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勘違い勇者だった俺が、モンスターとなって復活して立身出世  作者: 夜の狼
第3章 立ち位置を探して
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トカゲ人間

前回から、だいぶ経ってしまって申し訳ありません。今回から、また新しい身体のお話が始まります。

 死んだ俺は、ベリアルの待つ死後の待機場所へと帰って来た。


「よお、美女とのロマンスはどうだった?」

 少しニヤけながら、ベリアルが言った。

「つまらんな。ノールの身体じゃ、何も感じないぞ」

 俺は素っ気無く言うと、ベリアルを見て、

「今なら、感じるんだけどな」

 そう言うと、ニヤリと笑い返した。するとベリアルは、慌てて胸を隠す様な仕草をして、

「ば、馬鹿野郎!どこ見てしゃべってやがる!」

 と言って、少し赤くなって怒った。

「やっぱりお前、リリスの従姉妹いとこか何かだろ」

 俺がそう言うと、

「あ~、もういい。お前は次は強制的にトカゲだ。新しいモンスターを紹介してやろうと思ったが、やめた」

 ベリアルは、俺を指さすと、いきなり例の光を俺に当てた。

「おい、こら。ちょっと待て」

 俺は慌てたが、もう遅かった。俺の身体は、直立したトカゲの”それ”になってしまっていた。手を見ると、細かいうろこに覆われていた指先には鋭い爪があり、指の間には小さいながらも水かきがあった。

 指の数は一応5本あり、握ったり開いたりしてもあまり違和感は無いが、人間の様にあまり細かい動きや作業は出来そうも無かった。

「すっかりトカゲ人間だな」

 そう言って笑うベリアルに、

「こっちの返事も聞かずに、いきなりこれはどういう事だよ」

 俺は抗議したが、

「まあ、どうせやる事になるんだろうから、遅いか早いかの違いだ」

 ニヤリとしながらベリアルが言った。

「何てこった……」

 俺は、すっかり落胆しながらベリアルの用意した鏡を見た。

「なかなか男前だぞ」

 笑いながらベリアルが言った。

「どこがだよ……」

 俺の姿は、直立歩行したトカゲそのものだった。違う部分と言えば、普通のトカゲと違って、目がかなり前の方にある事だろう。目だけが、まるで犬か猫、例えるなら俺が以前になったコボルドの様だった。もっとも、そうでなければ二本足で生活するのはとても無理だからだ。リザードマンというのは、そういう進化をした種族という事なのだろう。


「さて、それじゃあお前の新しい棲家すみかへ送ってやる」

 ベリアルがそう言うと、付近の空間が一変した。俺はいつの間にか薄暗い洞窟の中に立っていた。そこは完全な暗闇では無く、所々に松明たいまつが取り付けられてある。

(ここは、どこだ……?)

 リザードマンもまた、暗闇で行動するのにあまり不自由をしないが、何しろ初めての場所というのは勝手が悪い。

 俺はなるべく、広くて明るい方へ向かって歩いた。こういう時は、普段と逆を行えば良いのだ。冒険者だった時は、なるべく戦闘を避ける為に敵が居ないと思われる方へと向かった。

 つまり、今は何か居ると思われる方へと向かう訳だ。俺がそう考えて歩いて行くと、やはり俺と同じ姿をした、リザードマンが大勢居る広間へと出た。

 ここは共同生活空間なのだろう。中央には大きなき火があり、それを囲む様にして何かをやっているリザードマンが多数居る。

 リザードマンは、爬虫類の特徴を持つトカゲ人間であり、つまり冷血動物だ。その性質上低温は苦手なので、身体が冷えない様にしているのだろう。それと同時に、作業の為に灯りが必要なのだと思う。

 俺が近付いて観察すると、リザードマン達は自分らが使う日用品の作成や装備の手入れなどをやっていた。

「何だお前、何処どこへ行っていたんだ?」

 俺に気が付いたリザードマンの1人が、作業をしていた手を止めると、頭を上げて声をかけて来た。もちろん、リザードマン語だ。

「いや、ちょっとな……」

 俺が言葉を濁して答えると、

「まあ、いい。それより、丸腰でどこかへ行くなよ。最近はこの辺りも人間が増えた」

 リザードマンは、そう言うと再び作業に戻った。

(とりあえず、ここの様子を調べないとな)

