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覚める  作者: 秋
1/1

ちょっとしたドロップアウト


うっすらと目をあける。


たぶんドアが閉まる音で目が覚めたのだろう。ほぼ無意識に枕元においたケータイの画面を確認する。5時02分。父が家を出たのだ。まだ寝られる。


もう一度目を閉じる。


先月から父は仕事が変わり、出張が増えた。

今回のものは10日ほどの予定で、今までがせいぜい3日だったことを考えるとずいぶん長い。今日の早朝に家を出るからと、昨晩すでにいってらっしゃいと挨拶を済ませている。

今日は学校だ。6時半に起きなければと自分に言い聞かせながら二度寝を決めこむことにした。


無事6時半に起きて7時20分に家を出て7時34分の電車に乗り、8時25分ごろ、教室の扉を開ける。

いつも通り「おはよー」と近くの席の友人たちに声をかけながら席につく。廊下側のこの席は少し寒いが壁にもたれることができるため個人的に気に入っている。今日は終業式。黒板にはすでに今日の予定がデカデカと書かれていて、12時すぎには帰れるらしい。


余裕だ。


電光掲示板によると次の電車は12時32分。仲良くしている友人たちのほとんどは部活にいき、駅まで一緒にきた2人は違う路線なので別れたところだった。

お腹が空いていた。なにか買って帰ろうとお昼ご飯のことばかり考えて電車を降りる。駅前でハンバーガーを買った。ポテトが食べたい気分だったのと、期間限定の商品が少し気になっていたのだ。


リビング。テレビをつける。お昼休みの番組が終わり、13時ジャスト。あまり見たことのない平日のお昼の番組を見ながらハンバーガーとポテトを味わう。ゴミを片付け、晩ごはんは何を食べようか考える。忘れないうちにと、今日もらった通知表を、食卓の父の席に置いておく。父がこれを見るのはしばらく先だ。


薄暗い。ソファで寝ていたようだ。

目が覚めてからのことは、夢を見ているような曖昧さと妙に現実的な行動を併せ持っている。

台所に残っていた洗い物を片付ける。ベランダに洗濯物はない。雨戸を閉める。


財布とケータイと充電器。暖かいコートとマフラー。とりあえず、あとはどうにでもなるだろう。

現在、月曜日の午後7時。


はじめての日常からのドロップアウトは静かにはじまった。決めているのは、今日家に帰らないということ。


自分にとってはそれはまさに家出で、つまりは反逆だった。

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