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勘違い勇者だった俺が、モンスターとなって復活して立身出世  作者: 夜の狼
第3章 立ち位置を探して
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豚顔の騎士(ナイト)

病気で盲目となった少女、リリナの為に頑張る決心をしたリオン。果たして2人はどうなるのでしょうか?


※一部修正しました。

 早速見つけた薬草を小屋に持ち帰ると、それをすりつぶしてリリナに飲ませる。

「……変な味がするわ」

 ピンク色の舌を出して、彼女が不満そうに言う。

「ははは、『良薬は口に苦し』さ」

 それを見て、俺は笑った。

「どれくらい飲めば、効果があるのかしら」

「……そうだな、1週間や10日では駄目だな。もっと飲み続けないと」

「うええ……」

 その言葉に、彼女は「うんざり」という顔をして答えた。

 しかし、どれくらいひどい味なのだろう。興味が湧いた俺は、薬を指に付けてめてみたのだが……、

「うえ、ぺっぺっ!」

 彼女と同じ様に舌を出す。世の中に、これ程まずい物があるのかと思えるくらい、何とも形容しがたい味だ。

「あ、リオンも飲んだんだ?」

「ん~、どんな味かと思ってね」

「で、どうだった?」

「ものすごくひどい味だ。これが我慢出来るなら、どんな病気だって治る。それくらいひどい味だった」

「あはは、そうかもね」

 俺の答えを聞くと、リリナは可笑おかしそうに笑った。 


 それからしばらく、俺はリリナの世話をしながら小屋で一緒に過ごした。彼女の病気は、進行もゆっくりだが、治すのにも時間がかかる。それに、目が見えない彼女を1人で小屋に放置しておくのは、少し気が引けた。

