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第八話 魔物の凶暴化は、邪神ちゃんが抑えてるらしいですよ?

 「そういえばジェノさん」


 「‥‥‥師匠」


 「‥‥え?」


 「‥‥『このデュエルで正式にこの国の中では勝ったほうが基本的にソウゴの師匠を名乗ることを認める』じゃ。というわけでわしは師匠と呼ばれるまで返事をしない」


 「なんだこの爺さんめんどくさっ!」


 「ほれほれ、わしも師匠と呼ばれるのはあこがれてたのじゃ。さあよぶのじゃ」


 「うぐぐ‥‥‥し、師匠」


 「ふむ、いい響きじゃ。で、なんじゃ」


 「ほら師匠、あそこを見てみろよ」


 「なんじゃなんじゃ?」


 ソウゴがさした方向を邪神ちゃんが見てみると‥‥なんか目を光らせているテルートがのぞいていた。


 「こわっ!!」


 「ん?師匠、なんか言ってるぞ」


 「な、なんじゃ・・・?」


 「‥‥‥‥府府ふふふ。また邪神様は帰宅時間を守りませんでしたね。さあて、今日の晩御飯は邪院様の好きな『揚げニンニク』だったんですが‥‥豆腐とおくらだけにしましょうかねぇ」


 「あああああ!やめるのじゃあああ!すぐ帰るから!揚げニンニクだけはああああ!」


 そんなこんなで邪神ちゃんとテルートは帰っていき、寂しく一人勇者が残されたのであった。


 「‥‥好物揚げニンニクかよ」


 実は心の中で確かにおいしいよな、と同意してたりする。


================================================


 「さて、今日のクエストクリアノルマは終わったし、この後どうすっかな‥‥」


 『決闘』が終わった次の日、邪神ちゃんやベル(いつのまにか使用人に家へ連れ戻されていた)がいなくなったことで勇者は暇を持て余していた。


 「このままランク上げようかなぁ」


 「‥‥‥あ、ソウゴさんじゃないですか!」


 ソウゴが暇な時間をどうするか考えていると、聞き覚えのある少年の声がした。


 「こんにちはソウゴさん。今日もクエストですか?」


 「よう、シュウか。今日のクエストはもう終わったところだ」


 シュウ・セリー。十六才でありながら冒険者でお金を稼いでいる少年だ。最初はその年で農研者をやるのかと驚いたが、そこまで珍しいことでもないらしい。ちなみに魔物に食われそうなところを助けたのがシュウとの出会いだ。


 「もしかして前に言っていたノルマってやつですか?もう終わったんですか?」


 「おう、そのノルマだ」


 「さすがソウゴさん、早いですね」


 「それで終わったから暇になってな‥‥そうだシュウ、お前のクエスト手伝おうか?」


 「え!?いいんですか?」


 「今は久しぶりに平和だからな」


 ソウゴが遠い目をしながら今朝のことやベルが襲ってきた日のことなどを思い出す。意味が理解できないシュウは意味を訪ねようとしたが、何か厄介ごとに巻き込まれる気がしたのでやめた。やったねシュウ君!フラグ回避だよ!


 「で、シュウ。何を手伝えばいいんだ?」


 「あ、えっと‥‥これです、これ」


 「えっとなになに‥‥‥ジャダ・オーク?」


 シュウが今日受けていた依頼はジャダ・オークの討伐であった。ジャダ・オークはオークの中でも上位に君臨しているいわばめちゃ強いオークである。倒した時の依頼達成金は多いが、その分相当強い。シュウ一人で言って勝てる相手ではない。


 「シュウ、お前これ一人でやるもんじゃないだろ。どうやって倒す気だったんだ?」


 「え!?ジャダ・オークってそんなに強いんですか!?」


 「‥‥は?」


 「あの、実はある冒険者さんにこのオークは弱いけど報酬金が高いから金に困ってるなら受けたほうが言いよって薦められて‥‥」


 「誰だよそんなくそみたいな情報教えたのは‥‥‥」


 「だまされた僕が悪いんです」


 「お前はお人よしだなぁ。まあ、何のためにシュウをだましたのかはこの際置いておいて、金に困ってるならなおさら手伝うよ」


 「ソウゴさん、ありがとうございます!」


================================================

 

 「ゴギャアアアアアアアアア!!」


 「うわぁ!?」


 ジャダ・オークの振り下ろした鉄の塊のような棍棒を、とっさに反応してシュウはぎりぎりで避ける。


 「シュウ!近づくときは後ろからだって言っただろ!」


 「ご、ごめんなさい!」


 ジャダ・オークはいつもは雑魚扱いのオークの中でも一番上に君臨している。そのため全くザコではない。


 「はぁっ!!『抜刀風絶』!」


 ソウゴの刀から放たれた風の斬撃が、ジャダ・オークに向かって直進していく。が、


 「グキャアアア!?」


 ソウゴの斬撃が後ろから飛んできていたにもかかわらず、ジャダ・オークは近くにいた子分のオークをかかとで蹴り上げ、斬撃に対する盾とした。


 「うっそぉ!?」


 「あんなことできるんですか!?」


 「ふつうのやつはただの脳筋だからそんな頭良くないはずだ!こいつがおかしい!」


 「ゴギャアアアアアアァ!!」


 ジャダ・オークがいきなり立ち止まり、右手の棍棒を両手で持つ。そして雄たけびをあげると棍棒が赤く光りだし…


 「な!?魔法!?」


 シュウに棍棒を向けると、その棍棒から炎の塊が射出された。


 「避けられないです!」


 「くっそ!!」


 ジャダ・オークの放った火の塊がシュウにあたろうとしたとき‥‥‥


 「え?」


 「ゑ?」


 火の塊が‥‥‥消えた。


 「‥‥‥射程距離短いの?」


 「…(コクリ)」


 ソウゴの質問に対して、なぜかジャダ・オークが頷く。


 「‥‥‥そ、それじゃまた明日~!!」


 「え!?えっと・・・・今日はありがとうございました!」


 とりあえずソウゴたちは逃げて行った。


================================================


 「ジャダ・オークが『フレイム』の魔法ですか‥‥」


 「はい、確かにあれは『フレイム』でした」


 ギルドに帰ってきたソウゴたちは、魔物が魔法を使うという異常な事態をギルドに報告していた。するとギルド役員は‥‥


 「‥‥‥これは、邪神復活かもしれません。確か五千年以上前のことですが、昔の遺跡の記録に邪神が出現した年には魔物が凶暴化し、災厄が起きるという記述があったといわれています。この災厄によって、何度か文明も滅びているようです」


 「(邪神って‥‥ジェノさんだよな。本当にジェノさんのせいなのか?)」


 職員の話を聞いたソウゴは、本当に邪神のせいなのかと疑問に思い今度会ったら聞いてみようと思うのだった。


================================================


 「邪神のせいじゃって?そんなわけなかろう。むしろ逆じゃ逆。災厄が起きるまで邪神が魔物の暴走を抑えておるのじゃ」


 これがその次の日にあった邪神ちゃんから出てきた言葉であった。

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