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第18話


「はぁ」


 海城は事務所の給湯室で小さくため息をついた。


 小野寺の申し出から港ととの面会のお膳立てをした結果。


 無事に二人は面会する事が出来それ以降、小野寺は今までとは打って変わってこちらの質問に答えてくれる様になった。


 それは今までの反応とは雲泥の差と言っても過言ではない程の変わりようで、海城は申し出に答えてくれて良かったと今までにない感覚に若干の戸惑いすら感じた。


 そしてそれは警察に対しても同じで、彼らも若干の戸惑いを感じたらしく、思わず「あの面会でどういったやり取りがあったのか」と面会記録を思わず確認したほどだったらしい。


 しかし、二人の間で交わされた会話自体は何も問題はない。変わったのは小野寺自身の心情だろう。


「俺の中で色々と整理がついただけですよ」


 そんな周囲の反応を小野寺はニッコリとどこか余裕な表情で答えた。


 海城を含めた周囲の人たちからすれば「突然変わった」と感じるかも知れないが、当の小野寺本人がそう言っているのであればそうなのだろう。


 そして、そこから分かったのはやはり「小野寺は今回の一件に巻き込まれただけの人間だ」ということだった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 そもそも発端は小野寺が今回の鍵を握る彼女と再会した事にある。


 実は小野寺がアルバイトをしていたアパレルショップに彼女が訪れたのだ。


 偶然……と言ってしまえば出来過ぎなのかも知れない。しかし、二人は再会した。


「でも、最初はお互い気づかなかったんです」

「それはなぜ?」


「あまりにも変わり果てていたから」

「……」


 それは決して「化粧で……」という比喩的な意味ではないだろう。


 当時の彼女は自身の彼からかなりの搾取をされていたと聞く。それでいて日常的に暴力も受けていた。


 彼の言葉はいわばその結果なのだろう。


 確かに学生時代の彼女の写真と今の写真は随分と印象が違うものになっていたのは海城も知っていた。


「でも、彼女の名字も結構珍しくて……それでちょっと声をかけてみたんです『あの、ひょっとして……』って」

「で、その彼女だった……と」


 こうして二人は無事に再会を果たした。


 しかし、彼女はアパレルショップを訪れはするものの買いはしなかったと言う。


 お金の管理は彼にされていて毎日ギリギリな生活を強いられ、暴力にも耐えて精神的にも参ってしまい、気晴らしに見ていただけだったのだそうだ。


「とても……痛々しくて見ていられなかった。本人は隠しきれていると思っていたかも知れませんが、完全に隠しきれない傷がたまに見えるんです」

「……」


 普通に接客しているだけでもなかなか精神的に来るものがあるとは思う。しかし、それ以上に痛々しい彼女の姿は彼にきただろう。


 なぜなら――。


「正直、彼女の姿にはかなりくるものがありました。だって初恋の人がそんな姿。そんな事になっているなんて思いもしなかったので」


 そう、この時に再会した彼女こそが小野寺の初恋の人だったのである。

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