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勘違い勇者だった俺が、モンスターとなって復活して立身出世  作者: 夜の狼
第3章 立ち位置を探して
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人探し

大変に遅くなってしまい、申し訳ありません。続きを投稿します。

 財宝を見ながら、俺は考えた。

 どうやっても、そのうち必ずここをぎ付ける奴が出て来る。冒険者ってのは、そういう嗅覚を持っているもんだ。そもそも、それを持っていない奴は、飯を食う事が出来無い。

 リザードマンというのは、魔法こそ使えないが亜人種の内では割と強い部類に入る。守りを固めて対策を練れば、何回かは襲撃も撃退出来るだろう。だけど、そのうちリザードマンより強い奴らが来たら、どうする事も出来無い。

 大体、この財宝の価値はこの場所には不釣り合いなのだ。楽して大儲けが出来れば、それに越した事は無い。そう思っている人間なんて、それこそ”ごまん”と居る。

 おそらくだが、(俺の見た限りでは)この財宝はどこかの盗賊が隠したものだと思う。なぜかと言うと、財宝の内容にまず統一性が無いからだ。それと、もしこの金貨を発行した国の様に、出自しゅつじが立派なものであるなら、裸のまま野積みにする様な、ずさんな管理の仕方はしないだろう。

 しかし、この規模から言うと、さぞかし名のある大盗賊だったのだろうと思う。

(とりあえず、この財宝を処分しないとな……)

 こんなものがある限り、リザードマンの生活に平穏はやって来ない。しかし、ただどこかに捨てるだけなどというお粗末な処分の仕方では、余りにも愚かだ。

 仮にそうしたところで、「財宝を捨てた」などという話を、貪欲どんよくな冒険者が信じるとも到底思えない。俺だって信じないだろう。欲に取り付かれた人間には、価値観の相違というものをまず理解出来ないからだ。リザードマンと人間とでは、財宝に対する考え方が違うからである。

 なぜなら、自給自足が基本のリザードマンは、財宝なんか無くても別にちっとも困りはしないのである。ただ、あれば便利--取り引きで欲しい物の入手に使える--というくらいにしか考えていない。

 人間は、先入観の固まりみたいな種族である。自分達に価値のあるものなら、全てそうに違い無いという考えは、大抵の者が持っている。何せ、同じ人間同士であっても、価値観の違いから争いになる事はしばしば起きる。

 それは、他愛の無い子供同士のおやつの取り合いから、国家同士の戦争まで様々だ。特に、財宝に目のくらんだ冒険者がそれを悟る事は難しい。

 つまり、合理的に財宝を処分して、なおかつそれを知らしめる方法--「もうお宝はここには無いよ」と宣言する方法--があれば良いのだが、さすがにそんな上手い解決方法は、俺でも簡単には思い浮かばない。

 文字通り、リザードマンにとってこの財宝は「宝の持ち腐れ」に違い無い。しかも、自分達に不利益をもたらしかねない、厄介な物となっている。

 しかし、この厄介者を上手く利用する方法があれば、おそらくリザードマンの生活にも有益になるに違い無い。何せ、いつの時代でも金というのはあって困るものでは無いからだ。

 ただし、気を付けなければいけないのは、リザードマンが必要以上に繁栄はんえいしてしまう事だ。人間を越える営みを送る様になれば、そのうちその存在を危険視したり、富を奪おうとする奴が必ず現れる。リザードマンの生活は、あくまでも自然体で無ければならない。なぜなら、モンスターもまた自然の一部であるからだ。

 あの頃ーー勇者だった頃ーーの俺は、そんな事は微塵みじんも考えなかった。とにかく、モンスターは倒してしまえという、一方的な思考に縛られていたからだ。


(リザードマンと人間、両者の利害の一致。それをクリアーする案。一体どうしたものか……)

