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緋色の島  作者: 都月 敬
2日目
13/46

奉納

夕焼けの残滓も消えた薄暮の頃。

人気も見えない小道の向こう。小さな祠が見えてきた。が。


修人

「————え〜っと?」


約束した『ここ』まで戻ってきたが、少女は待っていなかった。

念のため、祠の裏から中まで、舐めるように見回して。


修人

「いねぇし」


まぁ、みかん探しにたっぷり時間を使ってしまったわけだし、こんな時間まで子どもがうろうろしているというのも、昨今の情勢を鑑みると大層アレなわけだが。それはわかっているのだが。


修人

「どうしろってんだよ、このみかん」


せっかくゆかり先生があんなに協力してくれて、ようやくゲットした貴重なみかんなのに。

時期外れなだけに、受け取り手がいないと、なんだか間抜けなものに見えてくる。


修人

「いっそ、食ってやろうか、オレが」


うまいかまずいかなんて、もうどうでもいい。

独り言をつぶやきまくってることも、もうどうでもいい。

ぶつけどころのないやるせなさを込めて、みかんを強く握りしめ。


修人

「——やめた」


せっかくあの子のために取ってきたみかんだからな。いないけど。

改めて、食べるのをやめたみかんの処遇に頭を悩ませようとしたところ。

茂みに隠れていた、先ほどは見かけなかったピンクのビニールボールが目に入った。


修人

「なんだよ。ちゃんと確保してたんじゃねぇか、ボール」


あの時に、ちゃんと渡せていたことに、少しだけホッとしたりして。

茂みから拾い上げて、祠の隣に寄り添うように置き直す。あの子がしゃがんでいた位置に。

そして、円い石蓋をお盆に見立てて、中央にみかんをそっと置いた。葉っぱもきれいに見えるように。


修人

「よし。」


こうしておけば、明日にはあの子が取りに来るかもしれない。ボールもあることだし。


修人

「ちゃんと美味しく食われろよ」


みかんに一つ、無茶を言って。


修人

「じゃあな」


誰にともなく別れを告げて、オレはそっとその場を離れた。

きっと意味のない、充実感を胸に。夕焼けの残滓も消えた薄暮の頃。

人気も見えない小道の向こう。小さな祠が見えてきた。が。


修人

「————え〜っと?」


約束した『ここ』まで戻ってきたが、少女は待っていなかった。

念のため、祠の裏から中まで、舐めるように見回して。


修人

「いねぇし」


まぁ、みかん探しにたっぷり時間を使ってしまったわけだし、こんな時間まで子どもがうろうろしているというのも、昨今の情勢を鑑みると大層アレなわけだが。それはわかっているのだが。


修人

「どうしろってんだよ、このみかん」


せっかくゆかり先生があんなに協力してくれて、ようやくゲットした貴重なみかんなのに。

時期外れなだけに、受け取り手がいないと、なんだか間抜けなものに見えてくる。


修人

「いっそ、食ってやろうか、オレが」


うまいかまずいかなんて、もうどうでもいい。

独り言をつぶやきまくってることも、もうどうでもいい。

ぶつけどころのないやるせなさを込めて、みかんを強く握りしめ。


修人

「——やめた」


せっかくあの子のために取ってきたみかんだからな。いないけど。

改めて、食べるのをやめたみかんの処遇に頭を悩ませようとしたところ。

茂みに隠れていた、先ほどは見かけなかったピンクのビニールボールが目に入った。


修人

「なんだよ。ちゃんと確保してたんじゃねぇか、ボール」


あの時に、ちゃんと渡せていたことに、少しだけホッとしたりして。

茂みから拾い上げて、祠の隣に寄り添うように置き直す。あの子がしゃがんでいた位置に。

そして、円い石蓋をお盆に見立てて、中央にみかんをそっと置いた。葉っぱもきれいに見えるように。


修人

「よし。」


こうしておけば、明日にはあの子が取りに来るかもしれない。ボールもあることだし。


修人

「ちゃんと美味しく食われろよ」


みかんに一つ、無茶を言って。


修人

「じゃあな」


誰にともなく別れを告げて、オレはそっとその場を離れた。

きっと意味のない、充実感を胸に。


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