 そう思った俺が広間を離れようとすると、

「おい、松明を持って行け。いきなり仲間に殴られても文句は言えないぞ」

 1人がそう声をかけて来た。言われた俺は、

「解った」

 とだけ返事をすると、焚き火の中から火の付いた1本の枝を拾い上げ、松明に点火した。

(さて、これで良し)

 パチパチと火のぜる音を立てる松明をかざしながら、俺は洞窟の調査を始めた。自分の住む所の探検とはおかしな話ではあるが、初めての場所というのは、何かこう、わくわくする気分を抑えられない。

(冒険者の血というのは、因果なものだな)

 俺は苦笑いしながら、洞窟の中を歩き回った。

 洞窟の中は、さながら天然のダンジョンだった。全く無作為に伸びるいくつもの枝道を、俺は1つ1つ調べた。

 そのうち、見張りが居る下へと続く1本の道の前へとやって来た。俺が近寄って行くと、

「何だ?腹が減ったのか?」

 見張りが声をかけて来た。言われてみれば、俺はここへ来てから何も食べていない。

「まあ、そんなところだ」

 俺が返事をすると、

「そうか。貯蔵庫はこの下だ。解っていると思うが気を付けろよ、中はとても寒い。早く出ないと死ぬぞ」

 見張りはそう教えてくれた。

 俺は、下りになっている通路を歩いた。徐々に温度が下がっているのが解る。

 やがて通路は行き止まりになると、そこには様々な種類の肉や魚が置いてあった。いずれも、凍らないぎりぎりの温度で保存されている。まさに貯蔵庫にするにはぴったりの場所だった。

 俺は、手近にあった何かの肉を取ると、急いでその部屋を出た。早く戻らないと、見張りの言った通り凍えてしまう。とても中でゆっくりなんてしていられない。

 俺は急いで広間へと向かった。あの見張りは、おそらくだが貯蔵庫の中で仲間が凍え死なない様にする為に居るのだろうと思う。

 火のそばへ行くと、俺はまず冷えた身体を温めた。そして、持って来た肉を枝に刺すと火であぶった。とてもじゃないが、正体の解らない肉を生のままでは食べられない。

「何だお前、肉を火で焼くなんて人間みたいだな」

 そんな俺の様子を見て、仲間のリザードマンが笑った。

「俺はこれが好きなんだよ」

 そう返すと、俺は火で熱をしっかり通した肉を食べた。何の肉だか解らないが、食えるだけマシだ。

「これ、何の肉だ?」

 俺が近くのリザードマンに聞くと、

「さあ?外に出た奴が適当に持って来るから、俺には解らない」

 と、曖昧あいまいな返事をした。

 すると、別のリザードマンが鼻先を突き出して、ふんふんと俺が持っている肉の匂いをいで言った。

「こりゃあ、犬だな」

「犬だって!?」

 それを聞いて、俺は少しびっくりしてしまった。

「ああ、そうだ。ここいらには野犬が多いからな。別に犬だって食えりゃいいだろ?」

 そいつは、「何か変なのか?」という顔で俺に言った。

 当然だろう。リザードマンにしてみたら、自分達以外の動物は、何だって食べ物になる。これまで俺は、(アンデッドを除く)どんなモンスターになっても、一応だが人間の食べられる範囲のものしか口にして来なかった。モンスターなら問題無く食べられる物でも、人間の精神がそれを受け付け無かったのである。

 それが、知らなかったとは言え、普通の人間なら決して口にしないと思われる、犬の肉を食べてしまったのだ。

「いや、俺は犬なんて初めて食ったよ」

 俺が言うと、

「そうか?まあ、貯蔵庫には色んな物があるからな」

 リザードマンは、特にそれ以上追求して来る様な事は無かった。

 腹を満たすと、俺は再びこの洞窟を調べ始めた。


 調べているうちに解ったのだが、この洞窟はどうやら火山脈に近い場所にあるらしい。その証拠に、飲む為の水場の他に、温泉とまでは行かないが、ぬるいお湯が湧きだしている場所があったからだ。リザードマンが身体を温めるには最適の場所だろう。

 そこでは数人のリザードマンがお湯に浸かっていて、俺にも一緒にどうだと勧めて来たが、俺はまだ洞窟の調査が終わっていなかったので、遠慮しておいた。

 俺が洞窟を調べていると、ある部屋で何かが光った様な気がした。良く調べようと思って、松明の灯りを向けると、俺は驚いてしまった。

 そこには、数千枚はあろうかと言う金貨の山と何点かの貴金属や装飾品、つまりお宝があったからだ。松明の灯りに、これらが反射したのだ。

(何で、こんな場所にこんな物が……?)

