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辺境三若記  作者: 芳美澪
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47話 資金

国王急死の報を受けて男爵家領地は大騒ぎになった。とはいえ、それ以降の続報はない。今は帝国との戦争中なのだから、情報を秘匿するのは当然だろう。原因が病か他殺か、仮に分かったところで俺にできることはない。せめて父と長兄が無事に帰るよう祈るしかない。窓の外では細かな雨が降り続き、石壁をつたって黒い筋を作っている。どうせ降るなら一気に降ってほしい。しとしとと、じわじわと広がっていく水の跡が、妙に今の情勢と重なって嫌になる。


……だからこそ、少しは前向きなことを考えよう。金のことだ。


俺が自由にできる資金は二つある。城から毎月渡される支援金、そして砦衆が稼いだ資金だ。どちらも石壁に囲まれた館の地下に保管してある。発見した地下室は最初こそ物置にしようと言われたが、砦衆から「資金の置き場がない」と泣きつかれ、最終的には資金庫に改装された。石壁の冷気に包まれた暗がりに、革袋や木箱が積まれている様子は、まるでちょっとした財宝の隠し部屋だ。


資金の管理に関してはうさ耳が行ってくれていたが、最近では砦からの資金も増えつつあり、管理が分散気味だったので結果的には良かったような気もする。今ではうさ耳と委員長がきっちり管理してくれている。委員長はその辺しっかりしてるからな。ただ、逆に俺が内緒で使うのも難しくなったという問題もあるが。


さて、では実際いくらあるんだというところだが、数えてみれば――十金貨前後だ。子爵家のひと月分の資金に匹敵する額らしい。……正直、驚いた。思った以上に金は集まっていた。小さな砦を養うには十分で、五十人の兵を雇うことすらできる。だが、これが全財産でしかないのも事実だ。



収入に関しては、まず男爵家本邸からの支援金だ。少ない月で金貨一枚、多いときで二枚。館の維持費や使用人への給金も含まれているので、俺が自由にできるのは銀貨数十枚程度にすぎない。


砦からの収入は、人足仕事が大きい。額はそこまでではないが、月に五~十銀貨が安定して入ってくるのはありがたい。それに商人との取引もある。砦で作った品を売って数銀貨。魔物素材の販売は臨時収入だ。数か月に一度あるかないかだが、当たりを引けば金貨数枚になるので馬鹿にはできない。


もちろん支出もある。砦には百人近くが暮らしているが、基本は自給自足なので外から買うのは香辛料や鉄、状況に応じて食料の補充くらいだ。


客観的に見れば――城からの支援金頼みの状況が続いている。黒字になる月もあれば赤字になる月もある。そんなところだ。そんな中でもこれだけの貯蓄があるということは少なからず使用人や砦衆に節制を強要しているからなのだろう。情けない指導者で申し訳ない。


だが、ここからの伸びしろは大きい。まず人足仕事。半年前までは『欠け人が混じっている』と値切られることも多かったが、今では立場が逆転している。技術や知識、連携力が上がり、むしろ「またきてほしい」と言われるくらいだ。戦争中で需要は減っているが、戦が終われば復興需要が来る。稼ぎ時になるだろう。


次に生産物の販売。これも最初は趣味レベルの土細工や木彫りばかりでほとんど売れなかった。だが今では鉄製品も作れるようになり、品質も上がっている。さらに加工品の販売も始めた。収穫物をそのまま売っても大した利益にはならないが、加工して付加価値をつければ少量でもまとまった額になる。売上は確実に伸び始めている。


収入面に関しては他にも検討したほうがいいだろう。次兄との連携により、砦は大きく発展しているが、それと同時に各種の投資も行っているからだ。施設や装備の強化、臨時で冒険者を雇う可能性を考えれば現状の資金では不安がある。


では、どうやって稼ぐかだ。パッと思いつくのは……物を売る。お金に稼いでもらう。嗜好系の商売とかだろうか。


物を売るのは今でもやっている。視点を変えた物売りが必要になってくるな。新製品の販売、交易とかだろうか。例えば俺が目指す石鹸の販売とか。錬金、商人の伝手が出来ればやれそうではあるな。交易も同じか……懇意にしている商人は増えてはいるが、腹を割って話せる商人が欲しいな。


お金に稼いでもらうというのは、要は貸付や投資だ。ただ、これは契約とか仕組みが重要になるし、そもそもそれを守ってもらう制度も必要になるので難しい気がする。自分の知識のなさを痛感する。もっと勉強しておけばなぁ。


最後は嗜好系だ。これは単純明快で、何時の時代、どんな世界でも人は娯楽を求めている。金、女、酒。他にも趣味に関わる物とかでもいいな。楽なのは前者か。楽ではあるが間違った方向で展開すると、俺や砦への印象や認識が低下する恐れがある。下手をすれば貴族としての立場も危うくなるだろう。やるなら砦とは切り離してやった方が良い気がするな。


色々と考えはするものの、どう実現するかが明確にならない。知っている事と、実現できるかは別なのだ。実現するための知識がなさすぎる。委員長が言っていた理想的な指導者にはほど遠いようだ。


情けない思いに駆られていると、戦況についての報告が来た。南方侯爵が遂に動いたらしい。ようやくなのか、いまさらなのかわからないが。逆になんで今頃? という疑問もある。現状、北方侯爵は劣勢に追い込まれているらしい。それを見越した動きなのだろうか?


軽い自己嫌悪に苛まれるが、まあ、所詮俺だし。と思うことで払拭する。情勢も読めない、良い方針も思いつかないし、雨も止まないし。せめて天気ぐらいは晴れになってほしい。

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