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第10話


「はぁ」


 次の日、港の姿は警察署内にある留置所にあった。


「……」


 ここにたどり着くまでの事を港は思わず振り返る。


 そもそもこういった形で……というより、そもそも警察署に来た事自体初めてだった港にとっては警察署の入り口の前から既に緊張しており、目に入る物全てが新鮮で思わず辺りをキョロキョロと見渡してしまっていた。


 それこそ周りから見た自分はただの不審者でしかなかっただろう。


 しかし、彼女自身が何か犯罪を犯したわけでもなければ被害者でもない。


 それでも不安になってしまう小心者な自分に若干の嫌気を感じつつ警察署に入って「受付」と書かれたカウンターへと向かうと、港に気が付いたのか髪を一つにまとめた女性の警察官が「どうかされましたか?」とカウンター越しに声をかけてくれた。


「あ、えっと。昨日こちらにお電話をして……その、留置所にいる人との面会を希望しているのですけど」

「その方のお名前をお聞きしても?」


「あ、小野寺。小野寺和樹です」


 ロビーの周りには様々な事情で警察署を訪れている人がそれなりにいた事も考慮して……と言うか、港は緊張のあまり小さく震える声で彼の名前を伝えると、その警察官は一瞬ピクッと反応した様に見えた。


「……かしこましました。運転免許証など何か身分を証明出来る物をご提示ください」


 しかし、すぐに何事もなかったかの様に尋ね、港も「は、はい」と言いながらいそいそとカバンから財布を取り出して免許証を出した。


 元々これに関しては昨日電話した時に聞いていなくても港は常日頃持っているので何も問題はない。ただたまにカバンの中で財布が行方不明になってしまうという難点はあったが、今回はすぐに見つけられた。


「失礼します」


 免許証を渡すと、女性の警察官は控えを取っていた。一応「念のため」だろう。


 そもそもなぜ昨日の今日で面会をする流れになったのかと言うと、喫茶店で会った「海城」と名乗る弁護士曰く「出来るだけ早く会って欲しい」と言われてしまい、港としてもそれに答えたいと思ったからである。


 今でこそ音信不通になってしまっていたが、やはり学生時代にそれとなく一緒にいた立場の港としても色々と思うところはあったのだ。


 そしてその場で小野寺のいる警察署に電話をかけて必要な物や面接が出来る時間帯などを確認して今に至っている。


 港の仕事は早番か遅番で分かれているのだが、早番はともかく遅番であれば大体午後二時からの出社なので休みかこの遅番であれば朝一の午前中であれば面会をした後でも仕事に向かう事が出来る。


 でも、一応面会時間は決まっているとは言えあまりバタバタはしたくないというのが本音ではあるが。


「お待たせしました。それではこちらにお名前とご住所。面会を希望される方とのご関係などの記入をお願いします」

「は、はい」


 警察官が渡してきた「面会票」を記入し終えると、港は不意に二人の警察官。いや、刑事と思われる人たちと目が会った様に感じた。


 港は知らなかったがこの二人こそ小野寺が関わっている事件を捜査している刑事だったのだ。


 今のところ警察はおろか自分の担当弁護士にすら口を割らない彼の初めての面会希望者。この二人がここにいるのは偶然「小野寺に面会希望者が来ている」という話を聞いたのかも知れないが、港からしてみると「なんか、やけに見られている」というのは港としては少し気恥ずかしかった。


 そもそもあまり人に見られるという事に慣れていないというのもあるが。


 しかし、二人は「どんなやつだろう」という興味もあったのかも知れない。


 それに加えて担当弁護士である海城だけに限らず警察側も「これをきっかけに何か話す気になるかも知れない」といった打算的な面もあったのだろう。


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