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辺境三若記  作者: 芳美澪
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46話 戦況

王国軍と帝国軍の先方隊が激突した。その報が届いてから数日が経った。あれ以降、毎日のように続報が砦衆から届けられている。こちらが思っている以上に戦況は進んでいるようだ。父と兄が出立してから数週間しか経っていない。早すぎるというのが俺の印象だ。とはいえ、時間は止まってくれない。現状を整理するために、砦で報告を聞きに来た。


「互いの先方隊の戦いは引き分けだったそうだな」


「はい、互いに決め手を欠いて、共に下がったそうです」


次兄の問いに砦衆の頭が答える。戦況に関してはまず、砦衆から速報がくる。その後、王国にいる父と兄から手紙が来るので答え合わせができるのだが、砦衆の報告はかなり正確だ。現状では誤報はない。相変わらずの情報力に恐怖さえ感じる。いまでは兵士の中にも砦衆と繋がっている者がいるらしい。


なぜ、そんなことができるかは聞いてみれば簡単だった。砦衆は独自に資金を稼いでいる。今ではかなりの額を持っている。その資金はすべて俺の館。石壁に囲われた地下を利用し始めた。その金を使って浮浪者や乞食に施しをして情報を集める。兵士たちも同様だ。金に困っている奴は多い。そんな奴らに多少の金を握らせてこちらに情報を流させているのだ。


「父と兄は?」


「前線には出ておらず、後方支援を担当しているようです」


「で、あれば一安心か」


本来であれば王国の為に前線に出て活躍すべきなのだが、現時点で得られた情報を纏めると今回の戦いは不穏すぎるのだ。


「南方侯爵は動いていないのか?」


「はい、南方侯爵、伯爵様共に王都付近に駐在しております。報告によれば侯爵様自身は自領の城にいるとか」


「馬鹿な。王国の危機に自分は出向かないなどあり得ぬ」


その通りだ。王国と言っているが、うちは北方侯爵と南方侯爵の二強だ。むしろ侯国に近い。更に言えば北方侯爵だけが戦って戦果を上げたら、力関係が大きく変わるのだ。ここで前に出ない理由がない。


「南方貴族は行動が乱れていますな。北方は侯爵様の元に纏まっており、士気も高いとか」


相談役がこぼす。これも砦衆からもたらされた情報だ。


「このままでは我が男爵家の立場も危うくなるな」


次兄の独白に似た言葉に誰もが頷く。うちも南方に属しているのだ、このままいけば北方貴族が幅を利かせて南方貴族家の肩身は狭くなる。


「それから……あの件もどうやら事実だったようだ」


次兄が手紙を差し出して言う。あの件とは砦衆から報告のあった件だろう。「帝国は魔物を使役しているようだ」

最初聞いた時は耳を疑った。魔物を? どうやって? そんなこと可能なのか? だが、疑念は真実に変わった。父と兄からの報告では先方隊がその事実を目の当たりにしたそうだ。王都でも大騒ぎになっているそうだ。


「まだ信じられませんな……魔物を使役するなど……もし可能だとすれば対応できるのでしょうか」


相談役の声に、次兄も苦い顔をした。次兄たちは魔物たちの強さを肌身で感じているのだ。それだけではない。魔物の利点は戦力もそうだが、潰しが効くのだ。魔物に勝てたとしても、その後ろに控えている帝国兵たちまでも相手にするとなると難しいかもしれない。


「王都には中級魔法を扱える部隊もあると聞きます。きっと押し返してくれるでしょう」


期待するような声だったが、誰も同調しない。重くるしい空気が場を支配していた。ふと、頭が入口を気にするような仕草をした。集会所の入口でこちらを伺う様な男が見えた。


「失礼します」


そう言って頭が入口へと向かい、一言二言会話をし、こちらに戻ってくる。表情を見るに何かが起こったらしい。


「報告します」


言葉が重い。何が起きた。


「国王が急死したとのことです」


「馬鹿な! なにがあった!?」


次兄が椅子を蹴立てるように立ち上がる。


「王都内でも公表はされていないようです。急死の理由もまだ掴めておりません。城内部からの情報との事なので可能性は高いかと」


砦衆の頭が言葉を選ぶように告げた。城の内部にも繋がってるのか。という驚きもあるが今は置いておこう。


俺は思わず眉をひそめる。――国王は飾りだ。そう考えると今回の戦況に影響は出ないはずだ。多少は出るかもしれない。だが、飾りとはいえ、それが無くなることの影響力は大きいはずだ。王子、それに二人の侯爵がどう動くのかが問題だ。今まで通り、王子を飾りとして二人の侯爵が支えていくのであれば問題はない。そうでないとしたら?


急死の理由にもよる。心筋梗塞、脳卒中といった病死なのか、それとも意図的な事なのか。


「城に戻る」


次兄が立ち上がり、こちらを見た。「すまんがここは頼む」

そう言い残して足早に去っていった。


状況が状況なだけに城を空けるわけにはいかないだろう。この後、どうなるのか。俺に情勢を読む力があればな。そう願わずにはいられなかった。

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