第0話 転機って奴は、何時だって突然訪れるものだ
初投稿です。拙い文章かもしれませんが、暖かい目で見守ってくださると幸いです。また、導入なのでかなり短めです。
ある日の放課後、学校の実験室に突然歓声が沸き起こった。
「おぉぉぉぉ!!すげええええ!!」
「何だよこれ!」
「どうなってんの?!」
彼らの視線の先には---空中に浮いたカエルの姿があった。
「ふふふ…凄いだろ!!これが’磁場’のパワーだよ!」
自慢げに語る彼の名は泉 鏡。生粋の科学オタクである。
「いや、’磁場’のパワーって言われてもさっぱりなんだが…」
「そうだな…じゃあ’反磁性’って知ってるか?」
「「いや知らねーよ」」
後輩達が口を揃えて言う。キョウは2年生の先輩なので後輩達は敬語を使うべきだが、キョウにとってそんなことはどうでもいい。
「・・・。まぁ簡単に言うとだな?’反磁性’っつうのは磁石の力と同じもんだと思ってくれていい。N極同士を近づけると反発するあれな?その力がカエルの中にある水分に働いてんの。そうするとカエルが浮く。」
「うん。説明されてもわからんわ。」
「ちなみにこの力を発見したのはオランダのアンドレ・ガイムっていう人なんだが…この人これでノーベル取ってんだぜ!!スゲェだろ…って聞いてんのか?」
まるで自分のことのように誇らしげに語るキョウを無視し、見学に来た後輩達はコソコソ話し始める。
「あのキョウって人は…かなりの変人だけど…科学部自体は面白そうだな…」
「実験は凄い面白いけど…あの人…なんか変」
後輩達の評価は正しい。キョウは学校中の人間が知る【変人】である。
「いやーにしても、よく先生に許可取れましたね、キョウ先輩」
キョウに話しかけたのは、既に科学部に入部している1年の藤原 琴美。どうやら科学が好きなのは彼女もらしく、高校に入った瞬間にこの部活に入部した。
「いやマジで大変だったからな?準備だけで仮入部期間ギリギリになっちまったし」
そう、何を隠そうこの磁場の実験、かなり危険なものであり先生に許可を取るのも一苦労する。また、実験に必要な電磁石も相当強力なもので、手に入れるのに1ヶ月半かかってしまった(それでも異常に早い方だが)。
「まぁインパクトが凄かったので、入部を考えてくれてる人もいるみたいですよ!先輩が変人っていう認識も広まってますけど!」
「広まらなくていーわ!!俺はただ、純粋に科学を楽しんでるだけだっつーの!って、こんなこと話してるうちに後輩達帰っちまったじゃねーか…」
そんな会話をしていると下校時間になったので後輩達が次々に「ありがとうございました。」と礼をして帰っていく。
「当たり前じゃないですか。もう下校時間ですよ。私達も帰りましょう、先輩…って何か光ってません?そのカエル…」
「は?」
キョウが視線を向けると確かにカエルが発光していた。
「待て待て待て待て。どういう事だ?磁場でカエルが光る?確かにUVライト下で光る事は知ってるが…磁場で光るなんて聞いたことないぞ?」
「え?先輩でも分かんないんですか?」
コトミの顔が驚愕に染まる。キョウが「分からない」なんて言うのは初めてだ。まぁ1ヶ月半程しか一緒に居たことは無いのだが。
すると、カエルの光が突然強まった。
「ッ!?何かヤバい!コトミ、離れろ!」
「ハ、ハイ!」
キョウはコトミを下がらせると、先生に助けを求めようとポケットにあるスマホに手を伸ばす---が。
「ヤベ!スマホを実験室の外に置いてきてたの忘れてた!!」
「何やってるんですか!先輩!」
「仕方ねーだろ!磁場の実験だぞ!電子機器なんか持ってこれるわけねーだろーが!!」
「いいから逃げましょう!…ってドアが開かない?!」
実は、実験中部屋を暗くしていたのだが、それにより誰も居ないと勘違いされ先生に鍵を閉められてしまったのだ。学校のドアというのは厄介なもので、内側からでも鍵が開けられないことがある。
その瞬間、カエルの光が更に強まった。
「クソ!解決策が浮かばねぇ!一旦離れ---」
「ッ!?先輩離れ-----」
キョウがカエルから離れようとした瞬間、キョウがカエルの光に呑み込まれた。遅れて、コトミも光に呑み込まれる。
2人の意識は、そこで途切れた。
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