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EP 9

激闘! DIY無双 v.s. 悪徳業者

「やっちまえ! こんなガキ共、ひねり潰せ!」

 ガメオツの号令と共に、赤鬼組レッド・オーガズが一斉に襲いかかってきた。

 狭いリビングでの乱戦。

 普通なら絶体絶命の状況だ。

 だが、この家の住人は「普通」じゃなかった。

「陽太君、下がってて!」

 最初に動いたのはキャルルだった。

 彼女はトンファーを構えると、ニヤリと不敵に笑う。

「私のスピードに付いてこれる?」

 ヒュンッ!!

 キャルルの姿が掻き消えた。

 いや、違う。速すぎるのだ。

 100メートルを6秒台で駆け抜けるその脚力を、わずか数メートルの近距離で爆発させた結果、残像すら置き去りにするトップスピードへと至る。

「ああん? どこ行っ――」

 先頭のオーガがキョロキョロした瞬間、その懐には既にキャルルが潜り込んでいた。

「月影流――鐘打ち(カネウチ)!!」

 ガガガガガガッ!!

 轟音が響いた。

 キャルルは脚に濃密な闘気を纏わせ、超高速の連続回し蹴りを叩き込んだのだ。

 それはまさに、巨大な寺の鐘を丸太で打ち鳴らすがごとき重低音。

「ゴハッ!? グベッ!? ガハッ!?」

 鋼鉄の鎧を着たオーガたちが、紙屑のように吹き飛んでいく。

 一人で前線を支える小さな背中は、頼もしいなんてもんじゃない。

「次は魔法使い(私)の番ですわね」

 続いて、ルナが優雅に前に出た。

 彼女は世界樹の杖を掲げ、哀れむような目で敵を見下ろす。

「仕方有りませんわね。私は世界で有り天。天に唾を吐く事の愚かさを教えて上げますわ」

 ルナが杖を床(俺が直したばかりの床)に突き立てる。

「【森羅万象・強制発芽ワールド・バインド】」

 バキバキバキッ!!

 床板を突き破り、極太のツタや根が爆発的に伸びた。

 植物たちは意思を持つ蛇のようにオーガたちに絡みつき、その巨体を宙吊りにして締め上げる。

「グアアアッ!? なんだこの草は!?」

「ち切れない!? 魔力を吸われてるぞ!?」

 前衛はキャルルが粉砕し、後衛はルナが拘束する。

 完璧な布陣だ。

 そして、最後の一人が戦場に声を響かせる。

「わ、私も戦います! 歌でみんなを援護します!」

 リーザがミカン箱(どこから出した?)の上に飛び乗った。

 歌姫のバフ効果。これは期待できる!

「聴いてください! 『ハゲたぬきのポンポコ節』!」

「えっ?」

 リーザが朗々と歌い上げた。

「♪た、た、たぬきのお腹は ポンポコポンポン」

「♪月よ~月で~頭は ハーゲハゲでピーカピカ~」

「♪お尻はツールツル~ タマキンはマ〜ルマル~!」

「どんな歌だよ!!」

 俺は思わずツッコミを入れた。

 なんだその宴会芸みたいな歌詞は! 太郎国直伝か!?

 だが、効果は絶大だった。

 オーガたちが耳を押さえて苦しみ始めたのだ。

「ぐあああ! なんだこのふざけた歌は!」

「イライラする! 力が抜けるぅぅ!」

精神攻撃マインド・ブレイクか!? なんて卑劣な!」

「でも相手は嫌がってる! ナイスだリーザちゃん!」

「えへへ、それほどでも~♪ ソレ! ヨイヨイ!」

 戦況は圧倒的だった。

 残るは、顔色を青くして後ずさる社長のガメオツと、リーダー格の巨大オーガのみ。

「ひぃっ、バケモノかこいつら!? お、おい! やれ! この家ごと吹き飛ばせ!」

 ガメオツの命令を受け、リーダー格のオーガが巨大な鉄球を振りかぶった。

「ウオオオオ! 死ねぇぇぇ!」

 狙いは俺たちじゃない。このビルの大黒柱だ。

 あれを折られたら、ビルが倒壊する!

「させるかよ!」

 俺は前に飛び出した。

 手の中の【雷霆】が、ドクンと熱く脈動する。

 怒りのボルテージは最高潮だ。

『決めるぞ、若造!』

「おう! いくぞ雷霆!」

 俺は叫んだ。

 掃除も、修理も、もう終わりだ。

 ここからは「解体」の時間だ!

「【雷霆】――パイルバンカー・アルティメットモード!!!」

 カシャン、ガシャン、ギュイイイイン!!

 雷霆が複雑に変形し、俺の右腕を包み込む巨大な「杭打ち機」へと姿を変えた。

 先端には、紅蓮の稲妻を纏った極太のパイルが装填されている。

「な、なんだその武器はぁ!?」

 オーガが鉄球を振り下ろすより速く、俺は懐に飛び込んだ。

 狙うは、その分厚い胸板のど真ん中。

「ここから出て行けぇぇぇぇッ!!」

 ズドン!!!!

 炸裂音。

 俺がトリガーを引くと同時に、雷霆の全魔力を込めた杭が射出された。

 それはオーガの鋼鉄の鎧を紙のように貫き、衝撃波だけで背後の壁(また壁が!)を吹き飛ばした。

「ゴ、ベァァァァァァッ!?」

 リーダー格のオーガは、文字通り砲弾となって吹き飛び、ガメオツを巻き込んで空の彼方へと消えていった。

 キラーンと光る星になる。

「……ふぅ」

 俺はパイルバンカーから立ち昇る煙を吹き、構えを解いた。

『フン。少しは様になってきたではないか、相棒』

 雷霆が満足げに呟く。

 振り返ると、キャルル、ルナ、リーザ、そしてリベラが、呆然と、しかし誇らしげに俺を見ていた。

「さて……」

 俺は壊れた壁(本日二度目)を見て、苦笑いした。

「またリフォームしなきゃな」

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