EP 15
アイドルの矜持! 新曲『ラブ&マネー』完成
シェアハウスに戻った俺たちは、すぐさまリビングで「リーザ・スーパーアイドル化計画」の作戦会議を開いた。
「いいか、リーザちゃん。君には才能がある」
俺はホワイトボード(廃材で作った)にマジックで書き込みながら熱弁を振るった。
「透き通るような歌声。守ってあげたくなるルックス。そして何より、王族でありながら雑草(パンの耳)を食べて生き延びたという強烈なストーリー性だ!」
「は、はい……! 雑草は食べてませんけど!」
「だが、今までは『プロデュース』が足りなかった。ミカン箱の上で、アカペラで歌うだけじゃ、客は立ち止まらない」
俺は昨日のファミレスで書き留めたメモをバシッと貼り付けた。
「必要なのは、衝撃だ。清純派な見た目とのギャップ……そう、人間の本能を揺さぶる欲望の歌!」
そのタイトルは――。
「新曲タイトル……『ラブ&マネー』だ!」
リーザがポカンと口を開けた。
「ら、ラブと……マネー……?」
「愛と金ですの? ずいぶんと直球ですわね」
リベラが眼鏡を光らせてニヤリと笑う。
俺は頷いた。
「ああ。リーザちゃんが一番欲しいものは何だ?」
「えっと……みんなとご飯を食べるお金と……みんなと一緒にいたいという気持ち(愛)、です」
「だろ? 自分の心に嘘をつかない歌こそが、人の心を打つんだ!」
俺は腰の【雷霆】を手に取った。
作曲には、正確な音程とリズムが必要だ。
(頼むぜ相棒。次は楽器だ)
『……主よ。我は武具だ。断じて鳴り物ではないぞ』
(神の雷は、音をも操るはずだろ? 最高のビートを刻んでくれ!)
『……フン。貴様の無茶振りにも慣れてきたわ』
「形状変化!」
「【雷霆】――魔導シンセサイザー・モード!!」
ピコーン♪
雷霆が鍵盤とスピーカーを備えた、近未来的なキーボードへと変形した。
俺は鍵盤を叩き、太郎国で流行っていた「シンセポップ」のリズムを流し始めた。
ズン、ズン、チャッ! ズン、ズン、チャッ!
アップテンポで、キラキラとした高揚感のあるビート。
自然と体が動き出すようなリズムだ。
「わぁ……! すごい! 音が弾けてます!」
「これに合わせて歌うんだ。歌詞はこれだ!」
俺は歌詞カードを渡した。
リーザはそれを読み上げ……顔を真っ赤にした。
「こ、これを私が歌うんですか!? 『愛!アイ!マネー!』って……!」
「そうだ! 恥ずかしがるな! あざとく、可愛く、そして貪欲に歌うんだ!」
リーザは深呼吸をした。
そして、瞳を閉じる。
彼女の中に眠る「シーラン国の歌姫」としての誇りと、「タローマートで培ったハングリー精神」が融合する。
「……やってみます!」
イントロが流れる。
リーザがカッと目を見開き、マイク(雷霆の付属品)を握りしめた。
「♪愛!アイ!愛!アイ!ラ〜ブラブ!」
「♪マネー!マネ!ローン!ダーリン!グ!」
――衝撃だった。
いつもの儚げな声じゃない。
脳髄に直接響くような、甘く、かつ力強い「あざと可愛い」ボイス。
プロのアイドル顔負けの歌唱力が、チープになりがちな歌詞を「芸術」にまで昇華させている。
「すごい……! これならイケるよリーザ!」
「本物の歌姫ですわ……。鳥肌が立ちました」
キャルルとルナが絶賛する。
俺も鍵盤を弾きながら震えた。
これだ。この素材がいれば、世界を取れる!
「よし! 曲は決まりだ! 次は役割分担だ!」
俺はホワイトボードに書き込んだ。
プロデューサー兼 舞台監督: 月田陽太
振付師兼 トレーナー: キャルル
演出(照明・特効): ルナ
マネージャー(金庫番): リベラ
主演: リーザ
「キャルルはリーザに体幹トレーニングとダンスを教えてくれ。ルナは魔法で派手な光とスモークの演出を。リベラは広場の使用許可と、集金管理だ」
「任せて! スパルタでいくよー!」
「光ならお任せくださいな。目くらまし(フラッシュ)はお手の物ですわ」
「ふふ、収支計算なら任せてください。脱税はさせませんわよ?」
チームが一つになった。
リーザが感極まったように、潤んだ瞳で俺たちを見る。
「皆さん……私のために、こんなに……」
「水臭いこと言うなよ。俺たちはシェアハウスの家族だろ?」
俺はリーザの頭をポンと撫でた。
「さあ、忙しくなるぞ! ライブは3日後だ!」
こうして、「パンの耳」卒業を賭けた、史上最大のアイドルプロジェクトが始動した。
だが、その前に一つ、大きな問題があった。
「……陽太さん。広場の使用許可は取れましたけど、あそこ、ただの平地ですわよ? ステージなんてありませんわ」
リベラの指摘に、俺はニヤリと笑って【雷霆】(今はキーボード)を叩いた。
「ないなら、作ればいい」
俺の目は、完全に「職人」の色をしていた。
「DIYで、最高のステージを組み上げてやるよ!」




