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EP 5

迷子の破壊神、壁をぶち抜いて参上

 シェアハウスでの最初の夕食は、賑やかなものになった。

 俺が作った特製オムライスに加え、スーパーで買った惣菜やサラダが並ぶ。

 リーザは「美味しい、美味しい」と泣きながら食べ続け、キャルルも「陽太君、料理もできるなんて最高じゃん!」と俺の背中をバンバン叩いてくる(痛い)。

 食後の団欒タイム。

 リビング(元事務所)で、リベラが優雅に紅茶を淹れていた時だった。

 ズズズズズ……。

 不穏な地響きがした。

「ん? 地震か?」

「いや、なんか近づいてきてない?」

 キャルルが耳をピクピクさせた、その瞬間。

 ドガァァァァァァン!!!!!

 リビングの東側の壁が、豪快に爆発した。

 瓦礫が飛び散り、土煙が舞う。

 俺たちは悲鳴を上げてテーブルの下に隠れた。

「な、なにごと!? 敵襲!?」

「くっ、まさかもうリーザを追ってきたのか!?」

 俺が【雷霆】(今は孫の手モード)を構えると、土煙の向こうから、一人の少女が優雅に歩いてきた。

 金色の長い髪。宝石のような碧眼。

 神々しいオーラを纏った、絶世の美女――エルフだ。

 彼女は部屋の中を見渡すと、キョトンとした顔で言った。

「あら? ここはコンビニじゃなくて?」

 いや、どう見ても人の家だろ。

「ル、ルナ!?」

「あら、キャルルさんにリーザさんじゃない。奇遇ですわね~」

 キャルルが素っ頓狂な声を上げた。知り合いかよ。

 ルナと呼ばれたエルフは、手に持っていた杖(ものすごく高そうな国宝級の杖)を振って、瓦礫を退かしながら微笑んだ。

「コンビニで『新作スイーツ』を買おうと思って、真っ直ぐ歩いてきたのですけど……また道が塞がっていたので、ちょっと魔法で道を作らせていただきましたわ」

 彼女は悪びれもなく言った。

 なるほど、このエルフ。

 「障害物(建物の壁)があったから、破壊して進んだ」と言っているのか。

「ふざけるなぁぁぁぁっ!!」

 激昂したのは、大家のリベラだった。

「私のビルになんてことをしてくれますの!? これ、魔導コンクリート製の耐力壁ですのよ!? 修繕費だけで金貨100枚は請求しますわよ!!」

「まあ、怖いですわね。……お金なら、これで」

 ルナは足元に転がっていたレンガの欠片を拾うと、杖をかざした。

「【物質変換アルケミー】」

 カッと光った瞬間、レンガが純金の塊に変わった。

「これで足りまして?」

「なっ……錬金術!? ですが、それは通貨偽造罪に……!」

「あら、3日で元のレンガに戻りますけど?」

「じゃあただの詐欺ですわーっ!!」

 リベラが泡を吹いて倒れそうになった。

 このままでは殺人事件(リベラによるエルフ殺害)が起きかねない。

 俺は慌てて前に出た。

「待ってくださいリベラさん! 俺が直します!」

「陽太君!? でも、壁の大穴ですよ!?」

「任せてください。……穴が開いたなら、それを活かせばいいんです!」

 俺は雷霆を構えた。

 相手はコンクリートと鉄筋。生半可な工具じゃ歯が立たない。

 ならば、最強のパワーが必要だ。

「いくぞ雷霆! 形状変化トランスフォーム!」

「【雷霆】――魔導インパクトドライバー・モード!!」

『だからっ! なぜ我を武器として使わんのだ貴様はぁぁぁ!!』

 雷霆が嘆くが無視だ。

 ガシュン! と変形した雷霆は、巨大なドリルビットを備えた無骨なドライバーになった。

「うおおおおおっ!」

 俺は破壊された壁の断面にドライバーを突き立てた。

 ギュイイイイイーン!!

 凄まじい回転数とトルク。鉄筋すらバターのように切断し、断面を綺麗に整えていく。

 さらに、買い置きしていた木材と端材を組み合わせ、ビスを高速で打ち込んでいく。

「ここをこうして……棚板をつけて……!」

 俺は単に穴を塞ぐのではなく、破壊されたスペースを利用して「壁面収納棚」を作り上げた。

 最後に、余っていたペンキで綺麗に塗装する。

「完成! 名付けて『見せる収納・ウォールシェルフ』!」

 ものの十分足らず。

 無残な大穴は、お洒落な飾り棚へと生まれ変わっていた。

「す、すごいですわ……。元よりお洒落になってます……」

「へぇ~、陽太君って本当に器用だねぇ」

 リベラとキャルルが感心する中、一番目を輝かせていたのは破壊した本人、ルナだった。

「素晴らしいですわ! 私の壊した壁が、こんな素敵な家具になるなんて!」

「いや、壊さないでくれるのが一番なんだけどね……」

「決めましたわ!」

 ルナは杖を高々と掲げ、宣言した。

「私、ここに住みます!」

「「「はぁ!?」」」

「だって、私が壊しても、この人がいればすぐに直してくれますもの! それに……」

 ルナはテーブルに残っていたオムライスを指差した。

「それ、とっても美味しそうな匂いがしますわ。一口いただきまして?」

「あ、どうぞ。まだ余ってるから」

 俺が皿を差し出すと、ルナは一口食べて――震えた。

「んんっ……! なにこれ、世界樹の果実より美味しいですわ!?」

「よし決まりです! 家賃は払います(本物の金貨で)! 今日から私も混ぜてくださいな!」

 こうして。

 格闘家ウサギ、悪徳弁護士、貧乏アイドルに続き。

 方向音痴の破壊神エルフが、俺たちのシェアハウスに加わることになった。

 ……人口密度と破壊リスクが、急上昇した夜だった。

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