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辺境三若記  作者: 芳美澪
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24話 王国

俺が住む辺境は王国の最南端にある。地図で見れば端っこも端っこだ。王国は「国王の下に侯爵、伯爵、子爵、男爵」となっている。まあ、実態的には王様にそこまで実権はない。要はお飾りらしい。王国の象徴という体にはなっているがそれも怪しい。


じゃあ誰が偉いかというと、侯爵になる。しかも二人いる。北方侯爵と南方侯爵。この二人がそれぞれ派閥を持っていて、王国はざっくり北派と南派に分かれている。北は改革派、南は保守派。で、俺が居る男爵家は南方に属しているので自動的に南派となる。


北方侯爵は改革派というだけあって新しいものが好きらしい。制度、商業、錬金術、魔法学を推進し、北の帝国とも独自に交易を行っている。そんなこともあって有力な伯爵や子爵が集まっているらしい。羨ましいことだ。


対して南方侯爵は保守派だ。伝統、軍といった印象がある。所謂、昔ながらの貴族たちの集まりだ。その為、魔法とか錬金術とかはあんまり好きじゃないらしい。そんな感じなので古い貴族たちが多いので人材的にも圧倒的に北派に負けているらしい。


さて、なんでいきなりこんな話をしているのかというと、それにはちゃんと理由がある。まず一つ目だが、今日は城からうちの館に視察が来ている。うさ耳の上司にあたる執事だ。


「かつて、北方侯爵様は南方侯爵様と共に帝国と三度の戦いを以って打ち払った輝かしいご経歴がございます」


俺の前で講釈を垂れ流している。まあ、聞いたのは俺なんだが。


「御労しい南方侯爵様は我が王国の伝統をお守りしようと御心を痛めているのです」


話が長い。要は南方侯爵は伝統を重んじるばかりなので貴族への求心力が落ちているってことらしい。伝統は大切だと思う。でもだからと言って新しい物を取り入れないのは停滞を招く印象がある。


「我が男爵家は南方侯爵様の呼びかけに応じ、帝国との決戦にも参加した事もございます」


何十年前の話だ。そろそろ止めないといつまでも続きそうな気がする。


「なるほど。良く分かった。また色々聞かせてくれ。それで、視察のほうはいいのか?」


「おっと、つい熱がこもってしまったようですな。失礼いたしました。ですが、三若様が王国の歴史に興味をお持ち頂き大変嬉しく思います」


こいつはうちの使用人の責任者ではあるのだが、俺はあまり好きではない。理由? そんなの決まってる。俺にうさ耳を押し付けた張本人だぞ。


「特に問題はないようですのでご当主様には問題無いとご報告いたします」


本当かよと内心訝しむが口には出さない。


「それでは私はそろそろ失礼させて頂きます」


そういうと館の出口へと向かいつつ、「しっかりとお仕えしないさい」と、うさ耳に呟いた。大きなお世話だっつーの。


何しに来たんだと思いつつ自室へと戻る。机の上には大量の羊皮紙が置かれている。これがもう一つの理由だ。砦から貴族関連の情報が大量に送られてきたのだ。


安くはない紙をこんなに大量に使って送られてきた時は目が飛び出るかと思った。最近、砦は羽振りいいからなぁ。


で、内容は以前に頼んだ貴族の娘の情報なのだが、補足も大量にある。むしろ補足の方が多いと言っても過言ではない。娘の容姿、性格、嗜好にはじまり家族構成、それぞれの特徴や注意事項などがびっしりと書かれている。中には北方侯爵側のもあるのだ、最初見た時はどこの誰かわからなかった。これを見るだけで砦のやつらの情報網の広さが分かる。つまり、王国の半分以上ってことになる。「難民や浮浪者、乞食がいない場所はない」とかつて頭が言った言葉を思い出す。


さて、綺麗にまとめられたこの書類たちだが、最初に見た時に違和感があった。難民にこんなにきれいに文字が書けるのかという事だ。確認したら、頭は元貴族に仕えていた家将だったらしい。家将の家に生まれたが、家を飛び出したらしい。さすがに詳しくは聞かなかったがそれなりに教養があるという事だ。人は見かけには寄らないとはこのことだ。


まあ、余談はそれぐらいにして、問題はこの情報の多さと内容になる。目についた内容を軽く読み上げてみる。


南方侯爵家に連なる某伯爵家のご令嬢は、見た目こそ麗しいが男勝りで使用人泣かせらしい。さらに恋多き女性としても知られ、気に入った若い子を囲っているとか。羨ましい。家族側にもちょっと問題があるらしい、お父さんの伯爵はここ数年で宗教にハマりぎみっぽい。何かにつけて司祭に助言を求めているらしく、それもあって伯爵領内はうまく行っていないそうだ。


同様に南派子爵のご令嬢は二人いるらしい。どちらも特筆するほどの話はないらしい。下の娘がうちに縁談絡みで手紙を送っているそうだ。男爵が子爵のご令嬢と結婚って問題はないんだろうか?まあ、送ってきてるんだから問題ないのか。ああ、ここの子爵様は愛人がいるのね。おおう、しかも獣人族の愛人なのね。なるほど。良い趣味だ。とはいえ、奥さんには内緒っぽいがバレるのも時間の問題と。バレても子爵とかなら問題ないんじゃないの? という疑問はある。奥さんが鬼嫁的な感じだとやばいのかな。


と、言った感じで情報が書かれているのだ。ちなみにこれはほんの一部だ。すさまじいな。これスキャンダルなんじゃないの? 壁に耳あり、障子に目ありとはこのことか。まあ、正直、その辺にいる乞食なんて貴族や兵士は気にしてないだろうしな。迂闊な会話は全部彼らに聞かれているという事だ。


いくつか気になる令嬢の報告もあった。ただ、正直、文や人伝の情報なので真偽のほどが不明だ。是非とも見て見たい気もする。そうなると次はどうやって会うかと、貴族以外の女性との出会いをどうするかだな。何かいい方法があればいいんだが。

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