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第8話


「……」


 海城はちょうど日当たりの良さそうな窓がある上にちょうど仕切りの位置から周りからは見えにくい個室の様な形になっている奥の場所を見つけ、港を誘導する様に先を歩いていた。


 ぱっと見た感じの様子で行くと、他の客はどうやら出入口から近い場所を選んでいるからなのか奥の席をわざわざ選んでいる様な客はいない。


 それは多分、今の時間帯がランチ時というのも多少は関わっているのだろう。


 見たところ、出入り口から近くお会計の場所からも近い場所を選んでいるお客は財布を片手に出て来たような若い会社員が目についた。


 そして、少し離れた場所にいるお客は多分主婦でコーヒーなどを片手にちょっとした「息抜きのティータイム」といったところだろうか。


 でも、お店の店員からは「お好きな場所」と最初に言われたので奥の席を選んでも問題はないだろう。


 それに、見たところ店員を呼ぶには押しボタンを押せばいいらしく「いくら呼んでも来ない」といった事にはならなさそうだ。


「ふぅ」


 後ろで小さくため息の様な声が聞こえたが、海城はそれに気づいていないふりをした。


「……」


 それにしても……自分で呼び出しておきながらこうして実際に『港明海』と会ってみると、正直「意外だな」と思ってしまった。


 なぜなら海城は「もっと派手な見た目の女性が来る」と思っていたからだ。そうでなくてももっとこう……おしゃれな……と言ってしまうと港に失礼になってしまうか。


 しかし、それは港自身が分かっていたので多分海城が失礼を承知で聞いたところで「ああやっぱり?」と笑っていただろう。


 それはくらい小野寺が元々身にまとっている雰囲気やら、彼の学生時代のアルバムなどの過去を見たらみんな思う疑問なのだと港自身は分かり切っていた。


 だからこそ、彼女自身も『どうして彼は自分と仲良くしていたのだろう?』と謎だったのだ。


 ただ、実はアルバムの中に彼と港が一緒にいるところは一切写っていない。


 代わりに写っていたのは大体クラスの中心人物と思われる様な派手な見た目をした人たちとのものばかり。


 しかし、その笑顔はどれもどこかぎこちない印象は確かにあった。


 だからこそ「彼が心の底から本当の友達」と呼べる人たちは実はいなかったのではないかと思っていたのである。


「――いらっしゃいませー。ご注文がお決まりになりましたらそちらのベルでお知らせください」


 海城と港が席に着くと、それを見計らっていたかの様にトレイに水を入れたコップを二つ乗せた店員が颯爽と現れ、水を置きながら軽く説明をする。


「分かりました」


 店員が「ベル」と言って軽く手を指した押しボタンを視線を追って確認した海城が答えると、店員は「それではごゆっくり」と一礼をして去って行った。


 多分、一連の流れはマニュアル化されているのだろう。それでも流れる様な動きと説明に店員の「経験の長さ」が見て取れた。


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