第13話
「それに、俺は『女子にモテていた』っていうのはちょっと違うな」
「へぇ、違うの」
港の記憶では女子。特に後輩は彼の事を慕っていた様に思う。
「うん。女子、特に同級生たちは俺がこんな見た目だったからって言うのもあるだろうけど『そもそも異性としては見ていなかったと思う』ね。後輩たちも似たような感じ。異性と言うより同性のお姉さんみたいに思っていたんじゃないかな」
「……」
言われてみると確かにそちらの方があの時の雰囲気は合っていたかも知れない。そして同級生の男子たちがそんな女子と仲の良い小野寺に近づいて来たのはもちろん自分たちもその輪に入りたいが為というのもあるだろう。
しかし、それだけでなく彼らとしては小野寺が「ただのイケメン」ではなく「女装男子」で女子に慕われていたという事も一つ大きな要因だった。
もし、小野寺と一緒にいた女子たちが小野寺の言う通りだった場合。男子たちは「最初から女子に異性として見られていないこいつは敵じゃないな」としてあくまで小野寺を「女子と話すための人員」と見なしていたのだろう。
「でも、そのおかげで楽しい学校生活だったんじゃない?」
「ハハハ。うん、おかげさまで」
小野寺は口ではそう言って笑いつつもどうにも作り笑い感が拭えない。それはきっと港が客観的に見た感想と実際にその輪の中にいた小野寺とでは感覚が大きく違っていたから。
「……」
「……」
でもそれはお互い分かり切っているからあえて何も言わない。言ったところで過去の事でしかないからだ。
「本当に楽しかったよ。みんなのおかげで……それはもちろん港のおかげでもある」
「それは良かった」
しかし本当に「楽しかっただけ」であればきっと小野寺は一日の学校生活で一番長い休み時間である昼休みにわざわざあんな場所を探す必要がない。
そもそもあの空き教室は……図書室だけでなく調理実習や美術。理科の実験と言った主要五科目以外で使われる教室ばかりがある棟の中にあった。
つまりわざわざ足を運ばなければ行く必要がない場所という事になる。
それなのに小野寺と港はその棟の中の使われていない空き教室で出会った。それはつまり二人とも「一人になりたかった」という気持ちの裏返しとも言える。
港は昼休みに騒がしくなりがちな教室にいるのが耐えられなくなって静かに過ごせる場所を探した結果あの場所に行き着いた。
そして小野寺は……いや、小野寺も似た様な理由だった。
「でも、周りに色々と変な勘繰りをされた時はちょっとイラっとしたかな」
「あああったねそんな事」
昼休みにだけに限らず班決めの時は一緒にやろうと動くとそれに対して「あ、二人ってもしかして出来てんの?」とか言って来る人間と言うのはどうしても一定数存在するものだ。
「それを港がキッパリ……言うよりむしろ過剰に反応せずにキョトンと『何言ってんのこいつ』みたいな顔で『いや、そんな訳ないから』って」
「実際そんな関係じゃなかったし」
そう、実際のところ港と小野寺はそんな恋愛関係なんかではなかった。それを周囲が勝手に、そして過剰に反応しただけに過ぎなかった。ただそれだけの話だったのだ。




