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勘違い勇者だった俺が、モンスターとなって復活して立身出世  作者: 夜の狼
第3章 立ち位置を探して
26/30

恋でも愛でも無い

久しぶりに投稿します。待っていて下さった方や、そうでない方も、前回からものすごく時間が開いてしまい、大変に申し訳ありません。

今回は、一気に連続5話を掲載します。それでは、どうぞお楽しみ下さい。


※不自然になる部分を修正いたしました。

 警備兵の詰め所を出てから、ミルダが言った。

「それにしても、最初は本当に盗賊みたいな扱いかと思ったわ」

「俺も、巻き添えで牢屋行きは御免だと思ったさ」

「私は盗賊なんかじゃないわよ。第一、こんな美人な盗賊が居る訳無いでしょ」

「自分で言うか、自分で」

 俺はそう言ったが、彼女は割と美形な方だと思う。だが、年齢的にどちらかと言うと、まだ子供っぽさが抜けてなく可愛い方だと感じる。

 ただし、人間の年齢で言うなら、彼女は明らかに俺より年上だが……。

「いいのよ。女性において、美しさというのは何にもおいて優先されるものなの!」

「はいはい」

「ところで、リオンは何歳なの?」

「あ、ええと……」

 今思っていた事を見透かされた様で、俺は少しあせったが、

「人間の年齢で言うと、15歳だ」

 俺は素直に答えた。

「そうなんだ。私より年下なんだね。でも、爬虫類ってすぐ大人になるからなあ。リオン君は、意外とオジサンだったりする?」

「失礼だな。俺からすると、ミルダの方がよっぽど子供だぞ」

 そう言いながら、君付けで呼ばれた仕返しに、彼女の頭をわしゃわしゃと少し乱暴になでた。

「あ、こら!レディの頭を気安くでるな!年上を子供扱いするんじゃないわよ」

 彼女は少し赤くなりながら、自分の頭に置かれた手を両手でつかんで外そうとする。

 ミルダは必死で手を外したが、俺は笑っていた。

「全くもう。髪は女の命なんだからね!」

 彼女は、少しふくれっつらでそう言った。

「そう言えば、リオンはあそこで何やってたの?」

 不意にミルダに聞かれた。彼女が言うあそことは、街道の事だ。

「ああ、そうだったな」

 そこで俺は、改めて自分の目的を思い出した。聞かれて話そうとすると、

「ねえ、その話って長くなりそう?」

 ミルダに尋ねられたので、

「長くは無いけど、余り人には聞かれたくないかもな」

 俺はそう答えた。

 それを聞いて彼女が、

「じゃあ、場所を変えない?」

「変えるってどこへ?」

「そうね、とりあえず安心して話しが出来る場所が良いわね」

 彼女の提案で、俺達はとある宿屋に入って部屋を取った。人目を引くのは店内に入った時だけで、部屋にこもってしまえば後はどうという事も無い。


「それで、リオンの目的って何?」

 部屋に入ると、早速ミルダが聞いて来た。

「リザードマンが住処すみかを離れるなんて、よっぽどの事だもの」

 旅の吟遊詩人となれば、ある意味で当然かも知れないが、どうやら彼女はモンスターの事にも少し知識がある様だった。

「俺の目的は、こいつだ」

 そう言いながら、ミルダへ向かって金貨をはじいて寄越よこした。

「……これは?」

 金貨を受け取った彼女はそう聞いた。

「良く見てくれ」

 俺がそう言うと、ミルダは親指と人差し指で金貨を縦に挟み、眼の前でしげしげと眺めた。

「う~ん、見た事が無い金貨ね。現在流通している物とは違う様だわ」

「俺が考えるに、かなり年代物だと思うんだけどな」

「それで、この金貨がどうかしたの?探しているの?」

 彼女はベッドに腰掛けると、金貨をまじまじと見ながら言った。

「いや、その逆さ」

「逆って?」

「俺は、その金貨を山程持っている」

「へえ~。リザードマンって結構お金持ちなのね。それともリオンが特別なのかしら」

 その言葉にも余り驚かずに、片目を閉じて金貨を見たままミルダが立ち上がって、部屋の中を少しうろうろしてから今度は椅子に座ると、足をばたばたさせながらおどけて言った。