 俺は、かなり考えた。そして、ふと思い付いたのだ。

「人間は金が欲しい、リザードマンは金が要らない」

 両者の利害を、上手く一致させれば良いのだ。さっきから考えていたのだが、俺は両者のどちらにも財宝を渡さないーー残さないーー方法ばかり考えていた。

 そして、考え出した手段があった。

「欲しいというなら、くれてしまえばいい」

 ただし、ただくれてやるのも駄目だ。人間というのは、一方的に受けた恩というのは、良く平気で忘れる種族だからだ。そして、もっと寄越せと付け上がる。タダより高いものはない。どうせタダでもらったんだから、タダで寄越すんだから大した事じゃないだろう。そういうふざけた考えを平気で起こす。

 だから、こちらもそれなりの代償を頂く。「ギブ・アンド・テイク」ってやつだ。財宝をくれてやるって言うんだから、あちらも嫌とは言うまい。

 俺は考えた上で、ある策を用いる事にした。しかし、問題はその考えにリザードマン自身が賛同してくれるか、という事だ。

 何しろ、彼らは本来は平和主義者である以前に、自然主義者だ。無ければ無い様にどうとでも生活出来る。けれど、人間はそうでは無い。欲というものがあるし、合理性や向上心という考えも持っている。自分(達)に無い物は欲しいし、より生活を便利で豊かなものにしようと思っている。

 もし俺が人間だったらーーいや、元々人間だがーー、リザードマンの財宝を何とか手に入れて、それを役立てようと考えるだろう。それは個人の為かも知れないし、他の人々の為かも知れない。

 けれど、その中には、

「どうせリザードマンがお宝を持っていても、文字通り宝の持ち腐れ。それくらいなら、自分が有意義に使ってやろう」

 という、身勝手で不届きな考えが根底に無い事も否定出来無い。人間という奴は、敵であっても味方であっても、とにかく面倒くさい生き物なのだ。


 とにかく、俺は行動に出る事にした。このまま自分だけでうだうだ考えていても始まらない。まずは、このリザードマンの集団の長--リーダーでも何でも良い--と、話をしようと思った。

「なあ、族長ってどこに居るんだっけ」

 まず俺は手近な1匹に尋ねてみた。集団に居ながら、そのリーダーを知らないというのも変な話だが、何しろ俺は、ベリアルの力によって無理矢理にじ込まれた存在だ。向こうは俺の存在を知っている事になっているが、俺は向こうの事を何も知らないのだ。

「うん?お前、変な事を聞くな?」

 当たり前の事だが、リザードマンは首をかしげて不思議そうに言った。

「う、いや……」

 さすがに俺は答えに詰まった。

「まあ、いい。教えてやる」

 そいつは、別段気にした風も無く、俺をリーダーのところまで案内してくれた。

「族長は、ここだ」

 連れてきてくれた奴に礼を言うと、俺は族長の居るという部屋へ入った。

 中に入ると、他のリザードマンより少し大柄な体格の1匹が居た。

「どうした?何か用か?」

 そいつは、俺を見て何の疑問も無さそうに言った。

「実は、提案がある」

 俺はそう切り出した。リザードマンというのは、目上の相手に対しても特に敬語を使う事をしない。

「ふむ……、言ってみろ」

 リーダーが頷いた。

「あの宝の事なんだが……」

 俺は、リーダーにいずれ宝が面倒事の種になる事などを話したのだが、

「だから何だ?そんな物なら捨ててしまえばいいじゃないか」

 リーダーは、そう言って俺の話に取り合わなかった。 

 しかし……、

「お前、もしかして”あれ”が欲しいのか?だったら好きにしろ」

 意外な言葉に、

「じゃあ、そうさせてもらう」

 俺は喜んで言われたままにする事にした。


「……しかし、困ったぞ」

 俺は考えながらつぶやいた。

 これまで俺が復活して来たモンスターは、一応だがそんなに人間とかけ離れた存在では無かったし、ノールは見た目が犬という事もあり、人間と絡むにはまだマシな方だったろう。

