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future diary  作者: 無駄に哀愁のある背中
1/1

0日目

     〇

 目前にあるその黒いノート三冊はどう見ても普通の日記帳だ。でも、どの日記の裏表紙には説明書が付いている。内容はどれも一緒でこの日記帳が“未来日記”をであることを指すものだ。


     △

 俺は自分でも言うのは間違いかもしれないが、好奇心が旺盛だ。そのためか、怪しい商品やそういう類が大好きだ。例えば、幸せになれる数珠、万病を治す水、金が増える壺等、絶対にありえないものほど、興味をそそられる。実際の俺は一人暮らしで(学費が安いので)国立大学に通い、授業と勉強時間以外のほとんどはバイトで埋め尽くされている貧乏学生であるがゆえ、それを実際に買う財力もなければ、そもそも買う気もない。ただ興味があるだけだった。そんな俺の趣味はそれに関連したもので、ぽっかり空いた休みは怪しい骨董品屋にほとんど金を持たずに行くことだ。今日も吉祥寺駅から徒歩30分、薄暗く怪しい骨董品屋についた。さて、ここは俺にどんな好奇心を与えてくれるのだろうか?

「いらっしゃいませ……」

 出た。怪しい骨董品屋名物、妙にシワが多くで不気味なババア。でも、今回のババアはレベルが違うな。右目が腫れているのか、シワなのかわからんがほぼ見えない。それでいて、鼻の横にある汚い黒子はくちゃくちゃになっている。これは怪しい商品を進みてくるぞ。

「お客様、なにかお探しでしょうか?……」

 来ましたテンプレ。次の言葉だいたいこれだ、「最近、いい商品を入荷しましてね、ヒヒヒ。幸せになれる数珠(仮)なんですよ……ヒヒヒ」、実際ここまで言ってくれれば俺としては満足すぎる。さあ来い、ババアその言葉をいうのだ。

「最近、いい商品を入荷しましてね、ヒヒヒ。可能性のある現実を引き起こす日記帳なんですよ……ヒヒヒ」

 いいねーテンプレ通り。最高な気分だ……うん? 幸せ系じゃないのか? 俺は好奇心に逆らえず、思わず聞き返した。

「あの、それは一体?」

 こういう質問は本当はタブーだ。なぜなら、買わせてしまう隙を作るからだ。

「ご興味が……? こちらはですね、僅かに可能性があれば、それを実際引き起こすことができる……“未来日記”なんて呼んでますがね」

「……いくらなんですか?」

「ヒヒヒ……三冊しか入荷できなくてね……一つ100円……どうするかね?」

 安い! 法外な値段を突き出されるのがセオリーなのに……思考は脳までは行かず口からそのまま言葉が出て行った。

「全部ください」


     〇

 そんなこんなで、このノートは俺の手元にある。さて、説明でも読むか……

1:これは明日の出来事記す日記帳です。決して、明日以外のことは書かないでください。また、書いたとしてもなにも起こりません。

2:明日とは夜中の0時以降を指します。例えば、一月一日0時0分に書いたものは一月二日の未来として存在します。

3:書いたことは僅かにでも可能性があれば、実際に起こります。しかし、記入はボールペンで。また、日付も書くのを忘れずに。

4:ページ数には限りがあります。一ページに一日、書く必要はありませんから、有意義にお使いください。

 それ以外の言葉はない。とりあえず、何かを書いてみないと始まらないな……では、書いてみるか。にしても、こんなものを買うなんて……安かったとは言え、俺にも焼きが回ってきたってことかな?

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