 幸いだが、小屋にはついなの時を迎えるその時まで、置き去りにされた者が暮らせる最低限の設備があった。

 俺は、捕らえた獲物の他に山菜や果実で食事を作ったり、暖炉に拾って来たたきぎをくべて暖を取ったり、お湯を沸かして彼女の入浴の手伝いもする。

「ねえ……」

「うん?」

 木で出来た、大きな湯桶ゆおけかっている彼女の背中をいてやりながら返事をする。

「どうして、ここまで親切にしてくれるの?」

 身体の前を自分で洗いながら、リリナが聞いた。

「理由なんて無いさ。乗りかかった船、ただそれだけだよ」

 そう答えると、

「……でも、私にはあげられるものが何も無いわ」

 と、すまなさそうに言う。

「ただのお節介だ、気にしないでくれ」

 何も、見返りが欲しくて彼女を助けている訳ではない。しかし、そんな俺に、

「せめてものお礼として、こんな私で良かったら好きにしてもいいの。まだ13歳だから、物足り無いかも知れないけど」

 そう言って、彼女は振り返ると俺に対して両手を広げた。長い髪に邪魔されて大切な部分は見えないが、美しい裸体が目に映る。

「……馬鹿な真似はよせ。折角病気が治りそうだってのに、自分を大事にしなけりゃ駄目だ」

 俺はそう言ってリリナをいさめた。オークは人間に近い亜人デミヒューマンではあるが、人間の彼女に欲情したりはしない。

「私って、そんなに魅力無いかな」

 しょんぼりとした彼女に言われたが、身体のあちこちが未発達で残念な事を除けば、はっきり言って彼女は美しい。もう3年先くらいが楽しみな程に……。

「ほら、湯冷めしないうちに身体を拭いて服を着ろ」

 俺はそんなリリナの頭に、そっとタオルをかけた。


「おはよう、調子はどうだ?」

 何日目かの朝、俺はいつもの通り、リリナの寝室へ彼女を起こしに行った。

「おはよう……」

 リリナはベッドの上で上半身を起こしてから、「うう~ん」と伸びをして、しばらくの間ぱちぱちとまばたきをしていたが、

「ぼんやりとだけど、何か見えるわ」

 と、言った。

「本当か?」

 俺は慌てて彼女の元へと駆け寄る。すると、

「あっ」

 不意にリリナは声を上げた。

「リオンって、人間じゃなかったのね」

 おどろきの表情を浮かべて彼女が言う。

「あはは、びっくりしたか?」

「うん、ちょっとだけ、ね。だけど、そんな事はどうでも良いの。だって、リオンはリオンだから」

 彼女は、まだ完全では無いが、光が戻った瞳で俺を見ながら言った。


「……ゆっくり、ゆっくりとだぞ」

 俺は、まだ目が見える様になって間も無いリリナの両手を引いて、小屋の外で彼女の歩行訓練をしていた。

 視力を失っていたが為に、自由に動く事が出来無かった彼女は、足腰の力が弱って自分で歩く事が難しくなっていたからである。

「ほら。いち、に、いち、に……」

 それはまるで、立つ事を覚えたばかりの子供の様だった。

「ずいぶんと久しぶりに見るけど、空ってこんなに青かったのね」

 ふと頭上を見上げてリリナが言った。

「ああ、綺麗きれいなもんだ」

 そんな彼女の手を引きながら答える。

 普通の者には空なんて見慣れたものだが、病気で一度は目の光を失った彼女には、新鮮に見えるのだろう。

「ここは山の中だけど、広い野原やお花畑を、また自由に駆け回ってみたいなあ……」

 その言葉を聞いて考える。

 彼女は捨てられた身だ、それが元に戻るにはどうすればいいだろう。彼女の村では、リリナはもう死んだものだと思われているに違いない。平気な顔をして戻ったら、それはそれで面倒な気がする。

「とにかく、今はあせらないで体力を戻す事だけを考えよう。後の事は、またその時になったら考えればいいさ」

「うん、そうだね!」

 彼女は元気良く返事をすると、俺に手を取られながら、またゆっくりと歩き始めた。


 それからまたしばらくすると、リリナの視力は完全に戻り、病気もすっかり良くなった様だが、落ちた体力はまだ回復し切れていない。

 そんな訳で、今日も外で彼女の歩行訓練をしている。すると、足音が聞こえて来た。それもかなりの人数が、こちらへ近付いて来ている様だ。

「何か来る、気を付けろ」

 俺は彼女に声をかけると、注意をうながした。

 足音の正体はオークだった。全部で5匹のオークが、俺達の前に姿を現した。

「お前、何をしているんだ?」

 俺を見つけるなり、そのうちの1匹が言った。

「どうもこうも無い。この人間の世話をしているだけだ」

 と、あえて平静をよそおって言った。

「何かあったら連絡に戻れと言ったのに、それはどういうつもりだ?」

「忙しくてな、そんなひまが無かっただけだ」

 いきなりの事で、リリナは戸惑とまどいを隠せない様だが、俺は彼女に手を向けておとなしくしている様に合図を出した。それを見て察したのか、彼女は黙ってうなずく。

「まあいい。人間を捕らえたのなら、村へ連れて行くぞ」

 俺は以前に、オークとは他種族と出合っても、不用意に争う事はしないと言ったが、この場合は少し条件が異なる。

 なぜなら、この小屋はオークの縄張りーーつまり、テリトリ-ーーに近い。こういった場合、自分達の生活圏を守る為と、もう一つは人間を食料や奴隷にする為に襲う事もある。奴らは、リリナをそうしようと思っているのだ。