「まあ、正確には俺個人の所有物という訳でも無いんだが……」

「どういう事?」

 そう尋ねる彼女に、金貨の出所でどころとそれについての話をした。

「それって、凄くない?」

「俺もそう思う」

「でも、リザードマンって欲が無いのね」

 彼女が少し不思議そうに言うので、

「欲が無いと言うよりは、興味が無いのさ。何せ、基本的に金が無くても生活に困る事が無いからな」

「それって、人間には考えられない事だわ。っと言うより、やっぱりリオンが特殊なのね」

「俺もそれは否定しない」

「あら、意外に素直ね」

 彼女の言葉に、

(元人間だからな)

 そう心の中で言った。

「でも、いくら価値があっても、流通していない金貨を使う事は難しいんじゃないかしら」

「しかし、仲間の話だと行商人はそんな事は言わなかったらしいぞ」

「う~ん……。きっと、欲しがる人が居たからじゃないかしら。そういう人に売りつければ、もっと儲かるから。それに純度が高い金は、他に使い道もあるもの」

「例えば?」

「……そうね。方法の1つとして、鋳潰いつぶして混ぜ物をすれば、今の金貨なら少し多目に出来ると思うわ。もっとも、5枚や10枚じゃとても足りないけど。何百枚、何千枚と使えば、1.5倍くらいには増やせると思うわ。でも、あまり混ぜ物を増やすと粗悪になるから、2倍は無理ね」

「それじゃ、余り儲からないなあ」

「ええ、手間を考えると余り賢いとは言えないわ。だから、別の品物に加工する方がまだマシね。ネックレスやブレスレットなどの装飾品や、後は美術品なんかに」

「なるほど」

「まあ、でも。この金貨自体が美術品みたいなもんだし、コレクターなら欲しがりそうな人が居るかもね。アンティークコレクターと言うのは、どこにでも居るものだから」

「どれくらい古いか解るか?」

「さあ?さすがにそこまでは。代替わりなどで王や領主が変わると、貨幣のデザインを変える事があるわ。その時に古いお金は回収して、それを材料にして造り直される事があるのよ。だから、ちょっと解らないわ」

「なるほどな」

「ただ、そういう事に詳しい人なら居るんじゃないかしら」

「例えば?」

「それこそ、そういった物を集めているコレクターよ」

「確かにそうだ」

 彼女の言う通り、コレクターならば自分が集めている物に関する知識を持っているに違い無い。

「それで、そういった人に心当たりはある?」

「ん~、私はちょっと解らないなあ」

 ミルダはそう答えた。


「それじゃ、そろそろ休む事にしましょう」

 彼女はそう言うと、おもむろに服を脱ぎ始めた。

「ちょっとおい、いきなり何を!?」

「何をって、寝るんだから当たり前でしょ?」

「それはそうだが……」

 何の違和感も無い様に言われて、俺の方が反応に困った。

「さすがに、これが人間の男の前ならやらないわよ」

 彼女はあっさりそう言うと、自分のベッドにもぐり込む。

「それじゃあね、おやすみ」

「お、おやすみ」

 彼女の唐突過ぎる行動に、呆気に取られてそれだけを答えた。

「まあ、俺も寝るか」

 しかし、今はリザードマンであるから、人間のベッドは使いにくい。だが、床に直接寝る訳にも行かないので、仕方なく腹這はらばいになる事にした。

「まるで干物みたいだな」

 何とも言えずみっともない格好で、俺はつぶやく。

「ねえ、リオン。まだ起きてる?」

 隣のベッドから、ミルダの声がした。

「ああ」

 短く返事をする。

「そっちへ行っても良い?」

「何っ!?」

 意外な言葉に、俺は驚いた。

「な~んか、寝苦しいのよね」

 そう言うと、こちらの返事を聞かずに、彼女はいきなりこちらのベッドにすべり込んで来る。

「お、おい……」

 突然の行動に動揺していると、彼女はそのまま抱き付いて来た。

「あ~、やっぱりだ」

「何が?」

 気まずくなっている俺とは裏腹に、彼女は明るい声で言った。

「リオンの体って、ひんやりして気持ち良いと思ったのよね」

「はあ!?」

「寝苦しい夜には、リザードマンよね」

「そういう道具じゃないぞ」

 彼女の意図が解って、俺はあきれて言った。

 そんな思惑おもわくを他所に、彼女はぐいぐいと自分の体をり付けて来る。何やら生暖かくて柔らかい感触も伝わって来るが、生憎あいにくと言うか残念と言うか、今の俺は人間の女性には欲情しない。例え、妙齢の可愛い女の子に、裸で抱き付かれていても……だ。

