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アイラブユーの命日  作者: すくも藍
第五章 祈望と幾望

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「……は、ひゅ」


 その細い首筋から、声になる前に死んだ空気が漏れる。


 見目麗しい彼の断末魔はあまりにも滑稽で間抜けだった。


 悪夢そのものの光景を、僕はなすすべもなく眺めていた。


 その身体がゆっくりと膝から崩れ落ちていく。


 お前がこれまで何回も見ていた光景だろ?


 だったら、こうなる可能性を考えなかったわけじゃない。


 一人の誰かの命を繋ぐために他の誰かの命を見殺しにしてきた。


 他の誰かは良くて、自分の親しい人間になったら途端に手のひらを返すのか?


 全部、行きずりの殺人鬼など信用したお前が悪いんじゃないか。


 それに彼女自身、ちゃんと言っていただろう。


 いつか、お前は絶対に自分の選択を後悔することになる、と。


 自分の内側に潜む悪魔が滔々と囁く。


 崩れ落ちた彼の背後から、見知った顔の少女が現れる。


「……エイリ。君は」


 彼を刺した自らの手を信じられないという目つきで見つめながら、彼女は「いや、違う、私は」と壊れ

たラジオのように途切れ途切れ呟いた。


 ただ一匹、その場にいた野良猫だけが場違いにも「にゃあ」と可愛らしい声で鳴き声を立てた。


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