直ぐに赤いダリアの延命治療
卵かけごはんみたいな春纏い月はあなたのつむじを照らす
はくたいのソフトクリーム滴ってAll roads lead to Roma
少女らの帆布にあらむスカートはばるばすばうと風に鳴りつつ
少しずつ排水口に流されるわたしは夜のたびにうまれて
座っていた誰かの熱が解けゆくターミナルにはぽつねんと春
わたしにも優しい人のてのひらに開かれている春の歳時記
川風に崩れゆくスカートのひだ春キャベツのちゃんぽんを食う
暖かくしても一人は一人のまま夢の中の羊が優しい
手伝えることがなさそうな朝食コンロの音をリビングで聴く
ふるさとのトマトを買った この土地のトマトと同じ赤に光って
冷やされる気管支があり 私 わたし ファミマの中にさりさり光る
まどそとの降雨を知りぬ傍らにクジラのやうな君の微睡み
妹の告白を聞く取り分けたふわふわオムレツ食べながら聞く
わたしにはなれない人に諭されて帰る夜道のポプラの並木
びじゅつかんさぼてんみきこおやこどん好きなものだけ愛していてね