 俺は彼女に背中を向けて立つと、両手で槍を構えた。

 それを見て、仲間の1匹が口を開く。

「お前、一体どういうつもりだ?」

「この人間の女は俺のものだ。渡す事は出来無い」

「それは俺達が決める事じゃない。お前には、それなりの物をくれてやる。いいから人間の女を寄越よこせ」

「だが断る」

「何……だと!?」

 俺の言葉を聞いて、仲間達が一斉に武器を構える。

「逆らうとどうなるか、解っているだろうな?」

「承知の上だ」

 それを聞くと、仲間のうちの1匹が襲って来た。槍を横に振るって俺の横腹を狙う。

 俺はその攻撃を、持っている槍で下から打ち上げる形で払い、逆にすきだらけの相手の腹に槍を突き刺した。

「ぐふうっ」

 そのオークが倒れると、今度は2匹がかりで攻撃して来た。

 俺は、その2匹が代わる代わる突き出して来る槍を防ぎながら、様子をうかがう。しかし、休み無く繰り出される攻撃には、意外と付け込む余地が無い。

 オークというのは、割と戦闘巧者である。駆け出しの冒険者や素人では負ける事も多い。決して侮れない相手なのだ。

 しかし、見た目がオークでも、こちらの中身の俺は熟練した冒険者である。一撃で倒す事は考えず、どこか適当な所を狙い、相手がそこに気を取られた所を一気に攻める。

 けれど、今はただのオークなのも事実だ。もし勇者の俺だったら、オークの5匹や10匹どころか、50や100を相手にしても、決して負ける事は無い。楽に蹴散らす事が出来ただろう。

 そのせいで、2対1の戦いでは苦戦気味だ。やはり数の不利というのは避けられない事実で、このままでは良く無い。


 しかしその時、頭上から10数本もの矢が降り注ぎ、オーク達を打ち倒した。そのうちの何本かが俺の体へも突き刺さる。痛みと共に、赤い血がそこから噴き出す。

みにくいオーク共め!彼女から離れろ!」

 その声と共に、10人以上の武装した人間達が姿を現した。中には金属製の鎧を着た者も居る。その格好に統一性が無い事から、うち何人かは冒険者だと思われる。

「一体何が……!?」

 俺が周囲を見回すと、集団の中から1人の女性が彼女に駆け寄った。

「ああ、リリナ。良く無事で!もう大丈夫よ!」

 そう言うと、その女性は彼女を抱き締めた。

「え……!?おかあ……さん?」

 自分の名前を呼ばれたリリナは、呆気あっけに取られた顔で、そうつぶやいた。

「俺達が来たからには、もう安心だ!」

「我々警備隊も居るぞ!」

 どうやら、攻撃して来たのは、辺境の警備隊と雇われた冒険者の混成集団の様だ。

「なぜ、どうして……?」

 今だに訳が解らないという顔でリリナが言うと、

「あなたが小屋に送られてから、かなりの時間が経つのに立ち昇る煙が確認出来たのよ。あなたは目が見えないから、おかしいと思ったの!」

(……なるほど、そういう事か)

 彼女の母親と名乗る女性の言葉に、俺は納得した。

 目が見えないリリナには、火を起こす事が出来無い。そんな彼女が居る小屋から煙が立ち昇れば、それは確かに不自然だ。

「人間様の領域へ踏み込む豚野郎共め!その愚かな行為に対する罰を、身を持って知れ!」

 いかにも格好付けたセリフをほざきながらその人間達は、まだ息があるものの、すでに身動き出来無いオーク達へ向かって、手に持った武器を振り下ろし始めた。

 しかし、言わせてもらうなら、こちらの縄張りに近付いて来たのは、そちらの方だ。あの小屋だって、かなりオーク側に近い場所に建てられている。それを知ってか知らずか、勝手な事を言うもんだと思ったが、それこそ人間側の都合というものだろう。

(とりあえず、逃げなければ……)

 この状況こそ、報告しなければならない。今こそ見張りの仕事を果たすべきだろう。

「くっ……」

 しかし、少なく無い数の矢を受けた身体は、すでに思い通りに動いてはくれない。それに、血を失い過ぎている。そのせいで、何だか頭がぼやけて来た。

 薄れ行く意識の中で、俺は自分に向かって来る人間が、ゆっくりとその手に持った剣を構えるのを見ていた。

「待って!違うの!彼は、違うの!」

 自分を抱き締めている母親を振りほどくと、取り乱した様子でリリナが叫んだ。

「あなた、病気は?それに、目が……?」

 娘の意外な行動に、母親は驚きの言葉を発する。

 俺はうつ伏せに倒れたままで最後の力を振り絞ると、まだ完全には身体が回復し切れておらず、よろよろとこちらへ向かって来る彼女に、無意識に手を伸ばす。

 リリナは、その手を両手でつかむと何か言っているが、もうそれは、俺の2つに折れた豚の耳には聞こえなかった……。

少し後味が悪いかも知れませんが、それがモンスターになった彼の因果です。次はどんな展開になるのか、今しばらくお待ち下さい。

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