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冬虫夏草  作者: アジ
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1.電車

私の実体験です。ご注意ください。

京王線の電車に乗って、窓際に立つ。

2時間かかる通学に慣れたこの体は、とうてい昨日と同じものとは思えない。窓に反射した女と目が合う。どれだけ化粧しても隠せない青クマ。太陽の光に沿って顔の角度を変えると、少しだけマシな顔に見えた。

____バン!!そのとき、電車がトンネルの中に入った。扉を叩いて風を斬る。


「ぎゃあ!!」


私が叫んだ。はっとして口元を抑え、辺りを見回す。私以外に驚いている人はいない。みんな手元の携帯に釘刺しだ。でもそのうち、同じ大学生の2人組と妊婦だけが私の叫びに気づいたらしい。じっとこっちを見ている。


(ああ、クソが。また叫びやがったな。)


ドクンドクンドクンドクン、ガタガタガタガタガタガタ


動悸がする。手が震える。あーだかうーだか喚いてしまう。そのうち、妊婦の人が心配そうにこちらに近づいてきて、「大丈夫ですか?」と小声でこちらに呼びかけた。どうやら私はその場で蹲ってしまったらしい。ああ、なんて上手くいかないのだろう。たかが電車の音なのに。


妊婦の人の膨れたお腹が、ぼやけた視界に写った。そこにはたしかに生命が宿っている。守られるべき、神聖で美しい命が。

私とは違う身体。私とはかけ離れた、命が。

ご愛読ありがとうございました。

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