第6話 『魔法とは、私達が理解できない科学の事である。』
魔法=ロマンの塊(作者の偏見)
「この辺りでいいのぜ。」
そう言うと魔理沙は、地面に魔法陣を展開する。
「その魔法陣の真ん中に立ってくれなのぜ。」
「了解。」
「・・・・・・・・・。分かったのぜ。」
「え?もう?」
「ああ。キョウの適正は『光』と『水』だぜ。2つも適正があるんだ。喜んだ方がいいのぜ。」
「ちなみに魔理沙は?」
「私は『光』と『星』だな。」
確かに、言われてみれば魔理沙は星型の弾幕を使用していた。スペルカード名にも星に関する名前が含まれていた。それにしても---
「魔理沙も2つなのか?じゃあかなり凄い感じか?」
「普通は適正が1つあったらそれを極めればいいのぜ。でも、2つあれば組み合わせて複合魔法が作れる。ただ、2つともしっかり使えるようにしなきゃダメだから必ずしも適正が多い方がいいって訳じゃないのぜ。つまり、ぶっちゃけ適正が1つでもあれば凄い方なのぜ。魔法を使えるのは生まれながらに魔法使いっていう種族の奴と偶然適正があって人間のまま魔法使いになる奴の2種類だな。前にも説明したと思うが、私とキョウは後者だぜ。」
「なるほど。じゃ、満遍なく使えるようにしとけばいい感じだな?」
「そういうことなのぜ。」
「分かった。じゃ、八卦炉を直すから、貸してくれ。」
「ほい、これだぜ。」
キョウは八卦炉を興味深そうに観察する。八卦炉は所々が熱によって溶けていたり焦げたりしていた。
「...。思ったより酷いな。さっきは軽く見せて貰っただけだったし、こりゃ直せるかどうか...。」
「おい、ここに来て無理とか言わないよな!?」
魔理沙が涙目でキョウに尋ねる。
「いや、でもこれは...」
「嘘だろ!?」
「ああ。嘘だ。」
「へ?」
魔理沙が面を食らったような顔をする。
「いや、悪い。魔理沙がかなりいい反応をしたからついな...。こんくらいだったら1日あれば直せる。魔力関連のとこ以外なら。」
「何だよ!驚かせやがって...。直せるんだな?」
「ああ。問題ない。素材については、アテがあるんでね。」
「それって...。」
「そう。俺の鏡を加工する。」
「それ大丈夫なのか?キョウの鏡は魔法も跳ね返せるんだろ?」
「大丈夫。鏡が反射できるのは鏡が綺麗な時だけだからな。あくまで鏡は素材だ。表面の銀の塗装だけ剥がしてしまえばいい。」
「そんなことできるのか?」
「さっき能力の検証をしたろ?そん時に試したんで、銀を剥がした鏡---つまりガラスが大量にある。なんでこんなもんが空中に作れるかは未だに謎だが、これは現代科学では解ける気がしないな...。」
「ガラスって、あの透明なやつか?私にはすぐ割れるイメージしかないんだが。」
「ガラスなめんなよ。ガラスは引張強度こそ耐性が低いものの、高い熱耐久性と経年劣化への耐性、加工のしやすさ、化学的な安定性があり科学じゃ必要不可欠な万能素材だ。」
「つまり?」
「八卦炉を地面に叩きつけたりとかして物理的な衝撃を与えない限り、壊れることは99%無ぇってことだよ。さっきみたいなオーバーヒートも起こりずらい、安心安全の八卦炉の完成だ。」
「マジでか!助かるのぜ!これでマスパ打ち放題だぜ!」
「打ち放題とは言ってねーよ。さすがにガラスと言えど、あんな火力の技を連発してたらいつか限界が来る。1週間、は言い過ぎか。1ヶ月毎にメンテナンスした方が良い。」
「了解なのぜ!じゃあ早速作ろうぜ!」
「待ってくれ。俺が作れるのは魔力関連のとこ以外だ。魔力のことを教えてくれねーと話にならないぞ。」
「そうだったな。魔力っていうのは、魔法を使う為のエネルギーだぜ。魔力は普通自分の体内にあるものを使うぜ。魔力は一定時間で回復するけど、一度に使える魔力には限りがあるのぜ。」
「...。質問なんだが、魔法ってどうやって使うんだ?」
「魔力を魔法陣の形にこねくり回すイメージで使うのぜ。魔法陣ができると、魔法陣に使われた魔力の分だけ魔法が行使できるんだぜ。」
「ん?じゃあ八卦炉には何を組んであるんだ?」
「威力増強とマスパの元となる術式だぜ。その術式を構築しやすい様な構造になってるのぜ。具体的に言うと2つの術式を組み込んだ魔法陣を小さくして魔力を流すだけで発動する状態にしたものをを発射口に入れてるだけだぜ。」
「要するに、その魔法陣を作ればいいんだな。」
「いや、それはもう作った、と言うより替えがあるんだぜ。」
「...。それじゃ、もう完成みたいなもんじゃねーか。」
「・・・・・・。あ。」
(思ったより早く修理出来そうだな。)
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「これで...ヨシっと。終わったぞー。」
「早っ!?もう終わったのぜ!?こーりんでもこんなに早くはできないのぜ...キョウ、お前って、結構凄い奴だったのぜ!?」
「だから『直せる』って言っただろ?モデルガンを1から作ったこともあるからな...。……!!」
「どうした?」
「いや、素材が集まったら銃を作ろうと思っただけだ。」
「銃?」
「ああ。ただ、ガラスだけじゃ無理だな。どっかに素材があれば...」
「じゃあ、私の家来るか?」
「良いのか?」
「これもお礼の一環だぜ。」
「助かる。ついでに魔導書とかもあるか?借りたいんだが。」
「おう。良いぜ。ちなみに話は変わるが、異変は1週間後あたりに来るって霊夢が言ってたぜ。『そんな気がするわ。』って。」
「『そんな気』か……博麗の巫女特有の、勘ってヤツか?」
「多分そうだぜ。私の予想より、霊夢の勘の方が当てになるから、異変はそのくらいに来るだろうぜ。」
「それまでに、武器を作って魔法を覚えて...やることが多いな。あと、コトミの情報も探さないといけねぇな。」
「誰だソイツ?彼女か?」
「俺の後輩だ。転移する直前、俺の傍に居たもんでな。近くにいるかと思ったが、情報の欠片も見つからないんだ。」
「そうか。私の方でも探してみるぜ。」
「悪い。助かる。」
「いいってことなのぜ!」
この底抜けの明るさが、あの霊夢とも対等な立場でいれる理由なのだろうと、キョウは感じた。
(最初ここに来た時はどうなるかと思ったが、何とかやっていけそうだな。)
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「お嬢様、準備が整いました。何時でも問題ありません。」
「ありがとう。じゃ、早速始めようかしらね。」
紅魔の異変が、始まる---。
短編系の筈が、まあまあ長くなった...。まぁいっか(やけくそ)。ちなみにタイトルは、イギリスのSF作家であるアーサー・C・クラークの名言です。面白いと思って下さったらお気に入り登録・ブックマーク登録お願いします。作者が狂うくらい喜びます。また、これからも『東方水鏡華』をよろしくお願いします。
P.S.2025/10/18にこの話の最後を少し変えました。
次回から1章です。