第六話 勇者貴様まさかロリコn・・・・
『こんにちはソウゴ君。あ、初めましてだったわね。改めて、初めましてソウゴ君。私は王女のノル・ティリア・ローセルティア。ソウゴ君はこのお城で暮らすんだよね?これからよろしくね』
‥‥ほほ笑む彼女の顔。俺の記憶に、彼女はいない。
『あははは、ソウゴって意外とドジだったんだね』
‥‥記憶にない。ない、はずなのに。
『ねぇ、ソウゴ。ここから見る星空はものすごくきれいだと思わない?』
‥‥本当に俺は、彼女のことを知らないのか?ならこの思い出はなんだ。ならこの気持ちはなんだ。
『ソウゴ、なんで世界ってこんなに残酷なんだろうね』
‥‥懐かしく、愛おしく、そして。
『ごめんね。ごめんねソウゴ君。君との約束、破っちゃったね。‥‥世界は理不尽で、残酷で、そして何より‥‥‥偽善で、あふれてる』
‥‥心の奥に閉ざされ、悲痛の叫びをあげるこの思いは。
『信じられない!だれも、もう何もかも!こんな来世、いらなかった!こんな世界に来なきゃよかった!死ねよ死ねよ死ねよ。あの子の悲しみの分だ。全員、殺してやるよ』
‥‥それはひどく残酷で、理不尽なこの世界に向けての『殺意』。ただただ純粋な、まぎれもない『殺意』だ。
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「‥‥んん」
寝ていた脳が活性化していき、徐々に体が起きてくる。状態を確かめると、なぜか頭に柔らかい感覚がある。
「‥‥‥ん、なんじゃ、やっと起きたのか。大分うなされておったが、大丈夫だったかのう?」
‥‥頭上に美少女の顔。そして後頭部には柔らかな感触。しかも体は横になっているようなこの感覚は、
「まさか‥‥美少女の膝枕だとぉ!!」
「いきなり叫ぶ出ないわい!!」
「ふげぶ!」
いきなり叫んだことに起こった邪神ちゃんが立ち上がり、膝に乗っていた勇者を落とす。
「‥‥なんだ、ジェノさんか」
「なんだとはなんじゃ貴様」
美少女の中身がおじさんだったことを思い出し、なぜか損した気分になる勇者。まさか、こやつロリコン!?
「俺はロリコンじゃねぇ!」
「‥‥‥何をいきなり叫んでおるのじゃ」
「あれ、そういえばなんでこんな草原に‥‥‥‥ああ!邪神貴様あああああ!なんで空から降ってくるんだよぉ!」
ここに飛んできた原因を思い出した勇者が邪神ちゃんの頬をつねって訴える。
「ひゃひゃっへほほはへふふほへふほふははっはははひょへひゃはふはは~っほ(だだってここまでくるのめんどくさかったからとべばらくかな~っと)」
「何言ってんだか分んねぇ!」
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「それでジェノさん、なんでまた俺のところに?」
「うむ、ちょっと用事ができてな」
「今回は許可とってるよね?抜け出して来てるわけじゃないよね?」
「あれから警備を強化されたから抜け出すのは無理じゃよ」
「子供みたいだな‥‥」
「むきいいいい!」
邪神ちゃんがポコポコと勇者を殴りつける。魂は爺さんでも、心は乙女なのです。
「そ、それで用事ってなんだよ」
「おっとそうじゃった。おぬしが前まで使っていたこの呪銀の剣があるじゃろ?」
邪神ちゃんが背中に担いでいた呪銀の剣を出して脱線していた話を戻す。
「その剣がどうかしたのか?」
「うむ、それがちょっとめんどくさくなっての。この呪銀の剣、今は呪いは消したのじゃが、この呪いをかけた人物を逆探知してみたのじゃ」
「へぇ、ジェノさん、そんなこと出来たんだ」