 俺はそう思って財宝を細かく調べたが、所有者に関しては何も手がかりが得られなかった。何せ、そこにある財宝には一貫性がまるで無くて、まさにそこら中からかき集めて来た様な感じだったからだ。

(手がかりが欲しいな)

 俺はそう思うと、さっきの温水へと向かった。空いている適当な場所へ身体を沈めると、何とも心地良い気分に包まれた。

 人間にはぬるいだろうけど、リザードマンには良い具合だった。俺は温水に浸かりながら、近くのリザードマンに話しかけた。

「なあ、この洞窟にある宝って何だ?」

「宝?ああ、あれか」

 リザードマンが言うには、自分達がここに移り住んだ時には、もうあったのだそうだ。リザードマンは、特に財宝に執着を持たない(全く無欲という訳でも無い)が、人間の方はそうでは無い。最近急に野犬が増えたのは、どこからか財宝の情報を得た人間が周辺をうろつく為、それにつられて増えたのだろう。

 しかし、どうやって人間は情報を掴んだのだろうか。俺はそれが気になって、財宝を調べてみる事にした。

「う~む……」

 俺は金貨を1枚つまむと、しげしげと眺めた。そして、右手でもう1枚つまむと、最初から持っていた1枚とかち合わせた。なお、リザードマンは大体が左利きなのだ。

「チン、チン」という、澄んだ金属音がした。純度の高い金を使用している事が解る。そして、保存状態も悪く無い。かなり長い年月、人の手に触れていないせいだろう。

(これはかなり年代物だな。アンティークとして額面以上の価値はありそうだ)

 自分で言うのも何だが、俺は冒険者の経験として、ある程度だが宝の目利きも出来る。リザードマンの財宝は、おそらくだが今は無いどこかの滅んだ国のものだろう。なぜなら、デザインが現存する金貨のものとは違うからだ。それに、混ぜ物の少ない純度の高い金を使用しているのは、今と時代が違う証拠だ。

 俺は、リザードマンに、金貨を持ち出してどこかで使ったかと聞いた。すると、行商人と取り引きするのに使ったと答えたのだ。

成程なるほどな……)

 俺はそれで合点が行った。

 リザードマンは、生活に必要な物をたまたま来た行商人から買った。リザードマンというのは、縄張りさえ侵さなければ、理由が無い限り無闇に人間を襲ったりはしない。行商人が敵意を見せなかったので、取り引き出来たのだろう。

 その時にこの金貨を使ったのだろうけど、この金貨を手に入れた行商人は、さらにこれをどこかで使ったか両替をしたと思われる。

 それを目端の利く奴が見つけて、財宝の情報が広まったのだと俺は考えた。

(しかし、洞窟=ダンジョンがあって、財宝があって、それを守るモンスターが居る。まさに冒険の場所としてはうってつけだな)

 俺はそう考えると、厄介な事になったものだと思った。少なくとも、冒険者の自分だったら間違い無く行きたくなる。

 幸いな事に、財宝の事やこの洞窟の事は、まだ完全にはバレていない。けれど、血気にはやる冒険者が、近いうちに嗅ぎ付けるであろう事が俺には予想が付いた。何せ、俺も冒険者だったからだ。冒険者の探究心と嗅覚は、決してあなどる事は出来無い。

(さてさて、一体どうしたもんかな……)

 俺は、何か上手い方法は無いものかと考えを巡らせ始めた……。

実は、リザードマンが左利きというのは定番のネタです。おそらくですが、コンピューターゲーム「ドルアーガの塔」が始まりだと思います。また、リザードマンというのは正式な出典が存在しない、比較的新しい種類のモンスターです。なので、他の由緒あるモンスターに比べると、割と自由にデザイン設定が可能です。だから、あまり細かい部分は気にしないで下さい。でも、ご意見はうかがいますので、どうぞお気軽に。

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