 だが、今回はよりにもよってトカゲである。このまるで大蛇の様な、太くて長い巨大な尻尾だけは、どう頑張っても誤魔化し様が無い。

「まあ、いいか」

 隠せないなら、いっそこのままの方が良いかも知れない。俺はそう考えると、人間の街へと行く事にした。

 だけど、当たり前の話だが、いきなりモンスターが姿を見せては人間は混乱するだろうし、弓矢や魔法が飛んで来ないとも限らない。俺としては、出来れば平和的な接触を望みたいのだ。

 けれど、どうすれば人間と上手く接触出来るだろうか。リザードマンは会話が可能な種族ではあるが、文字を持たない。よって、筆記用具を必要としない。それが困るのだ。

 これまで俺は、手紙によるコミュニケーションを人間と行った事がある。あらかじめ、こちらの出方と意図を相手に伝える事で、警戒心を失くさせる目的があったからだ。俺は元々人間なので、文字に関しては何も問題が無い。

 しかし、いくら何でも、さすがに筆記具が無ければ一文字たりとも書く事が出来無い。今は、どうやってそれを入手するかだ。

 なお、自分で作るというのはさすがに不可能だ。作り方を知らない訳では無いが、知っているからと言って出来る事では無い。

 例えば、料理の作り方を知っていても、実際に調理するのとでは違うのと同じだ。ステーキは誰でも知っているが、単に肉を焼けば良いと言う訳では無い。それと一緒だ。

「そう言えば……」

 俺は、ふと思い出した。そう言えば、そもそもの発端は例の金貨を取り引きに使った訳だが、っと言う事は、どこかに人間の往来があるルートが存在すると言う事だ。

 俺は例の金貨を何枚か掴むと、人間が使う道を探しに外へ出た。あの宝は、族長が俺に全部くれると言ったのだ、俺の好きに使って何が悪い。

 洞窟を出てから、俺は人間の匂いを探した。獣人程では無いが、リザードマンというのは人間より少しは鼻が良い。多少古くても人間の痕跡があれば、探し出すのはあまり難しくは無いだろう。

 っと言っても、人間の行き来が何度もあって、繰り返し使用している場所でないと探し出す事は出来無い。人の匂いが染み付いていなければならないからだ。

 俺は、住処すみかの洞窟からかなり離れた所までやって来た。元々リザードマンがむ様な場所だ、人里離れているのは当然だが、こういう時は逆に不便に感じる。

 やがて、特に整備されている訳では無いが、自然と出来た街道の様なところへとやって来た。繰り返し人が通る事で、やがて人の足で踏み締められて出来た往路おうろの様だった。

 俺はそこで、人が通るのを待った。ただし、誰でも良いと言う訳でもない。やたらとこの姿で人前に出れば、まともな会話になる前に逃げ出されるか、下手をすれば攻撃される可能性もある。相手は選ばなければならない。

 俺は、その街道に何日も通った。人里離れたさびれた街道は、人通りが全く無い‚日も珍しくは無かった。たまにあっても、そのほとんどは俺に取ってあまり好ましい相手にはなりそうもなかった。

 まず、必要以上に武装している相手。当然だが、こういった街道を通るのに、外敵の類を警戒しない者は居ない。盗賊はもちろんだが、人里離れた場所にはモンスターも出撃する。武装した冒険者には大した脅威にならないが、普通の旅人にとって、コボルトやゴブリン程度は十分な脅威と成り得るのだ。

 さすがに、食人鬼オーガの様な危険なものまでは出ないと思うが、もしそんなものが出たら、今の俺では対処出来ない。丸腰のリザードマンなど、強さはたかが知れている。

 まあ、仮にそんなものが出るなら、とっくに討伐隊でも組まれている事だろう。俺はそんな事を考えながら、何日も街道を張り込んでいた。

当然ですが、まだ続きます。もうしばらくのお待ちを。

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