第五話 勇者は勇者(笑)らしいです。
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呪銀の剣
勇者ソウゴが旅に出るときにとある国の王様からもらったという剣。素材はミスリルだが、剣にかかるその呪いがすべてを台無しにしている。(硬度70/100 切れ味40 呪い:成長抑制、超手加減、魔法阻害)
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「のう、テルートや。これはちょいとおかしいとは思わんかのう?」
幼い体系でありながら年を取ったような喋り方をする少女‥‥邪神ちゃんが秘書君であるテルートに尋ねる。自分の部屋のベットの上で寝転がりながら。
「そうですね‥‥勇者というのはいつの時代でも良い待遇を受けていたはずです。魔物の発生を期限付きとはいえ止めてくれるから当然ですね」
「そうじゃのう。じゃが、この剣を渡したというのは『もう勇者なんかいらない』といってるようじゃのう」
「ですが、勇者が魔王を倒してくれないと魔物がわき続けるだけではないと王国には歴史があるので知っているはずです」
「‥‥『スタンビート』じゃな」
邪神ちゃんが呪銀の剣を見ながら答える。ベットの上で寝たままだけど。
「『スタンビート』。ある期限までに勇者が邪神までたどり着けなかった時に起こる魔物たちの活性化、ですね。何度か起こったことがあるので、王国はわかっているはずなんですが‥‥‥」
魔物たちが活性化し、血を求め肉を求め人が住まう場所へと大群で攻めてくる現象。それが起こるとわかっていながらも勇者を見捨てるような行動をとった王国の考えがわからず、邪神と秘書君は困惑していた。
「これは、魔物を生んでいる張本人しかわからぬことなのじゃろうな」
「女神『セスティリア』の考えですか‥‥ この世界の作りすらも意味が分からないのです。いくら考えても無理でしょうね」
この世界の魔物は、実際は魔王や邪神は関係がない。魔物を生み出してるのはだれかというと、その女神『セスティリア』なのだ。それではなぜ魔王や邪神を倒すために勇者が毎回召喚されるのか?理由は簡単、魔王を倒すと魔王が復活するために魔物たちの魔力を使うので魔物が弱体化し、邪神を倒すと復活のために絶大な魔力が必要となるため、スタンビートは起きずに何百年かは魔物がわくことがなくなる。恨みはないが、倒すしか生き延びることができないのだ。
「なぜ、女神はそんな世界を作ったのじゃろうな‥‥?」
邪神ちゃんは最後までベットでぬくぬくすることをやめなかった。
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「『抜刀風絶』!!」
少年が誰もいない空間で刀で抜刀切りを行った。
「ギュオ!?」
しかしその抜刀切りは、五メートルほど先にいた大きなゴブリンの腕を切り裂いた。
「ギュオオオオ!!」
「グッ!?」
仕返しとばかりに大きなゴブリンが丸太のような棍棒をふるうが、少年はそれを刀の鞘で受け止め何とか受け流す。
「喰らえ!」
そしてそのまま回転し、少年の刀は大きなゴブリンの頭を切り裂いた。
「ギュラ・ゴブリンまでも普通に切れるのか‥‥邪神恐ろしいな」
倒れたギュラ・ゴブリンを見ながら少年‥‥勇者ソウゴがつぶやく。
「いやあ、一時期はどうなるかと思ったが、ジェノさんのおかげでどうにかなったな。これで食うもんには困らないだろう。王国に戻って門番の人に『うちの国は勇者なんて召喚してません。だからあなたは入れません』って言われた時はどうなるかと思ったが‥‥」
ソウゴは邪神ちゃんと出会った後、城に住んでいたため王国に戻ろうとしたとだが、門番に何故か追い返されて絶賛やばいぜ中だったのだ。
とりあえずほかの街とかに行って勇者なのに冒険者登録をして、邪神ちゃんからもらった刀を使えばあら不思議。簡単に無双してしまったわけである。
ただ怪しまれると面倒なため、少しゆっくり目にして冒険者ランクという冒険者の実力を表すものを上げていっている。
「なんか、魔王倒すのめんどくさくなってきたな‥‥」
邪神ちゃんに倒せとは言われたものの、別に理由ないしなって思い始めちゃってる勇者である。本当に勇者なのだろうか?ステータスに勇者(笑)とか書いてあるんじゃないの?
「やかましいわ!」
森の中で一人叫ぶ勇者(笑)であった。
「んだとごらぁ!」
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「よっしゃ!これでランクBだあああ!」
ギュラ・ゴブリンを倒したことにより冒険者ランクが上がったソウゴは周りを気にせずに叫んでいた。やっぱり勇者(笑)である。
冒険者ランクはE~AそしてS、SSとある。その中でBランクは上級者に入る。もともとBランクより上に行ける人は少ないので、それだけで少しは人気に慣れる。
「しかしこの刀強すぎるな‥‥ 俺の本当の実力って大丈夫なのか‥‥?」
邪神ちゃん製の刀が強すぎて自分の実力がほんとにBランク相当なのかわからなくなっている勇者。そんな勇者のもとに、ものすごい速度で何かが突っ込んできていた。
「なんじゃあれ‥‥?」
空から降ってくるものは少しづつ大きくなっていくためこちらに落ちてくるというのがわかる。それが何なのかを目を凝らしてみていると‥‥
「ぎゃあああああ!飛びすぎたのじゃああああああ!」
「‥‥‥じぇのすわん?」
空から降ってきた物体。それは何と人類のラスボスとされている邪神ちゃんなのであった!やったね勇者(笑)!強制戦闘イベントだよ!ラスボスだけどね!
「「ぎゃあああああああ!!」」
そんな無駄なことを考えていた勇者(笑)はもろに邪神ちゃんと衝突し、そしてその反動で二人仲良く街の外へと吹っ飛んでいきましたとさ。
「俺は勇者(笑)じゃねえええええええぇぇぇぇぇぇ!」