「まあ時間はかかったんじゃがな。さて、その呪いをかけた張本人なんじゃが‥‥実にめんどくさいことに、『女神』じゃ」
ソウゴと邪神ちゃんの間に沈黙が走る。ソウゴの予想では、まああの国の国王とかだろうなぁっと思っていた。しかしその上をいく解答にソウゴが出した言葉は、
「‥‥‥‥‥はい?」
その一言が、自然に口から出ただけで、頭は全く追い付いていなかった。
「いや、じゃから女神じゃ女神。あの国で崇拝されておるやつじゃ」
「なぜに?」
「そんなこと知るわけなかろう」
無い胸を張る邪神ちゃん。その動作にソウゴは少しイラっと来たが、わからないのは当たり前なので何とか心を落ち着かせる。
「それで、用件はそれだけなのか?」
「いや、違うのじゃ。その剣の呪いが女神自らだとわかったわしら魔族はちょいとした会議をしたのじゃ。その会議の結果!(わしがちょっと強引に決めたけど)わしがお主の保護者兼師匠をすることになったのじゃ!」
「‥‥‥WHY?」
「いやだってお主弱いからいつ倒されるかわかったもんじゃないし」
「この刀があればどうにかなるでしょ」
「その刀とて万能じゃない。敵の武器を封じる手段はいくらでもあるのじゃ。それに監視の意味もあるしのう」
「‥‥けど勇者が邪神に育てられるのはなんか設定的に!」
「女神が呪い使ってる時点でそんなもんポイじゃ!」
「うぐ‥‥ジェノさん連れて歩くのってロ〇コンみたいじゃないか」
「師匠と呼べバカ者!あとわしは好きでロリになってるんじゃないわい!」
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半場無理やり勇者の師匠となった邪神ちゃんがソウゴと街に戻ってきて歩いていると、何やら遠くから聞こえてくるダダダダダダッという音が近づいてきている。
「なんじゃこの音?」
「げ!この音はまさか‥‥」
ソウゴはこの誰かが駆けてくるような音に心当たりがあるようだ。
「‥‥‥‥ソ・ウ・ゴ、きゅ~ん!!」
「またベルか!?」
一人の少女がソウゴに向かってすごい勢いで飛び込んできた。その反動でその少女にソウゴが押し倒される形になってしまう。
「おいベル!この時期は家から出られないんじゃなかったのか!?」
「ふっふっふ~、ソウゴに会いたいと願えば家から出るのなんて簡単よ!」
「お前また執事やメイドにワイロ渡したのかぁ!!」
「あら、何のことだかわからないわ」
「(‥‥話の内容からして貴族とかなんじゃろうが、その格好や家を抜け出すというのはワイロだけでどうにかなるのかのう?)」
ベルと呼ばれた少女は肌や髪は貴族っぽく綺麗にしているが、服は無駄に露出が多い。
「で、ソウゴよ、それはだれなのじゃ?」
「あ、ソウゴ君。私もあの子誰か気になる」
「とりあえずベル、お前は俺の上からどいてくれ」
「あら、ごめんなさい」
下敷きにされていたソウゴが解放され、立ち上がってどう紹介しようか迷っていた。とりあえず何か言っとかないとめんどくさそうだと溜息を吐いて説明を始める。
「ベル、これはジェノさんだ。見た目は幼女だけどこれでも俺の師匠だ」
今日からだけどね、と心でつぶやいてからもう一人の説明を始める。
「ジェノさん、こいつはベルシュッツ。これでも貴族だ」
「「その説明はないわぁ」」
「‥‥別に嘘は言ってないだろ」
「うふふ~ん、それよりもソウゴ、もしかしてあなたロリコンだったの?こんな幼い子連れちゃって。私が眼中にないのはそういう理由だったの?」
「‥‥なんと!やっぱりソウゴおぬしロリコンじゃったのか!」
「やめろお前ら!!俺はロリコンじゃねええええええええ!!!!!!」