「あ~、気持ち良い。これでぐっすりと寝られそうだわ」

 ミルダはそう言うと、両手両足を使って俺にがっちりとしがみ付く。

「あのなあ……」

 俺は再び呆れて言った。

 信用されているのはうれしいが、これは余りにも無防備すぎるだろう。


 しばらくすると、彼女は安らかな寝息を立て始めた。

「すーすー……」

 そのおだやかな寝顔を見ながら、

(やれやれ、すっかり信用されてるな)

 と、三度みたび呆れつつ思った。

 だけど、こうも簡単に異種族に心を許せるのは、それだけ彼女が素直で純真だと言う事だろう。

「彼女に賭けてみるのも悪くない……か」

 とりあえず、ミルダは信頼するに足る人物だと確信したので、一度彼女を住処に連れて行き、財宝の実物を見せても良いだろう。

 彼女に抱き付かれたまま、俺も腹ばいになって眠った。うっかり寝返りをして、ミルダを押しつぶしてしまわない様に気を付ける。


 次の日になると、宿を出てからまずは街の責任者に会う為に、俺達は町長の屋敷へ向かった。

「い、一体何のご用ですか?」

 屋敷の警護をしている者が、俺の姿を見ると、おっかなびっくりで聞いて来た。

「町長さんにお会いしたいのですが……」

 出来るだけ彼らを安心させようと、ミルダがそう尋ねた。

「ど、どうぞこちらへ……」

 案内されて、俺達は屋敷の中へと入る。

「私が町長だが、ど、どういったご用件かな」

 少しおっかなびっくりで聞かれたので、

「まずは、これを見てもらいたい」

 俺はテーブルの上に、持って来た金貨を置いた。

「ほう……、これは一体?」

「いつの時代の、どこの物かは解らないが、俺達リザードマンはそれを大量に所持している。だけど使い道が無い。そこで、提案がある」

「ふむ?」

「こちらが望む物を提供して欲しい。支払いはこれと同じ金貨で行いたいのだが、どうだろう」

「本物の金貨であれば、どこの物であろうとこちらは構わないが」

「それともう一つ」

「何かな?」

「実は、金貨以外にも財宝がある。金貨と同じ時代のものであれば、歴史的価値があるはずだ。それをこの街で展示して欲しい。そうすれば観光名所になって、この街の為にもなると思う」

 俺の考えは、そういう事だ。洞窟の奥で朽ち果てさせるよりは、街で展示してもらう。そうする事で、この街が有名になって人が集まれば役に立つ。何より、警備が付くので安全だし、宝を狙った冒険者に、リザードマンの住処が襲われる事も無くなるだろう。まさに一石二鳥、いや、取り引きで街の経済もうるおうし、リザードマンの暮らしも良くなるので、それ以上だろう。

「どうだろう、考えてもらえないだろうか」

 俺がそう言うと、

「しかし、肝心のその財宝がどういう物か私達は知らない。君達にとって価値がある物でも、我々にとってガラクタという可能性もある。それでは困る」

 町長は、そう答える。

 なるほど、もっともな話だ。

「じゃあ、俺達の住処に来て、確認してはどうだ」

「わ、私が君達リザードマンの巣にか!?」

 その申し出を聞くと、町長は”ぎょっ”とした顔をした。そりゃそうだろう、冒険者でもない一般人なら、誰だってそれは怖い。

「では、こうしましょう」

「ふむ?」

 不意にミルダが口を開く。

「私がまず彼と一緒に行って、その財宝とやらを確認して来ます。それで価値があると解れば、その時また話を進めるかお考えになってはいかがですか」

「……うむ、そうしてもらえるならありがたい」

 彼女の申し出を、町長は快諾かいだくした。

「では、そういう事で一旦失礼します」

 こうして、俺達は町長の屋敷を後にするのだった。

リザードマン編のヒロインである「ミルダ」と、いきなり急接近したリオン。彼女との関係と、人間との交流がこれからどうなるのか、予想しながらお読み下さい。

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